Brief Summary of Each Supplement
Progress of Theoretical Physics Supplement No. 132
Alpha-Clustering and Molecular Structure
of Medium-Weight and Heavy Nuclei
大久保 茂男 編集
クラスター模型は殻模型や集団運動模型とともに原子核の構造と反応を記述するうえ
で必須であるにもかかわらず、従来、質量数２０くらいまでの軽い原子核においてし
か成立しないと考えられてきた。スピン・軌道力が強い質量数４０以上の重い領域に
おいてクラスター模型と分子的構造が成立するかを明らかにすることは原子核研究に
おける長年の基本課題であった。最近、本号執筆者らを中心とするクラスター研究に
おいて大きな新展開があり、重い領域の原子核においてもクラスター模型と分子的構
造が成立することが明らかになった。
この号は京都大学基礎物理学研究所で行われてきた中重核と重い核におけるクラスタ
ー模型と分子的構造に関する研究計画の成果の集大成であり豊富な内容が包括的に収
められている。44Ti領域におけるα―核間相互作用とαクラスター構造
の存在の理論的予言と実験的発見およびαクラスター構造成立機構の微視的模型
による解明、中重核の高励起エネルギーにおける巨大分子的構造、中重核・重い核
でのαクラスターの存在とその多体論的基礎づけ、核物質におけるαクラスターの
安定性などが論じられ、クラスター模型が重い領域において成立することが
理論的・実験的に明らかにされている。
クラスター模型は殻模型、集団運動模型とともに重い原子核においても、不安定核・
ハイパー核・天体核物理など核構造や核反応が関わるさまざまな分野で有用であろう
。また、クラスターの概念は原子核以外の他の物理分野でも有用である。この号はこ
れから原子核研究を始めようとする学生はもちろん、この分野の現状と最新の成果・
展望を得たい研究者にとって非常によい座右の書となろう。
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