日記(8月)


8/31:

refereeを仕上げて金君の原稿にコメントしてPuriの原稿にコメントして何か 知らんうちに時間が潰れている。

とりあえず境界条件がどうなるかを考える。確認できたことは粒子の滑りがな いので自明な関係式が成り立つ事。どのくらい回転と並進に分配されるかは不 明。エネルギーの分配則と平均値の分配は違うようだ。

昨日、岩波の人がべんちゃらで物性研究をほめてくれたので編集長のお仕事を する。好村さんにかき氷騒動の話と解説を書いて頂けることになった。


8/30:

McCoy等の論文(1966)に行きつく。とりあえず大枠は分るが細かな処ま で計算するのは僕には難しいと悟る。そうすると粘性率の定数は消せない。

岩波より電話。だいぶ情勢が変った様子。そろそろ再開せねば。

Referee の下書き。


8/29:

文献を見てもやっぱり並進から回転への運動量の移行は書いていない。普通に Boltzmann typeの運動論方程式を仮定すると出てこないからな。すると Generalized kinetic Liouville equationに戻ってcollision operatorとか扱 わないといけないのか。これは避けたい。

佐々からノートが来る。一般論としては説得力がある。実際に計算できるかど うかは別問題だが。Knudsenについてはようやく合意したようだ。2次で Boltzmannが正しくないというのはあるかもしれない。上と同じ様な話。

Ernstの処に留学している北原研OBの若生君からの論文が届く。かなり荒っぽ いがとにかくGranular gasでTDGLを導くという、考えなければならない話題の 解析をしていた。やっぱりeffective surface tensionはある。彼は僕の前に講演 する。今は御手洗さんと一緒に独逸の統計物理の夏の学校に出席しているよう だ。

昨晩、プロジェクトXを見る。予想通り期待外れ。そもそもこの番組はかなり 皮相的で嘘八百的な誇張が多い。広辞苑の執筆では辞苑の存在を無視して問題 になったし、魚群探知機の話は(たまたま見て楽しめたが)どっかの焼き直しで これまた問題になったらしい。他にひどいのは一杯ある。余りにひどいので5 分で見るのをやめたのが自動改札の開発である。混雑緩和のためというさわり が出た瞬間にテレビを消した。嘘ばっかりである。近鉄で導入されたのは30 年も前だが首都圏でなかなか採用されなかったのは混雑を促進するからである。 人間の神技の方が機械より上である。題材の選択も疑問がある。 国産ロケットの開発とかYS11とかどう見ても海外から取り残され失敗したプロ ジェクトを取り上げているのは解せない。(青函トンネルもあったかも。あれ も意味がなかったという点では失敗でしょう)。それでも見てしまったのはラ グビーねただったからである。伏見工業の話で悪い予感がしていたがやはり予 想通りである。釜石の半分の側面を過度に強調している。釜石が7連覇したの は松尾、森等の大学卒のスター選手による処大で、地元高卒の人(洞口等)と の競合によってもたらされたものである。そもそも釜石が昭和46年に日本選 手権で早稲田に負けたのは屈辱的であった筈である。70年以降で学生に負け た社会人チームは72、76の三菱自動車京都と71の釜石、86のトヨタ それと88の東 芝府中しかない筈だ。そもそも76年に松尾率いる明治が日本一になってその 松尾の加入で強力チームとなった釜石が学生の早稲田ごときに負ける筈がない。 27ー12は早稲田の健闘といえよう。むしろ期待していたのは地元の高卒選 手と関東のスター大卒選手の葛藤と調和である。(そういえば市口という元監 督は現在は京大の監督らしい)。伏見の時も平尾は無理にして も大八木の話は見たかった。この番組を 何回か視た感想としては最初に結論ありきで強引 にその方向に話を誘導するので視た後にむかむかしがちである。


8/28:

わかりそうなんだがまだ出来無い。昨日はああ書いたがやはり論理的整合性の 方が問題かもしれない。Boltzmann方程式の摂動に接点の速度差を入れるだけ なのだが。

そんな事をしているうちに夏休みも終わりか。去年は反発係数のシミュレーショ ンを、一昨年は極性流体のStokes流を計算していた。何とか仕上げなくては。 来週に入ったら戦略を変更する必要がある。

時間の使い方は下手だと思う。能率が上らない時間に原稿等の雑務を済ますな り、他の事を考えるなりすればいいのだができない。

SST関連では熱流一定と温度勾配一定とは全く違って結果が大きく変わる事が 分った事。

学生訪問。粉体は何故化学系なんだろう。物理で研究している方が変なのか。


8/27:

