日記(2月)


2/28:

もう2月も終りですか。早いな。

斜面流れで走行方向の自由度を取り入れた形の複雑な方程式を走行方向の1次 元的な偏微分方程式に落す処方に問題はない事が分った。つまり枠組は固まっ た。但しゼロ固有関数をどう求めるのか、高次の微分をどのように手際良く取 り入れていくかというテクニカルな難しさはある。ことによると Burgers的なものになるかもしれないが、1車線の交通流とあまり変ら ないか可能性もある。大信田君の液膜流の様な面倒な方程式にはなって欲しく ないが、そうなるかも。

来年から暫く教務担当になるがWindowsで作った書類を大量に処理する必要が あり、大変そう。もううんざりしている。


2/27:

昨晩、ちょっとテープ起こしをやってみたがすぐ嫌になった。ものすごく大変。 誰か雇いたくなってきた。

走行方向の不安定性を論じようと思って、ちょっといじってみたが、まともで はとてつもなく大変であることが分った。当然か。何らかの工夫が必要である。 それにしても久し振りに部屋の椅子に座っているという気がする。ここのとこ ろせわしなかった。


2/26:

阪上さんの完成稿と牧野さん原稿が届く。牧野さんのは力作で期待以上。

Cardy's seminar & discussion & dinner. CardyのセミナーはSpin Quantum Hall effectをclassical percolationにmapする話。両者に関係がありそうだ という話は3年前に聴いた気もするが、きれいに定式化ができるとは驚き。素 人にも分りやすいセミナーだった。


2/25:

昼過ぎに京都に戻る。夕食は香取さんとCardyと摂る。Cardyはいかにもインテ リ風の初老の紳士だった。つっつくと面白い話をしてくれるがde Gennesのよ うに饒舌なタイプではない。


2/24:

川崎先生へのインタビューのため高蔵寺に行く。3時間余りのインタビュー。 許可があったので先生に目を通して頂いてから公開の予定。名古屋泊。


2/23:

午前は御手洗さんと議論。出張している間に彼女の計算が進んで、とりあえず 速度プロファイル問題の終結宣言を出す。速度はばっちりで、回転は今一歩。 まあこんなものでしょう。次は走行方向の不安定性を彼女の滞在期間内に片を つける。

午後に市來原稿を読む。少々勇み足の箇所を除くと悪くないと思う。


2/22:

九大理学部に行く。理学部に行ったのは7年振りで、6階に上ったのは学位を 取って初めてである。事務の久保さんに御会いできたのは懐しかった。全般に 明るくなった印象がある。

午前は中西さんと議論。かなり慎重であるが、詰が甘い僕にとっては有難い。 物性理論グループのスタッフ連中となごやかな昼食の後、吉森さん(同期) と議論。衝突問題の解決のヒントを貰う。彼の仕事や頭の構造は僕よりだいぶ しっかりしているようだ。


2/19-21:

研究会。一人2時間の講演だとさすがに勉強した気になる。非常にいい講演が 多かったと思う。なかでも西浦さん(やはり数理研は兼担)の講演は反応拡散 系の界面ダイナミックスに本質的な発展があった事を納得させるのに足る内容 があったと思う。5年前の講義を受けたときは理論としては川崎・太田から発 展がないと思ったが、今やstrong interactionも扱えるようになってパターン を理解するという意味ではかなり満足すべき結果を出している。集中講義に来 られるそうだが、その機に勉強し直したい(がとても聴けないだろう)。また 矢部さんのCIPも久し振りに聴いたが、益々パワーアップしており無敵を思わ せる程だ。とりあえずCIPを修得し飼いならす必要がある。

僕の講演はまずまず。極性流体のさわりを入れたので、そこで予想通り反 応があった。


2/17:

結局 発表の準備はお茶を濁した感がある。今ただ中の研究でないとどうも迫力 に欠ける様な気がする。今回は長いし、聴衆が粉体の話を聴き慣れていないか もしれないので難しいかもしれない。流体の人が多いのでMicropolarの話のさ わりをIntroductionに入れた。(そうしないと場が持ちそうにない)。

学会の宿を探したら空室1だったので慌てて予約した。


2/16:

