日記(9月)


9/29:

成果なし。総長選挙ー>講座会議ー>総長選挙。そういえば京都では田崎さん らが訳した文章を新聞では見ない。


9/28:

大学院入試2日目: 消耗する。


9/27:

大学院入試1日目:物理以外の科目の採点に初めて駆り出される。意外と自由 裁量なので驚く。

もっともこんな時期にやっても誰も受験しない。かつてはもう少しましだった がそれでも試験時期は遅く不満があった。然る後に改革委員会で協議されて何 故か更に試験時期が遅くなった。物理で言うと5年位前は受験者が70位はあっ たものが今や1/3以下になっている。そもそも願書を出した中での受験率が半 分を切っている。

次回の物理学会はパスしようと思っていたがアメリカ行きの予定が決まらない せいもあって参加せざるを得なくなった。まあいいか、近いし。


9/26:

相変わらず頭が回らない。

昼には事務仕事のまずさを露呈してうろたえる。それにしても研究室のコン ピューターやプリンターがなべて調子が悪い。

非弾性衝突について議論。とりあえず転がり摩擦の簡単なモデル理論で何が出 てシミュレーションとどう一致するのかを調べることになった。


9/25:

頭の回転が遅い。ともかく境界条件から分布関数に制約がつくことは明らかで ある。そこをクリアにする必要がある。

科研費の分担依頼あり。これは確率が高そう。分担者で科研費が当っても使え ないと意味がないが。(今年は分担で2つ貰ったが一つは大阪に行っただけで、 もう一つは辛うじてヨーロッパ行きに使えたがそれで終わり)。個人申請の方 も今年は当る様に申請を出さないと困る。

授業準備を少し。


9/24:

時間があると何もしないという典型的な一日。科研費申請の制度が面倒になった。

「女盗賊プーラン」を読む。中身がないからすぐ読める。しかし下層のカース トに生まれ、盗賊になり、逮捕されて、国会議員になり、(昔の仇敵に)射殺 されるというのは日本ではちょっと想像が出来無い人生である。


9/23:

子供のバイオリンの発表会。'Music of the Heart'みたいに感動的なものでは ないが。そういえば映画の出演者でありユダヤ人でもある アイザック・スターンが亡くなった。


9/22:

ポール・ジョンソンの「ユダヤ人の歴史」を読了。 伝説のピアニスト、ホロビッツが「ピアニストには3種類いる。ユダヤ人とホ モと下手糞だ。」と語ったことに象徴される様に ユダヤ人といえば科学、芸 術、金融等の諸分野で圧倒的な才能を示すと同時にそれらの分野の指導的立場 にある。一方で厳しいアンチセミティズム の標的とされて考えられないような迫害も受けてきた。このような一見矛盾し た歴史的事実は何故生じたのかを解説する好著。おそらく敬虔な一神教への帰 依と律法の精神が非妥協的なストイックな態度を生み、それが芸術や科学の修 養段階の地味な作業を黙々とこなすことや、自己や他人に対する非妥協的な態 度によるあくなき完璧主義の志向を生むのであろう。また君主や国家宗教に対 してもあくまで膝を屈しない崇高な態度は支配者層や大衆の反感を生んだ事も 想像がつく。しかしながらダビデやソモロンの時代に繁栄したイスラエル王国 の崩壊以降、第2次大戦に至るまでの迫害に対する非暴力主義、無抵抗主義は理 解し難いものがある。(西暦66-71年の大暴動では組織だった軍事的抵抗があっ たとは 言えないだろう)。 同時にトロツキーをはじめユダヤ人によって支えられた ロシア革命とソビエトが総数としてはヒトラーのホロコーストに劣らぬ数のユ ダヤ人の虐殺を行った点も理解し難い。マルクスはユダヤ人であったのにも拘 らずである。

ヨーロッパでユダヤ人に同情的であった一群の(主に英国の)人がバルフォア 宣言以降新らたな紛争をアラブ人との間に作り出した。(そもそもウガンダに イスラエルを建国させようという案もあった様に)英国の広大な植民地と世界 支配から来る一方的な世界地図の書き換えが欧米のアンチセミティズムを緩和 させた一方で、中東に多くの不安定要素を作り出したというのは 皮肉と言わざるを得ない。

Procassiaが昔、73年の中東戦争の勃発が突発的であり芝生に寝転ぶ relaxした状態からいきなり攻め込まれたと語っていたがジョンソンの本はそ れを裏付ける。


9/21:

