Coronavirus spread

(Jan. 16, 2021; last update Jun. 08, 2021)

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論文[1]で我々は コロナウィルス COVID-19 の広がり方について それぞれの感染爆発(outbreak)では陽性者数データが ゴンペルツ関数(2重指数関数)で近似的に表せていることを示しました。 こうした考え方は 中野-池田のK値論文[2], M. LevittのYoutube Lectureや論文[3], および[1]の Ref.[3]-[21]で引用している論文で用いられています。 (K値論文[2]での仮定がGompertz関数を導くことは 秋山氏のホームページ[4]で示されています。)

ゴンペルツ関数 fG(x)=exp[-e-x] は立ち上がりが速く、 漸近値への収束が遅い関数です。 ですから"感染"(正確にはウイルスが他の人に伝染ること)自体は速く起こるが、 体内にウィルスが増えて陽性と判断できるまでの時間が ("感染"に比べて)遅い場合などでは観測される陽性者数をうまく記述できると思われます。 別の考え方として、ある保菌者が濃厚接触する有限の人の内、 "感染"しにくい人が一定の割合おり、 また極少量のウィルスを浴びてT cellが活性化するなどで"感染"しうる人が時間とともに 指数関数的に減る場合には、結果的に"感染"確率が指数関数的に減少するため、 ゴンペルツ関数が従う dN(t)/dt = γ e-γ t N(t) という方程式によって陽性者が増えていくことになっているのかもしれません (この部分の基本的なアイデアは知り合いのS氏による)。 いずれにせよ多くの国で最初の大きな感染爆発での陽性者数はスケーリング変数を用いると ゴンペルツ関数で表せることを示したのが論文[1]です。 その後の陽性者数は一つのゴンペルツ関数では表せず、 多成分での分析(いくつかのゴンペルツ関数の和を用いた分析)が必要となります。 成分の個数を増やすとどんな(増加)関数でも表せるので、少数の項で表せることが大切です。

最初の原稿の投稿後、改定した論文(Appendix)に示した分析は 以前のページに(主として)日本語で説明しています。 7-8月の第2波についても触れており、 個人的には東京発の変異種のせいだろうと納得しておりました。 12-1月の第3波については寒さと乾燥のため(冬に風邪が流行る通常の理由)に加えて、 クリスマス・正月時期の多人数でのおしゃべりが原因なのだろうと思いますが、 いかんせん数が多い。 少しだけグラフを作ってみました。


References

  1. Universality in COVID-19 spread in view of the Gompertz function
  2. Novel Indicator to Ascertain the Status and Trend of COVID-19 Spread: Modeling Study
  3. Predicting the Trajectory of Any COVID19 Epidemic From the Best Straight Line
  4. 秋山さんのホームページ on covid-19
  5. Coronavirus Source Data from ourworldindata.org, Hannah Ritchie.
  6. COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University
  7. 仁井田浩二さんのシミュレーション計算の結果。 他の結果は こちら。
  8. 気象変化と新型コロナ感染/予測の可能性と新事実、藤原かずえ アゴラ, 2021年2月5日。
  9. T. Sekizuka et al. (2020), mSphere 5, e00786-20 (2020); M. Kuroda (2020) [in Japanese].
  10. K. Abe et al., Identification of B.1.346 lineage of SARS-CoV-2 in Japan: Genomic evidence of re-entry of Clade 20C, medRxiv (2021).
  11. 京都大学大学院医学研究科 臨床病態検査学, SARS-CoV-2ゲノム解析.
  12. Nextstrain SARS-CoV-2 resources; J. Hadfield et al., Bioinformatics 34, 4121 (2018).
  13. 新型コロナウイルス国内感染の状況, 東洋経済online

Akira Ohnishi <ohnishi at yukawa.kyoto-u.ac.jp>