Coronavirus spread

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論文[1]で我々は コロナウィルス COVID-19 の広がり方について それぞれの感染爆発(outbreak)では陽性者数データが ゴンペルツ関数(2重指数関数)で近似的に表せていることを示しました。 こうした考え方は 中野-池田のK値論文[2], M. LevittのYoutube Lectureや論文[3], および[1]の Ref.[3]-[21]で引用している論文で用いられています。 (K値論文[2]での仮定がGompertz関数を導くことは 秋山氏のホームページ[4]で示されています。)

ゴンペルツ関数 f_G(x)=exp[-e^-x] は立ち上がりが速く、 漸近値への収束が遅い関数です。 ですから"感染"(正確にはウイルスが他の人に伝染ること)自体は速く起こるが、 体内にウィルスが増えて陽性と判断できるまでの時間が ("感染"に比べて)遅い場合などでは観測される陽性者数をうまく記述できると思われます。 別の考え方として、ある保菌者が濃厚接触する有限の人の内、 "感染"しにくい人が一定の割合おり、 また極少量のウィルスを浴びてT cellが活性化するなどで"感染"しうる人が時間とともに 指数関数的に減る場合には、結果的に"感染"確率が指数関数的に減少するため、 ゴンペルツ関数が従う dN(t)/dt = γ e^{-γ t} N(t) という方程式によって陽性者が増えていくことになっているのかもしれません (この部分の基本的なアイデアは知り合いのS氏による)。 いずれにせよ多くの国で最初の大きな感染爆発での陽性者数はスケーリング変数を用いると ゴンペルツ関数で表せることを示したのが論文[1]です。

その後の陽性者数は一つのゴンペルツ関数では表せず、 多成分での分析(いくつかのゴンペルツ関数の和を用いた分析)が必要となります。 成分の個数を増やすとどんな(増加)関数でも表せるので、少数の項で表せることが大切です。

• 以前のページ1では論文の Appendix に載せた分析を(主として日本語で)述べました。
  いくつかのゴンペルツ関数の和によって、様々な国の2020年の陽性者・死亡者の時間変化が表せることを議論しています。
• 以前のページ2では日本の第４波までの陽性者数・死亡者数の分析結果を示し、 それぞれの「波」は、異なる変異ウィルスによってもたらされると推測できることを議論しました。
  第0波(1-2月, 中国型, 19A, 19B) ・第1波(3-4月, 欧州型変異種, 20B) ・第2波(7-8月, 日本型変異種, 20B, B.1.1.284) ・第3波(11-1月, 日本型変異種, 20B, B.1.1.214+インド型変異種, B.1.1.101など. [11]) が変異したウィルスが多くを占めていることと合わせると、 第4波(3月-)はイギリス型(20I, α)がもたらしたものであり、 「大きなoutbreakは変異ウィルスによってもたらされる」 と推測します。
  (Feb. 16, 2022加筆。 第５波はDelta (δ, 日本では21Jが中心)、 第６波はOmicron (ο, 21K)が中心のようです。 Nextstrain.org参照。)

しばらく日本ではコロナ禍が落ち着いており、更新もしていなかったのですが、 ここ数週間での急速な拡大があったため、更新を行います。 データとしては、

• 世界のデータはOur word in data (by Hannah Ritchie)[5]
• 日本のデータは東洋経済[6]

• まず世界全体の状況から。 Our world in dataからいくつかの国の陽性者数・死亡者数・ワクチン接種数を示します。
  (ひとりごと：ワクチンの接種率と陽性者数・死亡者数に負の相関があるようにはあまり見えません。)
  
  
• 日本の状況。 東洋経済のデータを用い、±3日の平均を描画。
  1/29までのデータを用いたベストフィット(青の曲線, γ=0.059)では２月第一週にピークと予想される。
  陽性化確率減少率をγ=0.04に固定すれば(水色の一点鎖線、上側)、 ピークは２月後半、一日あたりの陽性者数は20万人を越える。
  (ひとりごと：オミクロンが最後のoutbreakになるとよいですね。)
  
  書きかけですが、今日はここまでにします。 (Jan. 31, 2022)

• 2月14日までのデータを用いた更新です。(知り合いに尋ねられたので更新しました。)
  ±3日の平均でみれば、2月7日くらいに陽性者数はピークだったようです。 (ほぼ1/31の予想通り。)
  このままGompertz曲線に沿って下がれば3月末に陽性者数は1万人/日程度となります。
  
  (Feb. 16, 2022)

References

1. Universality in COVID-19 spread in view of the Gompertz function
   Akira Ohnishi, Yusuke Namekawa, Tokuro Fukui
   PTEP 2020 (2020), 123J01 (1-20) (pdf, YITP-20-82, published on October 3, 2020).
   [medRxiv:medRxiv (2020), posted on June 22, 2020]
   (Japan, USA, Russia, Brazil, China, Italy, Indonesia, Spain,South Korea, UK, and Sweden; June 18, 2020).
2. Novel Indicator to Ascertain the Status and Trend of COVID-19 Spread: Modeling Study
   Takashi Nakano, Yoichi Ikeda,
   J. Med. Internet Res. 2020;22(11):e20144 (published on Nov. 30, 2020)
   [medRxiv (2020), posted on May 05, 2020].
   中野さんのホームページ
3. Predicting the Trajectory of Any COVID19 Epidemic From the Best Straight Line
   Michael Levitt, Andrea Scaiewicz, Francesco Zonta,
   medRxiv (2020) (Many countries; posted on June 30, 2020)
   Homepage of Michael Levitt lab, where the links to the online lectures on May 14, 2020, are given, (Youtube Lecture 1, Youtube Lecture 2).
4. 秋山さんのホームページ on covid-19
5. Coronavirus Source Data from ourworldindata.org, Hannah Ritchie.
6. 新型コロナウイルス国内感染の状況, 東洋経済online