コマの幾何学―可積分系講義―
Michele Audin著,高崎金久訳.
共立出版
2000年3月刊.A5判222頁,3500円,ISBN4-320-01655-6 .
原著:Michele Audin: SPINNING TOPS -
A course on integrable systems
(Cambridge University press,1996).
[概要, 目次,
訂正]
概要
可積分系は20世紀最後の20年あまりの間に,
数学とその関連諸科学においてきわめて重要な位置を
占めるにいたった概念である.可積分系の概念は様々に
拡張されて現在も盛んに研究されている.
本書はコマの運動方程式を通じて有限次元可積分系の
理論,特にその 幾何学的側面を紹介する,きわめて
特色ある本である.本文では有名な三人の数学者 Euler,
Lagrange, Kovalevskaya のそれぞれの名を冠する三種類の
可積分なコマを軸に,さまざまな可積分系について具体的に
議論が展開される.それらの背景をなす一般的な理論は
付録に詳しく解説されている.
大学学部高学年から大学院修士課程にかけてのセミナーの
教材として最適であるが,研究者にとっても十分に読み応え
がある.
目次
- 序章
- 1.完全可積分系
- 2.Arnold-Liouvilleの定理
- 3.方法序説
- 4.この本について
- 5.記号
- I 固定点をもつ剛体
- 1.方程式
- 2.可積分性の問題
- 3.自由剛体とEuler-Poinsotの例
- II 軸対称なコマ
- 1.軸対称なコマ入門
- 2.Lax対とその帰結
- III Kowalevskiのコマ
- 1.Kowalevskiの方法
- 2.Lax対とスペクトル曲線
- 3.一般化されたコマのLax対とその応用
- IV 自由剛体
- 1.Euler方程式とManakov方程式
- 2.3次元自由剛体
- 3.4次元剛体についての諸注意
- V コンパクトでない等位集合〜戸田格子
- 1.微分方程式とスペクトル曲線
- 2.固有ベクトル写像〜n=2の場合
- 付録
- 1.Lie代数の双対空間上のPoisson構造
- 2.R-行列と「AKSの定理」
- 3.固有ベクトル写像と流れの線形化
- 4.複素曲線,実曲線,およびそれらのJacobi多様体
- 5.Prym多様体
- p. ii, 10行目: 「南仏」は誤り.Strasbourgはドイツとの国境に面したアルザス地方にある.
- p. ix, 6行目:「Grifitth」→「Griffiths」
- p. ix, 11行目:「Reyman」→「Reiman」(原著の誤り)
- p. 1, Verneの小説「20世紀のパリ」(「20世紀のパリにて」よりもこの方が正しい)からの引用文:「接弦」→「接点を結ぶ弦」,「この種の定理の重要性は誰でも理解できるだろう」→「この種の定理の重要性は誰もが理解していた」.ちなみに,「20世紀のパリ」は1863年に書かれた小説で,100年後のパリを舞台にしているが,20世紀の技術と社会を驚くほど的確に予見している.原稿は結局出版社に拒否されてVerneの生前には公刊されず,金庫にしまわれたまま忘れ去られ,1991年になってVerneの曾孫によって発見された,という経緯をたどった.日本語訳が二つある(菊地有子訳,ブロンズ社,1995年,ISBN4893090976,および榊原晃三,集英社,1995年,ISBN487732177).榊原氏の日本語訳では「重要性」(原語では l'importance)を「難しさ」と訳しているが,前後の話(ある高等教育機関の数学の試験問題について語っている)の流れから見れば確かにその方が自然なようにも思う.
- p. 4, 11行目:「C∞(V)」→「C∞(W)」
- p. 4, 下から2行目:「独立で」→「独立」
- p. 5, 5行目:「dHi(z)」→「dHi(x)」, 「Vi(x)」→「Xi(x)」
- p. 15, 11行目:「Griffith」→「Griffiths」
- p. 15, 12行目:「Reymann」 →「Reiman」
- p. 16, 下から2行目:「直裁」→「直截」(広辞苑参照)
- p. 17, したから3行目「Griffith」→「Griffiths」
- p. 20, 下から2行目:「コマ場合」→「コマの場合」
- p. 20, 下から1行目:「Reymann」→「Reyman」
- p. 28, 5行目:「Γ|→」(原著はこうなっている)は「Γ+εM |→」の方がよい
- p. 34, 3行目:「Arnolod」→「Arnold」
- p. 34, 下から5行目:「hp2」→「h/p2」(原著の誤り)
- p. 36, 8行目:「るか, あるいは」→「るとき, 言い換えれば」
- p. 40, 下から3行目:ここに現れる H,H',K は h,h',k が正しい(原著の誤り)
- p. 41, 12行目:「(c - K)2」→「(c - k)2(原著の誤り)
- p. 43, 6行目:
「(1 - γ3)2(h' - k2 - 2γ - 3)」→
「(1 - γ32)(h' - k2 - 2γ3)」(原著の誤り)
- p. 47, 2行目:「Alder」→「Adler」
- p. 70, 12行目:C2 の C は太字に直す
- p. 76, 6行目:「(6)と(7)はそれぞれ」→「(7)と(6)はそれぞれ」(原著の誤り)
- p. 92, 12行目:「Kuznetov」→「Kuznetsov」
- p. 107, 下から1行目:「P3, P4」→「P2, P3」
- p. 137, 9行目:「Gp」→「G」
- p. 161, 下から7行目:「scyscraper」→「skyscraper」
- p. 173, 10行目:積分記号の前に総和記号 Σ が抜けている(原著の誤り).
- p. 173, 7行目:積分記号の前に総和記号 Σ が抜けている(原著の誤り).
- p. 178, 14行目:「…)R|」→「…)R)|」
- p. 185, 9行目:「奇遇」→「奇偶」