午前は御手洗さんと議論。名案はない。とりあえず壁近傍でEnskog方程式を展 開すると境界条件と立ち上がりは出る筈という事になった。

午後の会議の後、同志社に行くが中西さんの講演しか聴けなかった。


9/20:

若生さんが来訪。いろいろと議論。Grad-Hilbert展開とChapman-Enskog展開の 非同等性を指摘するなど鋭い意見が多々あった。夕食を一緒に摂る。


9/19:

学会出席のために徳島往復。往きも帰りも京都からバスに乗ったのだがいろいろと 謎が多かった。17日の帰りと都合3回乗って、また17,19日の帰りは同じ時刻に発車 するバスだったのだが経路(17と19朝は神戸市内を通る山陽道経由で19は中国道経由) が違うは、今日はトイレストップはあるはでまるで違う。また今日の帰りの便は 昨日の予約段階では残席2とか言っていたが結構空席があった。無論、トイレストップや 空席のある方が快適である。

学会はSST session+ poster session(と言ってもSSTのポスターを見に行っただけだ から実質SSTだけ)に出る。オーラルは座長だったので質問は控えた。会場が狭いだけ に人が溢れていたし、特に佐々の講演では廊下の窓が開いて外から質問も出たりした が、全般に静かな活気の乏しいセッションだった。佐々講演にしても質問は少なく (そのうち一つは学生の林さん)、休憩時間に沢山の人に囲まれる訳でもなかった。 聴衆は関心があるのかないのか不明である。


9/18:

熱力学の採点。面倒。ようやく最後まで一通りつけ終る。


9/17:

学会1日目。日帰り。バス移動で腰が痛くなった。

朝京都駅に行くと満席で乗れないとのこと。急拠三宮迄電車で行き、そこでバス に乗る。三宮からだと空いていた。乗り継ぎもよく京都から乗るよりも早く着いた。

以下で学会の印象記。


9/15:

トラペ作り。学生の練習。

物理学会誌 9 月号の「座談会『物理学の明日』」。読んで不愉快になるパリ ティのものに比べたらだいぶまし。座談会をやったからどうなるものでもない ので大抵のそうした企画は失敗に終わる。田崎さんの日記を見ての反応 僕は職人も必要だと思う。職人しかいないというのは問題ではあるが科学技術 の進歩の下支えに職人の業というのは確かに必要である。

テロを見て:やはりアメリカは暴力を国是としているな、との印象を持つ。僕 は中学の頃に文革に入れあげて(普通に中学生位が 朝日新聞を読むとそうなる。これもひ どい情報操作だが)親に呆れられた人物なので元々アメリカの覇権主義とか人 気取りのための爆撃とかは嫌でならない。Bushが馬鹿な外交がテロの呼び水に なったり、事前の 情報蒐集に失敗した点は問われないでBushの人気が上がり戦争を仕掛けること を国民が一致して支持する点に危うさを感じる。そもそもオサマ・ビンラディ ンにしてもフセインにしてもアメリカに絶大な支援を受けていたイラン情勢の 変化やソビエトの崩壊だけで人類の敵とする無神経さは信じ難いものがある。 と言っても史上最悪のテロには断固たる対処を取る必要があり、戦争状態にな るのは止むえないのか。割り切れないものを感じる。


9/14:

Enskog方程式の数値解析は既にあるのでもう一度流体の解析に戻る。その結果、 普通の粘性率よりspin 粘性率が大きくなるという非常識な結果にならない限 りシミュレーションの結果と合わない事が判明。流体モデルはとどめをさされ たという事になる。それにしてもChapman-Enskog法の様に流体方程式を導出す る以外にどうやってBoltzmann-Enskog方程式を解析するのだろうか?その間の ギャップは大きい。また最近は比較的容易にBoltzmann-Enskog方程式の(近似 的な)数値解析が可能になったので理論の入り込む余地があまりなくなってい る。このギャップを埋めて理論解析の道筋をつけることが課題だが学会では間 に合わないな。Knudsen層の問題も含め境界付近の粒子の挙動の記述は難しい 問題である。


9/13:

金君は一応まとまった結果になった。頑張っただけに意味のある発表になりそ うだ。SSTとは勿論合わない。(設定が違うから合わないのは当然)。國仲君 も何とか格好がついたようだ。数値計算からCoulomb friction parameterが決 まる。またslipからrollingの転移ははっきりと見えた。 意味はどういうことか、といった解釈は間に合わないかな。

