日記(4月)


4/30:

GWという事でしっかり休んでいるが、今日は出勤。 連続体のノート作りと 明日の講義準備等。休みの最中にreferee等。後、共同研究者からのノート。

研究にあまり進展がないし、休日の行動をメモしよう。

GW中には京都では特別拝観が出来る。文化の日辺りの秋のシーズンにも行われてい る。最近、これをよく利用している。昨日は仁和寺に行く。宇多天皇創建で 皇孫が門跡をしていただけに境内は広く落ち着いたたたずまい。惜しむらくは応仁の 乱で焼けて、建物が殆んど寛永辺りの再建で新しすぎること。金堂は御所の紫宸殿を 移築したもので国宝に指定されている。今回の目玉はこの金堂の公開であったが確かに 天井板がなく寝殿造の影響を色濃く受ける等寺の建物としては変わっている。他に 二王門や五重の塔がデザイン的にバランスのいい建物であるという印象があった。 金剛力士像は前夜に東大寺の運慶のもののテレビ解説を見ていたために見劣りがした。 もっとも血管が浮かび上がっている足等に仏像にはないリアリティを感じる。

昨年はこの時期、三十三間堂と智積院に行った。前者はともかく後者は閑散として いた。また西本願寺の飛雲閣を見に行ったのは一昨年の秋か。飛雲閣は30年振りの 一般開放とかであって是非見に行きたいものであった。聚楽第から移されたという話 もあったがこれは完全に否定された様である。(小学生の頃、藤岡通夫の断定調の 「..と誤り伝えられた」の連発に反発を覚えたが事実だった様だ)。昨年の秋には 大徳寺に行った。主目的は芳春院の呑湖閣であったが飛雲閣に比べると見劣りがした。 今年の春も一般公開で芳春院の呑湖閣を訪れることは可能であるが、これは来年の 大河ドラマのためかもしれない。

仏像では月並だが広隆寺の弥勒菩薩が良い。国宝1号にも指定されている半跏思惟像 の他にもう一つの弥勒菩薩もえも言われぬ味を出している。寺社が多く残されて、 一部の有名寺院を除き人気もそれほどなく、休日に訪れると心が落ち着く。 しかし全般に京都の寺や仏像は奈良のそれには及ばない。特に建築物は応仁の乱の 影響もあって致命的に新しすぎる場合が多い。もう一つの問題点は拝観料が高い事。 昨日の仁和寺でも通常公開している白書院、黒書院等(これらは明治の建物であって 意味がないと思う)の入場料500円の他、金堂と経蔵に800円、茶室に800円等結構な 出費となる。昨年の大徳寺はもっと甚だしく30近い寺院、庵が立ち並ぶ複合寺院 であり、各寺院が独立しているためにそれぞれの 入り口で入場料を取られるので行く方はたまったものではない。


休みの日には駄本も読む。最近は専ら図書館を利用して家族で 20冊程度借りて読んでも読まなくても返すということをしている。土日に読んだのは 「五嶋節物語:母と神童」「サウンドオブミュージック」「高林武彦:ある物理学者の 想い」等である。

五嶋節は五嶋みどりと龍の母親である。五嶋みどりは欧米では Midoriという名字のない名前で 活躍しているが両親の離婚故である. Midoriは僕にとって印象深いViolinistの 一人である。89年に在米中にテレビのインタビューに答えていたのが印象的であったし 95年の4月にはUrbanaでコンサートを聴く機会もあった。演奏自体はテクニックは ともかくそれほど集中力のある演奏とは思わなかったが前年の夏に摂食障害(及び 精神失調)で入院していたために演奏に集中できる状態にはなかったのであろう。 むしろ母親の節の演奏が鄭京和を思わせる集中力溢れる演奏をするということである。 またMidoriのバーンスタインとの 広島での伝説的なコンサートの件を知ると全盛期の集中力というのも窺い知ること ができる。このコンサートの件はアメリカのreaderの教科書や日本の高校のreaderの 教科書にも採用されている有名な事件であるとのことである。

この本で印象的なのは若くして名声を得た天才の難しさ(カルロス・クライバーン を彷彿とさせる)、集中の大切さ、ディレイの教授法の有効性、音楽の世界の厳しさ、 音楽における才能の必要性等多々あるが 時間がなくなってしまったので詳細を記すことはできない。

