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Brief Summary of Each Supplement


Progress of Theoretical Physics Supplement No. 178



The 50th Anniversary of the Alder Transition
Recent Progress on Computational Statistical Physics


Proceedings of the Symposium on the 50th Anniversary of the Alder Transition

樋渡 保秋、礒部 雅晴 編集

この巻は、金沢で開催された連続する2つの国際研究集会で発表された論文を もとに編集されたものである。 1つ目は、第21回分子シミュレーション討論会に 設けられた特別セッション 「アルダー転移50周年 ─分子シミュレーションの夜明 けと歴史的概観─」 (2007年11月28日開催)であり、2つ目は、国際シンポ ジウム 「アルダー転移50周年 ─計算統計物理学の最近の進展─」 (2007年11月 29-30日) である。このシンポジウムでは約70人の研究者の参加があり、バーニ・ アルダー教授および川崎恭治教授を含む18件の口頭発表と16件のポスター発表が あった。この巻にはこれらの発表論文のみならず、特別記念号をお祝いした海外 の著名な研究者の招待論文も含まれている。

アルダーとウェインライトが新しい手法である 「分子動力学法」 を用いて剛体球系の 固相ー流体相転移を示した最初の歴史的論文が Journal of Chemical Physics 誌に 発表されたのが1957年11月である。この論文では、剛体球系においても固相ー流体 相転移を示唆する可能性を明確に示した。これは 「アルダー転移」 と呼ばれている。 この論文および同著者らによるその後の一連の仕事は、新しいテクノロジー、すなわち 電子計算機(コンピューター)の発展と共に、多体問題研究において新しいパラダイム を創成したことは周知の通りである。今日までに、これらの論文は我々に多くの刺激を 与え、凝集系物理学、非平衡統計物理学、液体論の研究に新しい方法論の提供とブレー クスルーをもたらした。2007年は、この革新的論文の出版から50年の節目の年である ことから、我々は日本において 「アルダー転移50周年記念」 を企画し遂行した。

シンポジウムでは、主にアルダー教授の有名な仕事に関連する以下の4つの トピックスについて議論された。
(1)   計算統計物理学とアルダー転移
(2)   長時間テールと輸送現象
(3)   ガラス転移およびモード結合理論
(4)   マルチスケール、マルチフィジックス

特に(2)のトピックは、近年日本では非常に活発に議論されており、10件を 超える論文発表があった。アルダー教授が論文を発表した時代から飛躍的に 発達した現代の高速コンピューターを用いた最新の成果を基に、シンポジウムでは 活発な討論が行われた。

この巻は、分子シミュレーション50年の歴史や計算統計 物理学の最新の成果を概観し、将来の展望を再考するため、この分野を志す若い 研究者にとってのみならず、計算機シミュレーションに関連したすべての研究者 にとっても記念碑的文献となるであろう。


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