細かな処を見るといろいろとぼろが出てくる。と言うことで出張前に終らなかっ た。出張準備の方も気分がそちらに向わない。と言っているうちに長時間会議 にtrapされる。


2/15:

金曜には終了と大見得を切った割には単にWKBの解が積分できないという実に 下らない理由で頓挫。数値積分してもいいがMatchingの解があるし今一つ意味 がない。せめて漸近形をと思ったが定積分がパラメーター込なのですっと出来 無い。これも定数を決めてしまえば訳がない(数値的にパラメーターを動かす のも容易)が、どうも今一である。というので明日に向けて急拠Matching解の 精密化に方針を切り換える。

川崎先生のインタビューは24日に設定される。科研費も校費も 旅費を使い切っていたので自腹で名古屋に行かねば。最近 出費がかさむ。ところでインタビューって何を聞けばいいのだろう。九州にい る間に整理しておく必要がある。とりあえずは固体物理の記事をベースにして そこで落ちている箇所や分りにくい点を聞こう。また70年以降の話も。

何だかんだと言って九州の準備をしていない。衝突の方もなかなか再開できな い。熱浴つきの計算をするつもりだったが準備だけして間に合わない。

octet-streamの添付メールが来る。うーむ今迄見たことがないぞ。開けない。

そう言えば総人自然構造の3年で一番よく出来る(僕の統計力学の講義では2 次元Isingの厳密解を完全にフォローしたレポートを書いてきた。もっとも 自然構造の3年には3人しかいなく て、そのうちの一人は留年が決定的らしい。もう一人優秀な女の子がいたのだ がどうなったのだろう)学生は卒業研究で宇宙論の研究室に行くらしいが、ど うもプリンキピアを読みたいと言って阪上さんを驚かせたらしい。如何にも総 人らしい。

因みに私は自然構造ではありません。計算理学に兼担。来年から物 理科学に一本化されるのだがどうも部分的にはよく理解できない複雑な構造は 残るらしい。


2/14:

午前から研究打ち合わせ。見事にMatched Asymptoticsが機能している。僕の 昨日の計算は終りぎわに間違いに気が付く. 間違いに気が付いたせいでWKBだ とMatchingが不要と認識。かなり趣味的な話になりそうだが、金曜までに完全解決す ることにした。10年間の粉体の研究が実を結びそうで何となくうきうきする。

物性研究の編集会議ネタでも書こう。川崎先生にインタビューをして非平衡の 発展の歴史的な事柄を明らかにしようという企画が通った。もう一つは阪上さ んにお願いしていた「流体でのHawking輻射」が届く。非常に面白い記事で単 にHawking輻射の優れた解説というだけでなくその古典対応物が明確に示され ている点でも読み応えがある。


2/13:

PG2001の登録料を振込みに行 く。高すぎる。Excursion(どうせ松島だろう)とBanquet,食事込というのは 無駄金を払った気がしてならない。また仙道白衣大観音の足元の辺鄙なホテル (バブリーで閑古鳥が鳴いていたな)という場所もよくない。何よりInvited speakersが食指をそそらない。また月曜から金曜という日程も長過ぎる。 余程やめようかと思ったが、参加するのは、既に原稿を送ってしまったこと、 共同研究者との連絡のため、Not invited speakersの面白い話を聴くため等で ある。ところで今年で科研費が切れるが来年度何もない可能性も大いにあり得 る。その場合、(回収できない登録料の他に)仙台までの旅費、滞在費も自腹 になる。どこかの委任経理金でも申請するか。


2/12:

Micropolarの速度とMicrorotationについて考える。厳密には解けないので近 似解を構成しないといけない。 WKBを使うか、或は先週の方針通りMatched Asymptotics を追及すべきか結論でず。こういう処で足止めをくうことは往々にしてある。


2/10:

西成さん(龍谷)の研 究室に御邪魔する。物理の議論。彼は最近CAの立場からInelsatic collapseをさけ る高速アルゴリズムと粉体系への適用の研究をしている。非弾性衝突は一般に 非可換であるが、可換な 弱非弾性極限でもcollapseは起きる。彼はcollapseとsorting可能性を結び付けて議 論。少なくともsorting可能であればcollapseはおきない。sorting可能なシミュ レーターを使うとEvent Driven MDで生じる諸々の困難さを回避でき、尚スピードは 大差ないと言う。例えばinhomogeneous coolingを高速に調べることが可能に なった。 さすがにきれいな仕事をすると感心した。ちなみにinhomogeneous coolingで は温度はlong time tailで決まるらしい。ありがちだが本当か?