ところで才能と早期教育の重要性、頭の使用部位 という点でクラッシック音楽と数学は関連性があると思われる。願わくは物理は 関係がない方がいいのであるが、全く無関係とも言えないであろう。むしろ歴史的 状況が物理とクラッシック音楽は似ているのかもしれない。20世紀初頭には まだラフマニノフやクライスラー、マーラー等作曲家でありながら演奏家(或は 指揮者)というものが可能であったが、最早大作曲家というのは殆んど考えられない 状況である。さて音楽や物理の行く末はどうなるのであろうか。


4/26:

原稿の〆切が思いがけずに延びた。もうちょっと考えてみる。改めてチェック した印象では学会で発表した内容は(ああいった計算が正しいとすると)相当 妙な結果を導く。もう少し信頼のおける3次元の計算やシミュレーションでのチェック をしてから論文にした方がよさそうである。

昨日の新歓。新人さんは面白い話をかなりしたが、昔からいる連中は元気がな い。やはり新しい血の導入による環境の変化は必要か。

宇宙は鬼門かとも思ったが粉体や衝突と繋がる現象は宇宙に一杯あるものだとふと思っ た。


4/24:

Lagrange微分とEuler微分の話は中途半端に変更したから更に変更が必要になっ た。どうもいかん。まあそれで判り易くなったのではないかと思う。文系物理 は微積分を使ってくれと言うのでアンケートとして自由落下の問題を解かせて みると出来ていない人が多い。(数学、物理の)レベルは分った。講義の後、 脱力して原稿書きを再開。明日も講義2つ。原稿は間に合わない。


4/23:

原稿の方はやっと連絡あり。いろいろ書きすぎて書き上がらない。基本的に学 会で喋った内容迄書くつもりである。

原稿の方が押したので授業準備にしわよせ。連続体は一杯図をtgifで 描く。本の仕上でもある から頑張ってみた。Lagrande微分と全微分の関係も書き直して数学的な証明を 付けた。物理学概論の方はアンケートを作成。まだ試行錯誤である。

どうもやはり外れたようだ。土曜に書いた財源もあまり期待はできない。とな るとおとなしくしてItalyはやめるかと思案。


4/21:

原稿は書き上がるかと思ったが全然駄目だった。結構面倒で時間がかかってい る。

昨日、総人では科研費の交付発表があった。例年、人環ではちょっと遅れるるので 発表は月曜だろう。今年 は期待は全くできない。初めて奨励から基盤になったのもマイナスに評価され るだろうし、非弾性衝突では申請時に論文がなかったから弱気になっている。 しかし運よくというべきか、名前だけ借していたつもりであった際本さんの Plasmaの研究(学会誌4月号参照)が採択された。従って、今年も何とか乗り 切れかもしれない。分担者がどのくらい使えるか知らないが、総額が大きいの で僕の使用分は誤差のうちだろう、と期待している。ということで仙台の旅費 は何とかなりそうで、 ICTPResearch Workshop on "Challenges in Granular Physics" にも参加できるかも。もっともPlasmaを真剣に勉強して何か論文を書く obligationが生れた訳だ。


4/20:

4/12に書いた質問の返事が来ない。前の手筈では4月中旬に原稿を寄越せとい うことなので書き始める。よせばいいのに大幅加筆。reviewの部分を書いて構 わないというのでMorgado and Oppenheimの考え方をAppendixに書く。本体に も弾性モデルでは駄目ということと、2次元の荒い見積もりを書くことにする。 しかし質問には答えて欲しい。(無駄になるかも)。週末は原稿書きに集中だ な。

(御手洗さんとの)表層流の話は収まるべきところに収まったか。データのFittingは ほぼ満足すべきものになった。一方、厳密解は使えそうもなくなった。 Microrotationと渦度の関係はやはりMacroな議論だけでは完全とはいかない。 運動論を考えるとほぼすんなりと理解できる。


4/19:

Microrotationと渦度のCouplingの質問に対するやりとりで終始。 殆ど物理的に自明に思える事を論理的にきっちりと説明するのは難しいが、 こういう議論から理解が深まる。

