理工系 線形代数入門

高崎金久著,培風館 2006年3月刊.A5版,216頁,1900円+税,ISBN4-563-00359-X. [概要, 目次, 訂正]

概要

「まえがき」より:

本書はこれから線形代数を学ぶ人のための入門書である. 線形代数は微積分とともに理工系の数学の基礎科目 として最初に学ぶべきものとされている.近年, 計算機技術や情報科学の進歩に伴って新しいタイプの 数学の素養を求める声も高いが,そのような数学は 線形代数を基盤とするものが多い.その意味で 線形代数を学ぶ必要性はこれまで以上に高まっている と言えるだろう.

本書では予備知識として高校程度の数学を前提とする. 特に,平面・立体幾何学におけるベクトルの使い方と 2〜3個の未知数をもつ連立1次方程式の解法を 理解していることが望ましい.1章と2章ではこれらを 復習するが,これらはそれぞれが線形代数の「幾何学」 と「代数学」の側面を象徴する題材でもあるので, その後の章の内容を一部先取りして盛り込み, 独立した解説としても読めるようにした.

本書は1年間の講義の教科書として用いられることを 想定しているが,題材は1年間で扱える分量よりも 多めに用意して,講師や読者に取捨選択の余地を 残すことにした.たとえば基礎の部分を重点的に扱う 講義であれば,1章〜4章を前期に,5章以降を後期に配分し, 5章以降の内容を適宜省略すればよい.基礎の部分の理解が すでに十分であれば,1章・2章を手早く済ませて 前期のうちに5章まで進み,後期で6章以降を扱う, という講義計画も可能であろう.本書の1章〜7章では 扱う対象をもっぱら実数の範囲に限定し,複素数の ベクトルや行列の取扱いは8章にまとめている. したがって実数の範囲で線形代数を一通り学ぶことを 目標とする場合には8章を省略することもできる. また,表題に* 印を付した節や項目は「初級」の 範囲を超えると思われる内容を補足するもので, 実際の講義では省略して先へ進むことができる.

線形代数の世界は奥が深い.本書で紹介するのは その入り口に過ぎない.本書の内容を習得した後は さらに「中級」・「上級」の線形代数へと進むことを お奨めする.


目次

1.平面と空間の幾何学
1.1 矢線ベクトルと数ベクトル
1.2 ベクトルの内積
1.3 直線・平面の方程式
1.4 面積と行列式
1.5 体積と行列式
1.6 線形写像
章末問題1
2.連立1次方程式
2.1 2元2連立1次方程式
2.2 掃き出し法
2.3 行列の基本変形
2.4 クラメルの公式
章末問題2
3.数ベクトルと行列
3.1 数ベクトル・行列の算法
3.2 行列の基本変形
3.3 逆行列
3.4 連立1次方程式
章末問題3
4.行列式
4.1 順列の符号
4.2 行列式の定義と基本的な性質
4.3 行列の積・ブロック分けとの関係
4.4 基本変形
4.5 余因子展開
4.6 行列式の応用
4.7 置換
章末問題4
5.ベクトル空間と線形写像
5.1 ベクトル空間・部分空間
5.2 線形独立性・線形従属性
5.3 部分空間の基底・次元
5.4 線形写像
5.5 核・像の基底と次元定理
章末問題5
6.固有値問題
6.1 固有値・固有ベクトル
6.2 対角化
6.3 対角化可能性の条件
6.4 三角化
章末問題6
7.内積をもつベクトル空間
7.1 内積の性質
7.2 正規直交系
7.3 直交行列・直交変換
7.4 対称行列の対角化
7.5 2次形式とその標準形
章末問題7
8.複素ベクトル空間
8.1 複素数のベクトル・行列・行列式
8.2 部分空間・基底・次元
8.3 線形写像
8.4 内積をもつ複素ベクトル空間
8.5 正規直交系・ユニタリ行列・ユニタリ変換
8.6 エルミート行列の対角化
章末問題8
問題解答・ヒント
索引

訂正

注意:以下ではHTMLで書くのが難しい表現を代替表示しています. (例)a に上線をつけたものは a-, 波線をつけたものは a~ で代用しています. また,a の平方根は √a と表わしています.

  1. p.2, ↑1行:「c倍」→「t倍」
  2. p.4, 5行:「a2 + a2」 →「a2 + b2
  3. p.6, 9行: (a1 - b1)2 + (a2 - b2)2 - a12 - a22 - b12 - b22 → - (a1 - b1)2 - (a2 - b2)2 + a12 + a22 + b12 + b22
  4. p.32, 問題2.3: (c), (d) の 最初の方程式 「x1 + x2 + x3 = …」→ 「x1 + x2 + 3x3 = …」
  5. p.41, 9行: 「= ai1b1j + … + ainbnj」→ 「= ai1b1k + … + ainbnk
  6. p.64, 8行: 「….ai1iai22…」→ 「….ai11ai22…」
  7. 4.3.2節,定理4.7 (2) の等式の右辺: A21 → A11, A22 → A12, A11 → A21, A12 → A22
  8. 4.3.2節:定理4.7と定理4.8の順番を逆にすべきだった (定理4.7の証明の中で定理4.8を使っている).
  9. p.86, ↑3行: 「(q2-p2)x1 + (q1-p1)x + …」 → 「(p2-q2)x1 + (p1-q1)x + …」
  10. p.107, 「5.3.2 基底の存在」:この節の内容は基本的ではあるが, 抽象的で初学者には理解が難しい部分もあるので,表題に星印を付して 「5.3.2 基底の存在* 」とする方が適切なようである.
  11. p.188, 3〜4行:「…求める面積は |… | = 8 である」→ 「…求める面積は (1/2)×|… | = 4 である」
  12. p.196,↑6行:「t(1 -1)」→「t(2 -1)」
  13. p.196,↑2行:「-3,0,3 … t(0 1 -1) … W0」→ 「-3,2,3 … t(0 2 -1) … W2
  14. p.197,7行:U の (1,1) 成分「1」→「2」