可積分系の世界−戸田格子とその仲間−
高崎金久著,共立出版
2001年3月刊.A5判,320頁,4700円,ISBN4-320-02669-6.
[概要, 目次,
訂正]
2013年7月下旬に
「復刊可積分系の世界」として復刊されることになりました.
旧版にあった多数のミスも訂正しました.
概要
1960年代に戸田盛和氏によって発見された戸田格子は,それ自体が
代表的な可積分系であるだけでなく,多彩な「仲間」を伴っている
という点でも大変興味深い存在である.本書は,これらの可積分系を
紹介しながら,可積分系全般に共通する基本的な概念・技法を解説
することをめざす.そのため,いたずらに一般性を追究することは
避けて,典型的な場合に焦点を絞り,考察や計算の細部もなるべく
省略しないで示すよう努めた.本書の主な部分は基礎解析と線形代数
の知識があれば読めるが,それを越える内容についても,参考文献等
に関する注釈を豊富に用意して,読者の皆様の便宜を図っている.
目次
- 第1章 戸田格子
- 1. Hamilton 形式と運動方程式
- 2. τ函数と双線形化
- 3. Lax 形式
- 4. 等スペクトル変形と保存量
- 5. QR 分解による非周期的有限格子の解法
- 第2章 戸田場の方程式
- 1. 戸田場の方程式
- 2. τ函数と双線形化
- 3. 零曲率方程式によるLax 形式
- 4. Wronski 行列式解
- 第3章 方程式から見た戸田階層
- 1. 無限行列と差分作用素に関する準備
- 2. Lax 形式
- 3. 佐藤‐Wilson 形式
- 4. 波動函数に対する双線形方程式
- 5. τ函数
- 6. τ函数に対する双線形方程式
- 7. 簡約系
- 第4章 解から見た戸田階層
- 1. 半無限格子上の戸田階層
- 2. Gauss 分解による初期値問題の解法
- 3. 両無限格子への極限移行
- 4. 半無限格子上のフェルミオン表示
- 5. 両無限格子上のフェルミオン表示
- 第5章 Calogero 系
- 1. Hamilton 形式
- 2. Lax 形式
- 3. Calogero系に対する射影法
- 4. ソリトン方程式との関係
- 第6章 その他の話題
- 1. KP 階層
- 2. 無分散極限
- 3. Ruijsenaars 系
- 4. r-行列の方法
- 付録
- 1. 行列式の諸公式
- 2. Schur 函数
- 3. Frobenius の定理
- 4. Hamilton 系
- 5. 楕円函数
- 参考文献
訂正
お詫びとお礼:筆者がまだ本書きに慣れていない頃に
書いたものであることも災いして,本書には以下のように
多数の誤りや修正を要する箇所が見つかっています.
今後も新たな誤りが見つかると思われますので,
折に触れてこのページをチェックしてください.
最後に,これらの誤りを指摘していただいた読者諸氏に
お礼申し上げます.
注意:以下ではHTMLで書くのが難しい表現を代替表示しています.
(例)a に上線をつけたものは a-,
波線をつけたものは a~ で代用しています.
また,a の平方根は √a と表わしています.
- p.3, (1.8):「j = 1,...,N」→「j = 1,...,N-1」
- p.4, 5行目:pj, qjの上に波線「~」をつける.
「pj」→「p~」,「qj」→「q~」
- p.4, 9行目:「qj + c」→「qj - c」
- p. 5, 5行目から10行目まで:「一般化戸田格子の格子としての形状が
ちょうど対応するDynkin図形と同じである」という部分は誤り.
同じになるのは通常の戸田格子の場合だけである.ただし,
全く無関係というわけでもない.たとえば,古典系列と呼ばれる
Lie代数のうち通常の戸田格子に対応するもの以外の場合は
Dynkin図形の頂点の約二倍の個数の格子点からなる格子系となる
(格子点の運動に対称性があるので実質的な自由度は約半分になる).
この章の文献 [7] として引用した Adler と van Moerbeke の論文には
この格子のつながり方が図示されているので参照されたい.
当然,格子とDynkin図形は全く別のものであるが,
両者の枝分かれの有無が対応するなど,形状にはある程度の共通点がある.
- p.6の(2.5)ならびにp.11の(2.16):
「(Dt2… = 0」
→「((1/2)Dt2… = 0」
- p.7, (2.6):右辺の分母「τj」→「τj-1」
- p.8, (2.10):「g-N(N+1)」→「gN(N+1)」
- p.11, 13〜15行目:τ函数も周期的になるというのは誤り.
τj+N+1 = g(N+1)(N+2j)τj
というように余分の乗法因子が現れる.
- p.12, (2.18):「A」→「2A」
- p.12, (3.1):「g2」→「g」
- p.17, (3.15):「A[(h),L(h)]」→「[A(h),L(h)]」
- p.19, (4.6):「Tr L = P」→「Tr L = - P」
- p.21, (4.11):右辺第二項「+ a0aN …」→
「+ aN2 …」
- p.23, 中程:QR分解の定義に,Rの対角成分はすべて正である,
という条件を追加する(この条件がなければ,分解は一意的ではない).