それに引き換え僕の発表は苦しいなあ。ノートをまとめる。明日数値解析だ。 間に合いそうもない。


9/12:

New Yorkの事件に釘付けになる。従妹が(WTCにはない)あの辺りの企業に勤 めているので心配になったが、無事だったようだ。出勤中に地下鉄が止められ て家に戻ったとの話である。しかし言葉がない。

試験監督と熱力学の試験の採点。研究が進展しないので半分弱(100枚程) の答案の採点を する。別解があるし、数が多いので採点が大変だった。大甘の採点で何とか壊 滅はしなかったという感じか。まだ満点の答案は見ていない。


9/11:

昨日の境界条件の議論はやはり破綻していた。うーむ困った。


9/10:

境界条件について决められないかどうかを考察。考えを共同研究者に送る。


9/9:

研究ノートを書くがまとまらず。

「将棋の子」を読む。将棋の棋士は三段迄は奨励会に属し、原則とし て26歳迄に四段にならないとプロにはなれない。従って 奨励会を卒業できず道を閉される若者が多数居る訳(というより殆どはなれな い)だが、ODや学生がプロの研究者になるのと一脈通じる。研究者になる道は 棋士に比べれば甘いのであろうが。


9/8:

事務仕事。研究会の原稿を整理していたら1ページ欠落があった。午後にかかっ てしまった。

夕方に簡単なレジメ(未完)を共同研究者に送る。


9/7:

結局、極性流体に対するChapman-Enskog法は必ずしもうまくいっていないこと を覚る。それで混乱がある。まして今はちょっと状況が違うから困まる。


9/6:

摂動解を作ってみることにする。回転をかけても消えない項はでて くる。うまくいくかどうか?とりあえずやってみるしかないだろう。うまくい かなかったら輸送係数が計算できるかも。

長い会議の後、課題演習(3年) の打ち合わせ。結局飯間さんの昆虫の飛翔の話を輪講して数値計算 をやることになった。


9/5:

流体力学が破綻して使えないという事態に遭遇して頭を抱える。頭が痛い。もっ と早く気が付くべきだった。(都合の悪いことに目をつぶっているなあ)。 DSMC法とかFPM法とかは結果があるから何としても何らかの縮約した解析が必 要になる。最低次でずりが残るために摂動論も慣れたBoltzmann系とは全く違 うし。今のところ手がない。


9/4:

午前中は金君からのノートに加筆してChapman-Enskog法における 局所平衡仮説は論理的帰結であることを示す。多分穴はないと思う。 とりあえず佐々の8/28の 日記の記述に対する解答のつもりである。まあ70年も 前の仕事(それも大勢の人に使われている!)が間違っているという可能性は 殆どなく、今回も例外ではない(と思う)。

一方、僕の仕事の方は発展がない。複雑すぎる。何より昔ちょっと気にしてい たことがどんどん膨らんできてしまう。そもそも変なのは非散逸の極限で明ら かに衝突積分に速度をかけて積分したものが有限に残って密度の微分と温度の 積 とつりあう こと。衝突積分に保存量をかけて積分したものはゼロになる筈だし、圧力は一 定でないといけないのだが二重にその点がおかしい。学会前にこんな事を発見 してはいけないのだが、Italyに行く前の計算の経験からするとここを解決し ないと流体力学的変数の記述もうまくいかない。安直に流体力学を否定したく ないがそうだと解釈しても不思議ではない結果である。

そうか壁では運動量は保存しない。並進対称ではないからあたりまえか。そう すると単純な流体力学は破綻している訳か。学会ではどう発表しようか。

飯間君の原稿を入手。力作である。そもそもこの手の話は素人目にも面白 いし、ちゃんとした解説と物理的な解析の紹介は殆どないので本にしても売れ るのではないか?飯間君はコメントを求めているようなので連絡すれば原稿は 入手できるであろう。他に物性研究ネタはないか思案中。


9/3:

朝教務関係の事務書類の提出期限を見て青くなる。まあなんとかなった。それ でもWindowsと一日格闘していた様な気がする。後、試験も一つ作った。9月 に入ると一挙に雑用モードとなってしまった。学会までにやらないといけない ことは多々あるのだが。。

金君がBoltzmann系では局所平衡しかあり得ないことを簡単に示した。ゼロ固 有関数は保存量の線形結合で書けるので摂動の次数が上っても温度のシフトは あり得ない。つまり運動エネルギーで決まる温度=ゼロ次の平衡分布に現われる 温度である。

メモ


9/1:

試験問題を作る。1題しかできなかった。