Brief Summary of Each Supplement
Progress of Theoretical Physics Supplement No. 189
Higher Dimensional Black Holes
前田 恵一、白水 徹也、田中 貴浩 編集
20世紀の終わりに起こった超弦理論の革命的進展に呼応し、膜宇宙論、
湾曲余剰次元、ランドスケープなど新しい宇宙像が提案されてきた。
その中の一つの驚くべき洞察として、地上実験における高次元ブラックホール
生成の可能性があげられる。そして、これに動機付けられて、高次元ブラック
ホール研究の重要性が強く認識された。そもそも超弦理論は高次元で定式化
されており、その低エネルギー有効理論であるところの超重力理論も高次元の重力理論
である。そこでの基本要素となる時空として p-brane 解がしばしば考察の
対象となるが、その一部は高次元ブラックホール解のようなものである。
これらを背景に 21世紀に入って、高次元ブラックホールの基礎研究が大いに
進むこととなった。2002 年にブラックリング解が 5次元時空で発見され
(その形は球ではない!)、一般には唯一性定理が成り立たない事実が明らか
になったことを皮切りに、様々な 5次元ブラックホール解の発見、5次元ブラック
ホール時空の解の系統的生成法、特殊な場合の安定性解析、トポロジーや唯一
性定理、高次元数値相対論、等々の重要な成果が続々と発表された。
しかし、一般的な場合の安定性解析、6次元以上のブラックホールの厳密解など
を中心に未解明な点が数多く残されているのも現状である。このような状況を
踏まえ、今後の高次元ブラックホール研究の更なる発展のために、これまで
得られた強固で普遍的な結果をまとめておくことは大変意義深く有用である。
本 Supplement がその役割を担うものである。
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