Previous page (last update on Aug. 23, 2020)
論文[1]で我々は コロナウィルス COVID-19 の広がり方について それぞれの感染爆発(outbreak)では陽性者数データが ゴンペルツ関数(2重指数関数)で近似的に表せていることを示しました。 こうした考え方は 中野-池田のK値論文[2], M. LevittのYoutube Lectureや論文[3], および[1]の Ref.[3]-[21]で引用している論文で用いられています。 (K値論文[2]での仮定がGompertz関数を導くことは 秋山氏のホームページ[4]で示されています。)
ゴンペルツ関数 fG(x)=exp[-e-x] は立ち上がりが速く、 漸近値への収束が遅い関数です。 ですから"感染"(正確にはウイルスが他の人に伝染ること)自体は速く起こるが、 体内にウィルスが増えて陽性と判断できるまでの時間が ("感染"に比べて)遅い場合などでは観測される陽性者数をうまく記述できると思われます。 別の考え方として、ある保菌者が濃厚接触する有限の人の内、 "感染"しにくい人が一定の割合おり、 また極少量のウィルスを浴びてT cellが活性化するなどで"感染"しうる人が時間とともに 指数関数的に減る場合には、結果的に"感染"確率が指数関数的に減少するため、 ゴンペルツ関数が従う dN(t)/dt = γ e-γ t N(t) という方程式によって陽性者が増えていくことになっているのかもしれません (この部分の基本的なアイデアは知り合いのS氏による)。 いずれにせよ多くの国で最初の大きな感染爆発での陽性者数はスケーリング変数を用いると ゴンペルツ関数で表せることを示したのが論文[1]です。 その後の陽性者数は一つのゴンペルツ関数では表せず、 多成分での分析(いくつかのゴンペルツ関数の和を用いた分析)が必要となります。 成分の個数を増やすとどんな(増加)関数でも表せるので、少数の項で表せることが大切です。
最初の原稿の投稿後、改定した論文(Appendix)に示した分析は 以前のページに(主として)日本語で説明しています。 7-8月の第2波についても触れており、 個人的には東京発の変異種のせいだろうと納得しておりました。 12-1月の第3波については寒さと乾燥のため(冬に風邪が流行る通常の理由)に加えて、 クリスマス・正月時期の多人数でのおしゃべりが原因なのだろうと思いますが、 いかんせん数が多い。 少しだけグラフを作ってみました。
こうした楽観的な予想通りに現在のoutbreakが収まるとすると、
次のoutbreakを小さなものに抑えることができるかどうかが次の関心でしょう。
現在までの日本のoutbreakは、
ヨーロッパからのウイルスによると推測される広がり(3-4月)、
日本で突然変異したウイルスによると推測される広がり(7-8月)、
寒さによると推測される広がり(11-1月)と
約4ヶ月周期で始まってしまっています。
ウイルスの変異は止められませんが、通常の対策に加えて自然免疫やワクチンで、
(できれば経済活動を抑えることなく)
次こそピークの高さを小さくできるとよいですね。
(February 7, 2021)
10月後半から立ち上がった第3波の広がりは上述のように 冬の寒さが主要な原因かも知れません。 ただし新たな変異ウィルス(20C)がアメリカから入っているとの 研究[10]もあります。 また6/29に見つかった日本型の変異種 (Clade 20B-T, B.1.1.284, [10]によれば関東地方では51.9%)に加えて、 11月以降の第3波では別の日本型変異種 (B.1.1.214, [10]によれば関東地方では31.7%) が京都府でも多数となっているとのこと [11]。
3月からの第4波はイギリス株でしょうか?
あるいは気の緩みが原因?もっと我慢しないといけないのでしょうか?
Nextstrain.org
[12]のアニメを見ていると、
中国型(19A,19B), 欧州・東京型(20A,20B),
イギリス型(20I)へと移っていく様子がよく見えます。
(同系列の20Bの間の移り変わりは分かりませんが。)
最近の増加(第4波)は最近のウィルスの半数以上を占める
イギリス変異種(20I)の広がりによるものと考えるのが自然なようです。
第0波(1-2月, 中国型, 19A, 19B) ・第1波(3-4月, 欧州型変異種, 20B) ・第2波(7-8月, 日本型変異種, 20B, B.1.1.284) ・第3波(11-1月, 日本型変異種, 20B, B.1.1.214+インド型変異種, B.1.1.101など. [11]) が変異したウィルスが多くを占めていることと合わせると、 第4波(3月-)はイギリス型(20I)がもたらしたものであり、 「大きなoutbreakは変異ウィルスによってもたらされる」 と推測します。
Nextstrain.org でのスナップショット(2021-02-14--2021-03/22での割合)。 オレンジ色がイギリス型(20I)を示す。