後は我々の話をした。龍谷も少子化時代にも拘らず拡張計画をもっているらしい。


2/9:

片岡 君の日記リスト を発見。昨年度はよく使っていたが今年度はどこにいるか もフォローしていなかった。早速飯間君 が物性研究という雑誌の性格を読み違えていた事を訂正できた。

spin viscosityとcouple stressを極めて物理的な理論で導出できた。Lunや Jenkins & Richmanの過小評価を訂正。もっとも希薄極限では無視できるので 彼等が全くの間違いとも言えない。それを用いてsimple shearの解析。これは うまくいく。定性的にはDEMの結果を殆ど再現出来た。本当は完全に解析的に 解きたいが、今のところ漸近解のみ得た事になる。もうちょっとでsimple shearは完全解決となる。そして粉体流が極性流体であることの明白な証拠が 提示出来る。粉体研究の一つのゴール(そして始まり)かもしれない。ここま での道程は長かった。御手洗さんに感謝。後は走行方向の不安定性の議論だが、 これは容易だろう。(という気の早い話は間違っている場合が多いから真に受 けない方がいい)。

粉体を履歴依存のメタファーとしてのみ捉えるのは矮小化しすぎ。そういう面 もあるが、それだけだとつまらない。それと林さんという方の日記に粉体に関 する記載が物 理学辞典にないとしてあったが、次の版から載ります。

そろそろ衝突も再開しないと。Nose-Hooverでやってみるか。

清水さんのページの運営方針の中の大 学院の変容:同感だなあ。 2/8:

午前は院入試の監督。年2回も試験をする意味はないと思うが、文系と一緒だ といろいろなベクトルがあって無駄が多くなる。

午後に理学研究科のDC3の発表会を覗きに行く。3人分聴いたが皆元気がない。 その後に吉田を掴まえて議論。


2/7:

Simple shearをnaiveに扱うとDEMそのままなのだが。ちょっと考えると矛盾す る状態を抜けていない。多分ちょっと考える方が浅はかなのだろうがそこの説 明がつかない。

採点。物理学概論は皆よく出来ていた。但し三角関数の足し算は出来ていなかっ た。というより三角関数は分っていないということか。数学の力は本当にない。 しかし物理は嫌われていないと思う。 統計物理は壊滅状態。どうなっているのかとい う位出来ていない。物理概論でも多々そういうケースがあったが、 そもそも登録して受験しないのは救いようがない。

昨日、ギリシャ語の試験監督をした。受験生は3人しかいなかったが、学生の真剣さ が伝わってきた。3人のうち2人が医学部というのも大学らしくていい。こう いった科目がある事は貴重だと思う。

あるところで高校の教師が大学の教官になる話をしていたのでそれをネタにす る。高校の先生が大学の教官になった有名な例。 佐藤幹夫は高校の先生だったのだが、その生活に嫌気がさして?1957年の 夏休みに弥永昌吉 に相談しに行った。そのとき手ぶらではいけないというので考えたのが hyperfunctionであった。そのときまでに論文はなかったがこれ一つで佐藤幹夫の 名は不朽のものになった。その後も素晴しい活躍をしたことは言うまでもない。

卑近な例。Illinoisにいたとき、香港の人と結婚しているHさんという 日本人の女性がいた。 旦那はUIUCでオーケストラの指揮の勉強をしていたが、卒業して香港のオーケ ストラの指揮者として迎えられることになった。一方、奥様は暇にあかせて? 勉強をし、学位を取り、the University of Maineに専任講師として 就職が決まった。主婦の暇潰し?でもプロになれるという処にアメリカの懐の深 さを感じる。その後夫婦はどうなったのだろう。


2/5:

週末にsimple shearの整理と計算。シミュレーションの結果を気にしないので あればviscositiesとかを定数にすることで問題は可解。密度分布は説明がつ く。他も定性的にはいい。しかし実際にはviscositiesは温度の関数で、温度 は空間に強く依存する。そう考えて温度の方程式を 解こうとすると非線形で解けない。preaveragingという手もあるが、 Microrotationが殆ど定数で、温度が空間依存があるという傾向と矛盾する。 ここは御手洗さんの意見を待つことにしよう。