物性研究の編集会議。天羽さん の講義録 (PDF)は菊池さんにご足労頂き説明して頂いた。という事で掲載 がほぼ決定。他に修士論文多数の投稿を審査するために編集委員に割り振った。 研究会の申込をした人の論文やセミナーで話をお願いした人の論文もある。 例年より力作揃いに見える。

やはり講義が始まると頭がそっちの方に行ってしまう。


4/18:

熱力学の講義は人が溢れていた。工事中で五月蝿い。セミナーの順序を决める。 段々講師のネタが尽きてきた。大学院講義。早くもring model迄行った。

Microrotationと渦度のCouplingの質問あり。あれで良かったのか?回答が中 途半端な気もする。


4/17:

講義が始まった。今日は3つ(物理学概論A,流体力学、物理科学のフロンティ ア)で、明日は2つ(熱力学、大学院)。魂を吸いとられる様な気分になる。 名講義をすればいいresponseがあるのであろうが、反応が乏しいので余計に疲 れる。流体は本にすべく全員にプリントを配りながらやるので気が抜けない。 やはり書いてあるところに不適切な表現がある。また概論は今年は1回目から 受講者は少ない。経済学部の学生が式を使った普通の物理講義を要請していた。 今年は方針を変更するか。しかし私学より多い講義は何とかならないのか。

流体の講義での混乱の元はLagrange微分と全微分は違うかということである。 LandauはLagrange微分の記号は全微分で置き換えている。また連続の式を導く ときに時間変化する量(積分形)の 変化率に多くの教科書(Landau, Batchelor,今井)では 偏微分を用いている。一方、巽さんの教科書や大信田さんのノート では全微分とLagrange微分は違うものとして分けて考えており、連続の式 の変化率に全微分をあてている。 全微分とLagrange微分は違うのが正解であろう がちょっと分りにくいし、すっきりしない。

密度依存性が違うとの報。うーむ、困りましたね。


4/13:

数値積分は何故か収束せず。危いところは皆取り除いているのに変だ。 Mathematicaでやってみると、収束しないというメッセージもなくちゃんと値 を返す。プログラムミスか?こんなの間違えるか。

研究会は今日になって急に申込が増えた。さすが非線形の研究会というところ か。現在63名だが講演を頼んだ人や登録しない(有名?)人もいる。昨日の時 点では20人程だったから予算の処理やプログラムの編成を心配したが杞憂だっ た様だ。前の研究会ではここまで〆切日に集中しなかったが、この辺りが我が コミュニティーのいい加減さなんだろう。などと書いているうちに2人増えた。 この調子だと明朝迄の登録だけで80は行きそうだ。


4/12:

中間領域を更に接触面に近いところとそれ以外に分割。Mathematicaや 数値計算では0/0->1といった極限計算が(そのままでは)出来無いのでそのま ま計算すると発散する。その領域をきちんと手計算で確かめながら積分迄評価 した。(たいていの数値ソフトもソースを見ればそういった怪しい領域は別の 展開公式を使っているのだからこうした措置は当然である)。残った領域は数 値積分に頼らざるを得ない。カットオフは手で入れるとしても問題は圧縮され た時の弾性球の形状である。これはLoveの本に書いてあることを発展させると 解析的に形状は決まるが、対称軸から表面迄の距離は接触面からの距離の関数 で、超越方程式を解かないと决められない。無論、形状はヤング率やポアソン 比の関数なので数値計算をそこに入れてしまうとこれこれの物質のはねかえり 係数はどうなるという簡単な公式ではなくなってしまう。そこを回避するには 例えば形状は球を切り取ったもので近似するとかすればいいが、如何にもいん ちき臭い。ちょっと悩ましい。

それにしてもマニアックな計算にはまっている。計算自体は意味がないので あるが、そういった訳の分らない計算をしないと非弾性衝突は分らないという 事だと無理に納得させる。実際、3月にやっていた2次元の計算は評価が甘す ぎるので3次元が済んだらもう1回計算をやり直す必要がある。(edgeの発散 に気がついていなかった)。 (今日から授業開始だが担当は火、水に固まってい るので)後少し頑張って結果を出さないといけない。月、火に泣きを見ること にしよう。

そういえば1月の会議の会議録に手を加えたものをChemical Engineering Scienceに投稿しないといけない。今やっている計算は折込めるのか? 朝にInstructionについての問い合わせのメールを出したがまだ返事がない。

研究会 の方は明日〆切だがまだ申込は多くない。積極的に申し込んで活発な研 究発表の場にして欲しいものである。田崎さんが宣伝しているのを発見。これ で参加者が増えるか?