グラム-シュミット直交化によって得られる分解ではこの条件は満たされている.
- p.24, 下から2つ目の式:
「… = -Q(dQ/dt)Q-1L(0) + Q-1L(0)(dL/dt)Q = …」→
「… = -Q-1(dQ/dt)Q-1L(0)Q + Q-1L(0)(dQ/dt) = …」
- p.25, 8行目:右辺の「Q」→「Q-1」
- p.26中段の定理とその証明 (p.27にまで続く):
この定理の証明は完結していない。最後に示した等式から
(2.1) や (2.14) のようなτ函数の定義式を導くには
さらに議論が必要である.この議論を文字どおりに
行うとかなり繁雑になる.むしろ,第2章4節4.1項に示したやり方で,
(5.4) で定義されたτsが広田方程式を満たすことを
直接に確かめるのがよい.
- p.27, 2行目:分母「<… > →「<… >2」
- p.29, 5行目:「P = …」→「L = …」
- p.36の(2.5), p.42の(2.15)と(2.18),
ならびに p.49の(4.3)の次の式:
「(Dz… = 0 」→「((1/2)Dz… = 0」
- p.41, (2.13)の次の式:「… φj+1 … φj…」
→「… τj+1 … τj…」
- p.43, 下段の「逆に,…」以降の段落の主張は論理的に少し問題がある,
との指摘を受けた.
- p.45, 下から4行目:「eφj」
→「eφj/2」
- p.53, 下から8行目:「(2.10)」→「(4.3)」
- p.55, (4.23):「… + Σeηk + …」
→「… + Σakeηk + …」
- p.56, 5行目:「Cauchu」→「Cauchy」
- p.56, (4.27):分子の「ajak」
→「ajakλjλk」,
分母の「λj - λj」
→「λjλk - 1」
- p.70 2行目:右辺第1項の m とn が逆
- p.70, 最後の行:右辺第1項の分母「tm」→「tn」
- p.71, 3行目:第1項の分母「tm」→「tn」
- p.72, 13行目:右辺第一項の分母に「∂」を挿入する
- p.73 (3.3):第3式右辺 Bの上線は不要
- p.76, 9行目:右辺「e-∂s 」
→「e-n∂s 」
- p.76, (3.10):「ξ(-t-, e-∂s)」
→「ξ(t-, e-∂s)」,
「ξ(-t, e-∂s)」
→「ξ(t, e-∂s)」
- p.77, (3.13):第3式と第4式の右辺の W に上線をつける
- p.79 (4.5)右辺の「b」→「b*」
- p.80 (4.10)第2式の右辺の星は不要.
- p.84, 図3.2:右側の「KP(1)」→「KP(2)」
- p.88, (5.12):「…v- … v- …」
→「…v-n … v-m …」
- p.89 3行目:両辺の[λ]→[λ-1]
- p.89, (5.20):「… = w-(s, …」
→「… = w-(s-1, …」
- p.90, 下から6行目:「∫」→周回積分記号
- p.91 6,7,8行目の式の分子:「[λ1]+[λ2]」→
「[λ1-1]+[λ2-1]」
- p.91, 7行目〜8行目:
「= w(s, t + [λ1] + [λ2], λ1) …
- w(s, t + [λ1] + [λ2], λ2) …」
→「= - w(s, t + [λ1-1] + [λ2-1], t-, λ1) …
+ w(s, t + [λ1-1] + [λ2-1], t-, λ2) …」
- p.96, 最後の行:右側の式の右辺の a に上線をつける
「a1, a2, …」
→「a-1, a-2, …」
- p.102 15行目:「次の互いに同値を…」→「次の互いに同値な条件を…」
- p.103 20行目 (7.6)の下:
「左辺は(-∞,1]型で主係数は1, 右辺は[1,∞)型」→
「左辺は(-∞,N+1]型で主係数は1, 右辺は[N+1,∞)型」
- p.104, 下から 6〜4行目:この部分の主張は不正確である.正確に言えば,
s に依存する因子をτ~(s)に乗じて適当に修正することによって(7.9)が成立する.
- p.108, (7.24):
「t1, …, tnの線形結合」
→「tn+1, tn+2, … の線形結合」,
「t-1, …, t-nの線形結合」
→「t-n+1, t-n+2, … の線形結合」
- p.111, 式:(7.36):Ejkが抜けている.
「…δj+k,0」→「…δj+k,0Ejk」
- p.117, (1.12):第3式と第4式の右辺の W に上線をつける.
「… W」→「… W-」
- p.119, 下から8行目:「(1.11)の右辺を…」→「(1.13)の右辺を…」
- p.120, 5行目:t-nにプライム「'」をつける.
「t-n」→「t-n'」
- p.123, (2.4):「ξ(t,t-)」→「ξ(t,Λ)」
- p.123, (2.7):「aj,s+k(s,t,t-)」
→「aj,s+k(t,t-)」
- p.126, 下から5行目:式の右辺「-λ- 1」→「-λ-1」
- p.127, 下から7行目:式の右辺「λs-k」→「λk-s」
- p.131, 3行目:「下三角・上三角行列」→「上三角・下三角行列」
- p.142, (4.18)の次の式:右辺の「δj,kα」の後のコンマは不要.