田崎さんが統計物理への熱い思いを語っている。統計物理は量子力学の生みの 親となった古い学問だから、(不完全さを感じつつも)多くの専門家に省みら れないのも仕方がない面もある。10年以上も前に南部さんが「統計力学は死ん だ学問」と言われたのを思い出す。その後に「だがKadanofff等の非平衡の研 究がそれを救った」と続いた。無論、個人的な会話で同僚への賛辞があるので 文字通り受け取ってはいけないし、KadanoffがBoltzmann medalを取った年の 話で当時のChicagoの熱気がそう言わしめた面もある。(その方向の発展は外 れだったと言わざるを得ない)。しかし統計力学でも多大な貢献をした南部さ んの言葉だけに重い(と思った)。

一般に非平衡と平衡の分野の乖離があるのは事実だろう。こ れはBrown等のTwentieth Centry Physicsでも別 章で歴史を論じている。電子系に多くの重要かつ面白い問題が隠れていても非 平衡サイドから手 を出す人が少ないのは競争相手のあまりの多さもさることながら、cultureの 違いにも依っている。しかし専門分野間を自由に飛びこえられないのは田崎さ んに指摘されるまでもなく研究者の怠慢ということに帰するだろう。

こうした否定的な意見にも拘らず、個人としては 普遍的方法論としての統計物理の持つ可能 性を追及したい。 また粉体に囚われすぎている 気がするが、これはそこに宝の山があるのに放棄することが出来無いからであ る。そろそろ何とかしないといけないが、衝突と表層流の話は満足のできるレ ベルへもっていきたい。(競争相手が少ない=未成熟、という現状に甘んじて いる事は確かだ)。

父と川崎先生の強い意見、実験結果を説明できないものは価値がない、とい うのも意識せざるを得ない。他人のやっていることをやってはいけないという 教えもあった。


御手洗さんが頑張ってJenkins & Richmanの論文での計算をしてくれた。とて も僕では出来無い様な計算をしてくれるのは有難い。(こんな事で負けてはい かんのですが)。もっともそれでも追い切れない処が多々ありTechnical Report を注文する。その間にもう少し週末に進めた計算を整備して物理的に考察が可 能かどうかを考えてみよう。やっぱり正攻法は難しいし、彼らの計算は不充分 だから考える余地はどうしても出てくる。

書きかけの原稿を巡る大量のメールあり。考えるより早くメールが来ると処理 が難しい。どっちにしてもあの原稿は大学院の講義用に生かします。

Cardyの セミナーの予定が決まる。


2/3:

改組の事を考えると頭が痛くなるので相変わらず不調である。

とりあえずMicropolarの整理のためにノートを作るのが仕事。大体いいと思う が、折角計算した境界条件の効果がうまく取り込めていない。やっぱり Jenkins and RichmanやLunのは不充分。Microrotationの過小評価。安心した 面もあるが、ちゃんとした計算は大変だろう。Simple shearの問題は変数が増えて収 拾がついていない。

岩波からこんな原稿では困るという連絡があった。3週間待って期待外れ(予 想通り)のコ メント。 岩波のは短かくしろという事だったが、こいつを completeに書いてサイエ ンス社に回すか。しかしどこの出版社も根性がないから、難しいと断られるの がおちか。

古賀君 に昼偶然会ったが、Cavendishの S.F. Edwards の所に1年滞在すると言う。Boltzmannメダルも取った Edwardsは70過ぎだが、 尊敬に値する大人物であるだけでなく現役で粉体でも興味深い研究をして いる。羨ましい。Edwards modelの発見の話は面白かった。知っている人は知っ ているが、彼はSchwingerの弟子(だった筈)。


2/1:

鬱々として楽まず。誕生日であるにも拘らず。物理を研究できる環 境はいつまで確保されるのか?

どうも表層流はかなりNewtonian Micropolar Fluidでいけるのではないかとい う気がしてきた。それで少し計算。結果は定性的に一致。Binghamとかyieldと いった概念は不要かもしれない。