4/11:

外側はきちんと評価できたが中間領域は何ともならない。展開パラメーターが ないからである。内と外にcutoffがあるから一種の不定積分になって2重数値積分 も難しい。強引にcutoffを决めたとしても結構面倒な問題がある。

講義の準備が出来ていない夢を見た。もうすぐ正夢になりそうである。学部と 大学院向けの新入生 向けのガイダンスあり。


4/10:

発散の問題はとりあえず解消し、積分はcut-off付で有限におさまった。 。勘違いしていて時間を浪費した。接触領域から十分離れたところも計算でき る。問題はedgeからやや離れていて接触中心から接触半径程度離れた領域と既 に求まった2つの漸近領域をどのように繋ぐかということになった。2つ、3 つパラメーターが残っていて数値積分は難しいかな。

研究会 の〆切が今週末だが申込が少ない模様。うーん、困ったものだ。


4/9:

まだ発散の問題が解決できず。ちょっと考えかたを変えてみた。結果は明日 チェックしよう。

教務委員のお仕事。どうも事務仕事はむいていない。


4/8:

不覚にも息子のバイオリンの発表会があることを忘れており、それにつきあわ された。愚息は才能教育とも鈴木Methodとも呼ばれる方法で学んでいる。先 に亡くなられた鈴木鎮一氏によって始られたこの方法は世界中で浸透してお り共同研究者のDaniel Hongの娘もこの方法で学んでいる。また鎮一の父親 が鈴木バイオリンの創始者であるが、そのひ孫(鎮一の兄?の孫)にタケカワユキヒデがいる。

愚息はあまり上手ではないし熱心な生徒でもないが、なかには幼いころから熱 心に練習をし、早くから頭角を表す生徒もいる。愚息と同じ4年で既にヨー ロッパに演奏旅行にいった強者もいる。今回はいなかったが、なかにはプロ顔負 けでお金を払ってもおしくない程達者な演奏をする子もいる。プロの演奏者は こうした強者の中から一握りの者が選別されてなるのであろう。

映画「レインマン」に見られるようなサヴァン症と呼ばれる数学等に特異な才 能を示すが知能障害のある病気では数学と同時 に音楽、美術等にも才能を発揮する場合が多い。逆にアインシュタインやハイ ゼンベルクのように音楽家として身を立てるか科学者になるか悩んだ超一流の 物理学者もいる。 おそらく数学と音楽はかなり共通の大脳 の動きによって活動が支えられているのであろう。 音楽では才能教育に限らず早期教育に よって早い段階でプロの選別が行われている。数学でもプロレベルでは同じ事が可能 な筈であるがそうした早期教育が大々てきに実行されたとも成果があがったと も聞かない。公教育飛と別レベルで有効な早期教育のプログラムは存在しても いいと思うのだが、どうであろうか。


4/7:

天気に誘われて大文字。オフィスで腐っているよりいいと判断したが。 ICTPの会議には知り合いが大挙して参加するので僕も参加するかもしれない。

そういえば文句を言っていたPG2001 のプログラムが来る。おもっていた以上にInvited speakers以外が充実してい る。誰が判断したのかしらないがポスターにも有名人がいる(当然 Invitedより格上)。さすがに伝統のある会議で、行くのがちょっと楽しみに なった。しかしプログラムはひどいな。僕は流動層に分類されている。誰が作っ ているのだろうか?


4/6:

ICTPResearch Workshop on "Challenges in Granular Physics"はattractiveである。 PG2001もこの位の人を呼んでくれたらいいのに、はっきりいってここのリスト から見ると大部レベルが低い。珍しく行きたくなってきたが問題は先立つものである。 (ところでPG2001は後1月だと言うのに何も情報がない)。


4/5:

発散の問題は解決できず。いくらでも手がありそうなのだが何も手がないのと 同じだ。

昼は鴨川岸で食事。いい時候である。こういう環境は恵まれている。

そろそろ授業の準備をしないといけない。という事で流体力学の復習をした。 特にvortexの話。月曜はChateがvortexの話をするらしいが仕事で聴けないの は残念。


4/4:

