Brief Summary of Each Supplement
Progress of Theoretical Physics Supplement No. 194
Econophysics 2011
— The Hitchhiker's Guide to the Economy —
Proceedings of the YITP Workshop on Econophysics
青山 秀明、藤原 義久、家富 洋、佐藤 彰洋 編集
この巻は京都大学基礎物理学研究所において、2011 年 7 月 15 日から 16 日
の2日間開催された基礎物理学研究所 研究会 「経済物理学 2011」 をもとに
編集された論文集である。本研究会はこれまで、2年おきに、京都大学基礎物
理学研究所 研究会として開催されてきたもので、今回が5回目の開催である。
経済物理学は大量の経済データに裏打ちされた実証分析を通じて、人間の経済
活動を物理的な観点から理解することと、その背後にひそむ普遍性を探求し続
けてきた。経済学と物理学の境界領域として、その名が付けられて約 15 年の
歴史を持つ。特に情報通信技術(ICT)の普及による超高度情報化社会の到来に
ともない、その成長と発展は近年急であり分野が大きくなるにつれて成果と研
究の方向性が見えにくくなってきている。
こうした背景の中で、この会議では、実際の実務でデータに基づいたビジネス
を展開し活躍する企業や組織の実務家を招き、経済物理学への期待とビジネス
における今後の展開の可能性について講演していただいた。さらに、一般講演、
ポスター発表を広く以下のテーマから募集し、最新の経済物理学の研究成果に
関する講演と活発な討論、意見交換を行った。
・ 株式市場や外国為替市場における価格形成・予測
・ 個人や企業の所得・サイズ分布や成長
・ 企業や金融のなす複雑ネットワーク
・ 企業の生産性、イノベーション、連鎖倒産
・ 消費行動、マーケティング
・ 非平衡・非定常系としての社会・経済現象
さらに、研究会2日目後半では特別セッション「新しい資本主義の姿を求めて」
を開催し、パネラーによる経済物理学の可能性と公益資本主義に関する討論会
を開催した。
ここには、会議で行われた講演をもとに 21 編の論文が収録されている。経済
物理学の研究者、専門家にとっては、この分野の最新の情報を含んだ論文集と
して、また非専門家にとっては経済物理学に対する解決されるべき課題と今後
の研究課題を知るための有益な情報源となることであろう。
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