尾池 和夫   京都大学総長

 この本を読むと日本語の表現力が身につき、さらに英語の表現力が身につくことでしょう。あらゆる分野で仕事する方たちに、私はこの本の熟読を薦めます。Glenn Paquetteさんは、1972年の小林-益川の論文で知られる学術誌「プログレス」の英文を、1995年から校閲している物理学者です。豊富な経験をもとにしたこの本を読んで、歴史に残る論文を書いてほしいと思います。考えを正しく伝えることのできる英語で、それを書いてほしいと思います。


 佐藤 文隆   元日本物理学会会長、京都大学名誉教授、甲南大学教授

 一般的な和英辞書をひいて英語の論文を書くことの危うさを色々と教えてくれる本である。2000本以上もの日本人論文の英文校正をやってきたパケットさんの実践がよく活かされている。多くの例文は論文英語での定石の勉強にもなり、論文の書き方だけでなく論文の読み方の参考にもなる。辞書形式の本なので用法で迷う単語を引いて較べてみることができる。例文は理工系のものが主だが、状況記述や主張を明確かつ簡潔に伝える論文英語の訓練は文系でも一緒であろう。古来、外国語との対比をつうじて言葉にまつわる豊富な感性を身につけることは学術的教養の出発点である。この本はハウツー本であると同時に比較文化論の題材も提供している。  考えてみれば、院生を指導している研究者としての先生たちが豊富にここに登場する誤用例をパケットさんに提供してきたのである。冷や汗ものである。最近のテレビコマーシャルでみる「アイアムア、エート、ステユーデント」みたいな論文英語が次世代に受け継がれていかない為にも、院生のいるの研究室では必携のレファランスブックである。

 青木 薫   翻訳家

 英語論文を執筆中に、「〜のとき」とくれば when、「まだ」とくれば yet を脊髄反射的に選んでしまうそこのあなた! それでは意味不明だよと正してくれる英語用例集が本書だ。日本語とのルーズな対応によって英語を理解していてはダメ! ありがちな誤用と、それに対する的確な修正例を読むうちに、日本語の枠組みとは異なる英語のロジックがくっきりと見えてくる。豊富な用例、解説の深さと明快さは、辞書や類書にはまねのできない著者独自のもの。使いでのある英作文ハンドブックとしてだけでなく、読み物としても冷や汗の出る面白さだ。