Curtissの論文を読む。しかしこれだけでは不充分。一方でDahler等の摂動解 はどうもtrial functionとして導入している様子なので教科書にあるようなすっ きりとした話ではうまくいかない可能性がある。またLunの論文を見ても計算 は頗る面倒。Jenkins & Richmanが何をしくじったのかも今一歩はっきりしな い。論理的な整合性よりも繁雑さんの波に足を掬われそうである。

SSTの話は続くが、魅力的な打ち上げ花火はともかく現実にどうするという指 針は全くないと言ってよい。非平衡のKnudsenからの展開だから当然平衡熱力 学に熱流の2次を考慮したものとは一致しないと言っているのだが伝わってい ない。その補正をしたとしても全てのモデルで同じ結果になるとは考えにくい。

必至が尻あがりというのは関西風なのでは?そもそもイントネーションなぞ関 東と関西、中京、東北、九州で全く違うから、と思ってしまう。


8/25:

SSTの論文を読んでいらいらする。(多くの人もがそう感じるのではないかな?) その文句と我々の研究との絡みもあって佐々と大量のメールのや りとりになった。彼の言うことも分らんでもないが、可解条件が一つ変更され てしまうので計算そのものが破綻しないかという懸念がある。もう一つの手は SSTの下僕になって有効温度を導入し、エントロピーもconsistentになるよう に定義するという最低の選択もある。まあ普通に計算してみるべか。

しかしChapman-Enskog法に文句を言われても知るかと答えるしかない。他の展 開法もあることはある。最も過激なのは曽根によるS展開だがよく分らない。

それやこれやで本業の方は相変わらず停滞している。

そんな事をしているうちに砂山も考えないといけなくなってきた。stress chain splittingを理論的に考えたBouchaud et al, EPJE 4,451 (2001)は標準的としてその先をどうするのか。


8/24:

佐々からKnudsen効果はSSTの範疇にあるというメールが来る。この間のノート はあまりそうは見えなかったが。どっちにしても不等式ではなく強い制限(等 式)を出してくれた御陰でSSTと気体分子運動論が整合しなくなった事 がはっきりしつつある。

極性分子運動論はどうやらCurtiss(1956, JCP)から読み始めないといけないよ うだ。難儀な話である。1週間で片を付ける筈が予定が狂いっぱなしである。 作戦を変更しようか。


8/23:

暫く振りに普通に学校に来るが仕事は(当然の様に)はかどらない。回転のあ る場合の運動論の論文はわかりにくいし、肝心のところが書いていない。すぐ 理解できないところが辛い。

金君と佐々から来たノートについての議論。予想通り金君の勘違いはあったの だが、それより希薄気体の運動論はSSTと整合しない事がほぼ確実になった。 そもそも孔が小さいときのKnudsen効果は熱勾配がなくても熱力学とは異った 予言をしていることを強く意識すべきだった。SSTとの整合性を追及するので あれば孔を大きく、奥行きを深くしないといけないが、自然な希薄気体系にも使えない 枠組をいじることに時間を割く気は萎えた。


8/22:

阪大へ。この日の発表では面白いものは殆どなく聞くことが苦痛だった。摩耗 が凝着によって起ることを知ったのが唯一の収穫か。発表は短い時間だったた めむしろあたふたした。反応は幾つかあったが、それより研究会の後 河 野と議論/世間話ができた事が良かった。

総じてM君の言う通りつまらなかった。


8/21:

台風の中、蒲郡の西浦温泉から(科研費の研究会に参加するため) 大阪に向かう。当然傘は使えないので石橋から 阪大迄の間に濡れ鼠になる。研究会で村上君と議論。熱伝導率が2次元で対数 発散するのはKawasaki-Oppenheim等の粘性率がring collisionにより有限とい う話と整合せず気持が悪い。内職でもしようかと思ったら座長をする羽目になっ た。生物系の話はそれなりに面白いが捉えどころがない。

それにしてもMさんの発表は全く進展がないな。(これはちょっ と話題になっていた。いつまで同じ発表を続けるのか逆に興味が出て来たりし て)。


8/17-20:

帰省、西浦温泉。


8/16:

Chemical Engineering Scienceの改訂に時間を取られる。

OBの矢島君が来る。

Italyの印象記


8/15:

ようやく時差ぼけが取れてきて仕事に徐々に取り掛かる。と言ってもChemical Engineering Science (second refereeがPhys. Rev. Eに投稿したら、と言っ てきた。そりゃそうだ)の改訂, TGF01のアブストラクト と摩擦の研究会の準備。何せ明後日から休暇を とって帰省、続けて研究会だから能率が悪い。