ストレス場の詳細が分かると見たくないものまで見えてくる。接触のedgeの処 で温度勾配が発散しているな。この種の発散は弾性論ではお馴染でSlidig friction(shear traction)ではそのまま計算するとedgeでストレス場そのもの が発散するが、Partial slipという事で切り抜けている。弾性論は奥が深い し、難しい。温度勾配をそのまま積分すると対数発散をする。さてどうしたものか。

春先はいつも少々おお回りながら、高野川に沿って通勤する。川岸の桜並木が 美しいからである。桜は昨日位から桜が満開となっている。一昨日はまだまだ であったが、東京より一週間程遲い。今年は東京の開花は九州より早かったの ではないか?予想では京都と東京は同じ位に咲く筈だったが。そもそも冬は比 較的寒かったのに例年よりかなり早く咲いた理由は何だろう。天気予報で何か 言っていたが忘れた。(梅が遅くまで咲いていたのは冬の寒さの影響だった)。 桜の開花に個体差はあまりない。引き込みでもあるのだろうか?考えるとよく わからない。


4/3:

今日も集中力を欠いている。3次元の方が2次元より断然やさしい事は確かだ。 積分でつまる。2次元並の計算であればすぐ出来るが、もうちょっと正確にで きないかと思案。半径と接触半径の比の関数だから数値積分は簡単ではない。 3次元が出来たらより役に立つ公式になるのだが。

研究会 の〆切が迫っている。何にも決っていない。

学会の飲み会で池上さんが田崎さんの複雑系批判にしおらしかったのは意外で あった。むしろ中川さんの方が「複雑系」に思いいれがあったようだ。複雑系 という言葉は皆が勝手に使ったから話がややこしくなった。池上さんは交通流 にやつあたりをしていたが、交通流をやっていた(る)人で交通流を複雑系と 思っている人は多く見積っても一人しかいない。交通流は典型的な単純系である。

大学院のガイダンスは1回だけ喋った記憶がある。西野さんが喋ったかど うかは覚えていない。内容は相分離とかを喋ったのではないか?片岡さんは95 年4月進学だろうから、ちょうど在米中。94年秋の試験もかかわっていない。 KISに行って良かったのではないでしょうか?東北大もようやく混乱の中から 再建へ(大袈裟)一歩ふみだしたらしい。東北大はActivityは高いと思うが教 官の転出が激しいので学生にとってはどうなんだろう。僕が赴任した91年の春 に理論の助手だった人は殆どが僕より早く転出された。特に海外出張中に転出 を决めるというのがはやっていて素粒子論の川崎、村山に続いて私もそういう 事になった。学生にとっては迷惑な話かもしれない。更に素粒子論は教授もど んどん転出する。そういった状況は大学の将来計画の中ではどうなんだろうか。

さて大信田君の苦しさについてでも語ろう。そもそもこの課題はそれこそ私が 東北にいるときにずっと考えていた話である。結局うまくいかないから他のテー マに変えたという曰くつきのテーマである。だからそんなに簡単に解決しない のは当然であると言えよう。混相流ベースではJacksonの教科書を見ても Glasserの仕事(JFM 334, 157)あたりが一つの到達点である。しかし粒子シミュ レーションを見ているとどうも単純に1次元のVoidがsecondary instabilityで bubbleになるようには見えない。単純にGas inletがある場合はそこで粒子を 巻き上げるのでBubbleが出来るのは当然である。一様にふかした場合にも全体 として粒子層が持ち上がってバランスを崩して塊として崩落し、底に当って巻 き上げている。大信田君の解析にしても混相流ベースの解析にしてももっと Mildなストーリーとして方程式そのものが境界抜きでBubblingを記述できる話 を考えている様に思うが、その辺りがちょっと違う気がしている。ではどの様 に理論で記述すべきかという問には現時点では答えられない。答えられるので あれば論文にしている。

学会では飯間君 の話も聴きたかったのだが、都合で聴けなかった。結構彼も悩 んでいる様子だが、物性研究に載るであろう原稿, 市來のとか、 牧野さんの とか、川崎さんのインタビューとかが物性研究の想定レベルの上で参考になる のではなかろうか?Back numberを見るのは容易ではないが、私がもっている 原稿、例えば飯間君から阪上さんの原稿(流体におけるHawking輻射 )のリクエストがあれば送ります。売れ線では 天羽優子氏講義録 (PDF) も狙っている。学会で菊池さんにお願いしておいた。果してどうなるか。 とつらつら書 いても飯間君がここを読まなかったら話にならないのであるが。


