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Brief Summary of Each Supplement


Progress of Theoretical Physics Supplement No. 183



Non-Abelian Discrete Symmetries in Particle Physics


石森 一、小林 達夫、大木 洋、岡田 寛、清水 勇介、谷本 盛光

非可換離散群は、今日の素粒子物理学において、特にレプトンとクォークの フレーバー構造を理解する上で、きわめて重要な役割を果たし、これに基づ く多くのモデルが提案されているなど、非常にホットなトピックとなっている。 しかし、非可換離散群は多くの素粒子論の研究者にとって、決して馴染み深い ものとはなってはいない。本稿では、非可換離散群の初心者向にその群構造を 平易に解説することを柱にしながら、その物理的応用面にも触れている。 この論文を読むために必要な群論の一般的な性質、及び有用な定理について は 2 章 及び Appendix A で簡単にまとめ、読者が予備知識無しで読めるようにした。

具体的な離散群としては、これまでに物理に使われてきた、或はこれから使わ れる事が期待される非可換離散群を対象に SNAN T 'DN 、QN 、 Σ(2N 2) 、 Δ(3N 2) 、 T7 、 Σ(3N 3) 、 Δ(6N 2) 等を取り上げ、それらを物理に応用する上で重要となる群論的基礎である各群の定義 及び、共役類、指標、既約表現、テンソル積を体系的にまとめている。

素粒子物理への応用としては、群の破れのパターンやアノマリーの有無が重要 である。この論文で具体的に登場する全ての群について、可能な破れのパター ンを示した。 更に、一般的な非可換離散群のアノマリーに関してレビューし、それを上述の 非可換離散群へ応用し、アノマリーがないための条件を与えている。

素粒子物理への応用としては、 A4 群、S4 群、 Δ(54) 群等の具体的 な非可換離散群を用い、どのようにしてレプトンとクォーク質量行列を構成し、 予言等を導くかを詳細に示した。他の応用例については豊富な参考文献をあげ ているのでそちらを見て頂きたい。また、それらの質量行列はテンソル積の具 体的な形に強く依存するが、同じ群内に、幾パターンかのテンソル積がある事 が知られている。ここでは特に応用例の多い A4 群、S4 群について、その関係 を Appendix B、C で示した。

この論文が、これから非可換離散群を学ぼうとする初学者の指南書としての役 割を果たすと共に、第一線の研究者にも新たな研究テーマの土台を提供し、 また、有用な参考書としての役割を果たす事を期待している。


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