伊東家の食卓を視た。無難にまとまっていた印象。福田君ではないがより印象 的かつ役に立ちそうなのは車の室内温度を簡単に下げる方法の方である。

先週の会議で知り合ったDuftyにBoltzmann の2次補正のことを聞いてみた。DuftyはReichelの教科書にあるように気体分 子運動論に基きlong time tailの存在を理論的に示した一人である。そんな人 に聞いてもはかばかしい答えが得られないということは どうやら本格的にちゃんと2次補正を陽に書 いた論文は存在しないのかもしれない。因みにDuftyは McLennanの弟子であり McLennan自身も気体論で重要な貢献を幾つもしている。また彼の本は定評があっ たが(大野さんに勧められた)惜しくも絶版になっ ている。しかし彼のページからダウンロードできることを発見した。またこの 辺りの人はLehigh繋がりで嘗ての共同研究者(また共同研究を再開しようとし ている)の Daniel Hong とも仲が いい。


8/14:

極性流体の論文を ようやく投稿できた。夏休み中に第2弾といきたいが無理かな。

希薄気体でSST効果が観測できるかどうかは微妙な気もする。一般に境界効果 は温度勾配の1次で効き、その項が残るとSSTの予言とは(多分)異なった結 果をもたらす。バルクの2次の効果がそのまま孔に繋がってくれればSST効果 があることは正しいであろう。そもそも積分を残して2次の効果を計算するの は死ぬほど面倒である。(流体力学モードでないため大抵は意味がなく、計算 そのものも無視される)。どうやら本当にまともに計算した論文が存在しない のかもしれない。


8/5-12:

Challenges in Granular Physicsに参加。


8/3:

うーん。うまくいかんな。境界値問題として解いてみても傾向は変わらない。 このままでは不充分だ。

必ずあると思っていたがやはりあった。多原子分子の気体分子運動論で回転の 自由度を含んだもの。何故かCouple stressがないのが笑えるが、輸送係数は 値がきっちり決まっている。論文原稿でもかなり訂正が必要である。

ということで帰国後はまともにEnskogに取り組んでみよう。壁の効果を採り入 れて考えると直接うまく計算できる筈である。

結局Triesteは非弾性衝突か。盛り上らないな。

佐々の温度勾配の2次でBoltzmann方程式が変わるという話は信じがたい面も あるが壁の効果と考えるとここ数日の格闘からさもありなんという気もする。 しかしそもそも熱勾配は一定でなくなる問題は一体どうしてくれるのだと思う が。

摩擦の研究会は前半は出れないとして出したら最後の講演になってしまった。 前半に面白そうな/関連のありそうな講演がある。科研費の研究会というのは 盛り上らないのが通例であるが、沢山の参加があった。20分講演だから絵を 見せておしまいかな。


8/2:

昼にTCを作りに出町迄行ったら暑さで融けそうになった。

そのせいか回転分布の計算はうまくいかない。そもそもパラメーターが多過ぎる。 (非弾性)Enskog方程式からきっちりと决める事が出来る筈だが、そういう正 攻法には時間が足りない。また端で値と微分を決めてRunge-Kuttaで計算する とかなり微分値に敏感であることが分った。どちらにせよ似ていない。こぶが 出ない。うまく行かない理由がないのであるが。。。 うーん間に合わないかな。


8/1:

2次元の場合の密度分布をEnskog方程式で計算してみる。3次元と同じ様に計 算すると境界で発散するので角度を残したままで計算してみるとうまくいく。 結果はDEMの結果とfitting parameterなしでほぼ完璧に一致。散逸は殆ど効い ていないのでがっかりした面もある。ちょっと時間がかかった。

明日のうちに回転分布を計算しないといけない。間に合うかどうか微妙だが、 考え方によってはもう学会の準備があらかた出来てしまって論文もすぐの段階 にあるとも言える。Micropolarその2(ほんとうは前に論文があるのだが無視 されている。そいつはMicropolar 0としよう )の終了も間近か。本当に1日で計算が終わるのかな。

御手洗さんの初稿がようやく上がる。完成に近い所まで見せなかったのね。 Micropolarその1ももすぐ投稿だな。

金君の原稿を配布。さて今度はどんな評か。

Guthの一般向の本を図書館で借りて読んだ。Inflationを思い付いてから1月 後の最初のセミ ナーですぐ2つの大学からセミナーの声がかかり、更に1月半後のWorkshopで 発表したら殆どの主要大学からpositionのofferがあったという。

他に(村山)聖の青春。夭折した天才棋士の一生は心に迫るものがある。

研究会報告が集まっていない。特に講演した人は殆ど送ってきていない。