4/2:

やや学会で気が抜けてしまった様だ。昨日は子供のためにざりがにを3匹捕ま えたが、どうでもいいことだろう。

学会でのシンポジウムは盛況であったし、議論も活発だった。未来の発展も感 じさせるものでもあり、一応成功ということになるであろう。しかし学問とし て生き残るかどうかはこれからである。言うまでもないことであるが、既存の 理論よりも論理的整合性が優れているというだけでは生き残りのための十分条 件を満さない。SSTでなければ計算できない現象例が沢山あって初めて生き残 りが可能である。勿論、ここで言う生き残りは相当高いレベルの話であって、 単に論文が何回引用されたという低いレベルの話ではない。

学会ではシンポジウムとその前のセッションの落差が気になった。シンポジウ ムに直結するセッションでありながら部屋の広さに負けて熱気が乏しかった様 に思う。現時点ではシンポジウムの聴衆の殆どは興味半分と断じてよいだろう。

粉体セッションに関してはまああんなものかもしれない。田崎さんや高安さん が的確な質問をしていたのが印象的である。田崎さんの批判は確 かにあてはまるだろう。御手洗さんが極性流の結果を温存したため、今回の発 表で最も印象的だったのは中西さんの発表であった。(これも御手洗さんが共 著になっていた)。Homogeneous coolingでの250000粒子の数値計算もさるこ とながら不安定性を極めて簡潔に説明して、シミュレーションで実証した事が 印象的であった。coolingそのものは重力効果を消す必要があるために実現が 難しいが粉体の最も基本的な プロセスであり、粉体の統計力学、流体力学を考える上で出発点になる。また 空気中で落下させたり、高速流動層中で近似的に実現する。実は高速流動層中 での相分離はまさにSSTでなければ記述できない例題と考えていたのだが、ど うもその必要もなさそうと思わせる中西さんの発表であった。それにしても吉 田は苦しい。彼はこういう状況で、どうすればいいのだろうか?

飮み会では田崎、佐々等の他、池上さんも一緒だった。何を隠そう池上さんは 幼なじみである。この分野に所属しているのも池上さんの影響がなかったとは 言えない。池上さんは1つしか違わないが、(KEKの副所長や学振の監事を勤め られた)Kさんの長男と私の兄とよく3人組で遊んでいた。一方、私 は一つ下のKさんの次男と池上さんの弟とよく遊んでいた。忘れもしないのは、 小学校に入学して弟組で遊んでいたときに、池上さんがアパートの4階の窓か ら顔を出して「尚男、小学校に入ったからといっていばるなよ」と叫んだ事で ある。この話はいろんな処でしているが、実は含蓄が深いと最近、思ってきた。 というのは「小学校に入学」を例えば「粉体をずっとやっている」に、 池上さんを例えばXざきさんに置き換えてもそのまま成立する。確かに長くやっ ている、小学校に入るということはちっとも自慢の種にならない。また外部か らの批判というのは有難いものである、という事をつらつらと考える。

最近の傾向として論文を書く前に失速してしまうことである。自分で飽きてし まうのと、欠点があるときに踏ん張りがきかないことである。これも外部刺激 の乏しさのなせる業かもしれない。その道の権威になると余人は口出さず、当 人も何も語らずになるという北杜夫のギャグがあった(怪盗ジバコ)が、権威 でもないのにそうなるとしゃれにならない。とりあえず熱伝導の3次元はすぐ 計算しておかないといけない。ストレス場は計算できているので道筋は2 次元と同じである。

佐々が大信田君(彼も苦しい。頑張れ!)の日記を紹介したら、即リンクがあっ た。僕は元同僚の 西野さん(神戸大)の日記をリンクして欲しいと思う。さて何日でリン クされるか。或はフィルターがかかってリンクされないか。

Web pageの整理をある程度した。リンク切れ等を訂正し、新年度用に置き換え た。本格的な改訂ではない。川崎さんのインタビューをps,dvi,pdf各種取り揃 えた。Boltzmannの使徒は必読?