- p.142, (4.19):
「… = < J | (O|J >) = (< I | O) | J >」
→「… = < J | (O|K >) = (< J | O) | K >」
- p.146, 1行目:「Xおよびその反傾行列の逆行列」→「Xの指数行列とその逆行列」
- p.146, (4.28):第2式の右辺「… exp(- tX)」→「… exp(- X)」
- p.147, 下から7行目:「×< exp …」→「× < K | exp …」
- p.150, (5.5):第2式の右辺「…∧ejs-1」
→「…∧e*js-1」
- p.155, 下から2行目:「Xとその反傾行列の指数行列」→「Xの指数行列とその逆行列」
- p.156, (5.21):第2式の右辺「… exp(- tX)」→「… exp(- X)」
- p.156, (5.24), (5.25):「xjk」→「x±jk」
- p.156 (5.24-25):Xの式の右辺の総和記号の下「j,k」→「±(k-j)> 0」
- p.160, (5.31):右辺「… | J >」→「… | K >」
- p.164, (5.46):第1式と第2式の右辺「δmn→「δm+n,0」
- p.165, (5.49):左辺の「dλ」を左辺の末尾に移動する.
- p.172, 2番目の式と4番目の式:右辺1行目分母
「1 + e-(j-k)Δ」→「1 + O(e-(j-k)Δ)」,
「1 + e-(k-j)Δ」→「1 + O(e-(k-j)Δ)」
- p.172, 2番目の式と4番目の式:右辺2行目
「= eQk-Qj …」
→「= G2eQk-Qj …」,
「= eQj-Qk …」
→「= G2eQj-Qk …」,
- p.173, (1.19):「… - jδiτ, …」→「… - 2jδiτ, …」
- p.173, 下から2番目の式:右辺分母
「4sinh2((u - nπiτ)/2)」→「4sinh2((u - 2nπiτ)/2)」,
「4sinh2((nπiτ)/2)」→「4sinh2(nπiτ)」
- p.173, 下から1番目の式:右辺分母
「4sinh2((qj - qk - nπiτ)/2)」→
「4sinh2((qj - qk - 2nπiτ)/2)」
- p.174, (1.22)の次の式「j - k = ±(N - 1)」の右辺の符号±を上下逆にする.
- p.173, (1.20):「… iΔ, …」→「… iΔ/2, …」
- p.179, 15行目:「楕円型,双曲型,楕円型」→「楕円型,双曲型,有理型」
- p.182, (2.21)式:「σ(u,z)」→「σ(u+z)」
- p.201, (3.50):「… = XYX, … = - YXY」→「… = 2XYX, … = - 2YXY」
- p.207, (4.16):「(iDt + …」→「(-iDt + …」
- p.208, (4.19) ならびに p.210 の最後の3つの式:左辺括弧内の第1項分母
「λj」→「λ-λj」
- p.211, (4.30)の次の式:
「det(I + FG) = det(I + GF)」→「det(I - FG) = det(I - GF)」
- p.220, (1.5):右辺「… am(k)bn …」
→「… ambn(k) …」
- p.226, (1.37)と(1.38):右辺「ξ(λ)」→「ξ(t,λ)」
- p.227, 16行目:「KP階層との直接関係」→「KP階層と直接の関係」
- p.231, 13行目:「Schottkey」→「Schottky」
- p.235, 下から11行目:「… rz …」→「… sz …」
- p.236q, 5行〜6行の式:「ψs」→「φs」
- p.238, (2.30):L と p を逆にする.
- p.238, (2.34)の次の式:右辺「Bnc」
→「B2n+1c」
- p.243, (2.50):「… {p,x} = p」→「… {p,s} = p」
- p.245, (2.57):第1式右辺括弧内
「… Ln) …」
→「… en∂s) …」,
第2式も同様に
→「… e- n∂s) …」
- p.249, 最後の式:最右辺分子「2γ」→「- 2γ」
- p.254, (3.33):右辺第2の総和の項の分子にγを掛ける.
「√hjhk」→「γ√hjhk」
- p.256, 6行目の式:第2式の右辺の総和の項
「γhj」→「- γhj」,
「Ejj」→「Ejk」
- p.257, 9行目の式:「… = h・j = …」
→「… = β-1 h・j = …」
- p.275, (3.7):「… - [Aj(x), …」
→「… + [Aj(x), …」
- p.276, (3.11):「ωj」→「ωα」
- p.287, 参考書 [2]および p. 288, 参考書 [9]:「悦郎」→「悦朗」
- p.298, 付録 [1]:「対照群」→「対称群」
- 第6章の参考文献:次の文献を追加すべきだった.
J. Avan and M. Talon, Classical R-matrix structure for
the Calogero model, Phys. Lett. B303 (1993), 33-37.
(Calogero系のR-行列)
O. Ragnisco and M. Bruschi, The periodic relativistic
Toda lattice: direct and inverse problem,
Inverse Problem 5 (1989), 389-405.
(周期的RT系の代数幾何学的解法)