ツイスターの世界−時空・ツイスター空間・可積分系−

高崎金久著,共立出版 2005年5月刊.A5,280頁,4300円+税,ISBN4-320-01784-6. [概要, 目次, 訂正]

概要

ツイスター理論は数理物理学の奇才ロジャー・ペンローズによって 相対論的時空と場の新しい記述方法として1960年代後半に創始され, 今日までに数学と物理学の両面でさまざまな成果を生み出している. その研究の前線は可積分系や超弦理論などの先端的な分野とも 影響を及ぼし合いながら,現在も着実に発展しつつある.他方, その基礎の部分は数学的内容と物理的内容がほどよく混合した 優れた総合的教材と見ることができる.

ツイスター理論はこのように興味深い題材であり, 英語ではすでにいくつかの解説書が出版されているが, 日本語で書かれた本格的な解説書はこれまで皆無だった. 本書は日本語による初の本格的な解説書として, ツイスター理論の本来の姿(ツイスター空間と時空の 対応関係,無質量自由場の積分表示)からその後の さまざまな方向への発展(コホモロジー的定式化, ゲージ場の取り扱い,重力場の取り扱いなど)までを 紹介している.

本書ではいわば講義ノートのスタイルを想定し, 厳密性を追求するよりも鍵となるアイディアを伝えることに, また一般性を追求するよりも典型的な場合に焦点を絞ることに努めている. 本文中で取り上げられなかった話題に関しても参考文献を豊富に紹介して 読者の便宜を図っている.


目次

第1章 ミンコフスキー時空と自由場の方程式
1 ミンコフスキー時空
2 スピナー算法
3 スピナー形式の自由場の方程式
第2章 ツイスター誕生
1 ツイスター誕生の背景
2 ナル直線とナルツイスター
3 ツイスター空間
4 時空の再解釈
5 時空とツイスター空間の幾何学的対応
6 無質量自由場の積分表示
第3章 層と複素多様体
1 集合の層
2 代数構造をもつ層
3 複素多様体上の函数・微分形式の層
4 局所自由層と正則線形束
5 射影空間とグラスマン多様体
第4章 層係数コホモロジーとペンローズ変換
1 チェックコホモロジー
2 連結写像と長完全系列
3 その他の一般的性質
4 斉次正則函数の層のコホモロジー
5 ペンローズ変換のコホモロジー的定式化
第5章 ゲージ場のツイスター理論
1 ユークリッド時空上のヤン-ミルズ方程式
2 反自己双対方程式と複素構造
3 インスタントン解のADHM構成法
4 複素時空上の反自己双対方程式
5 ウォード変換
第6章 重力場のツイスター理論
1 曲がった時空を記述する枠組み
2 スピナー接続と反自己双対方程式
3 共形的反自己双対時空のツイスター的記述
4 右平坦時空のツイスター的記述
5 リーマン-ヒルベルト問題としての定式化
参考文献

訂正

注意:以下ではHTMLで書くのが難しい表現を代替表示しています. (例)a に上線をつけたものは a-, 波線をつけたものは a~ で代用しています. また,a の平方根は √a と表わしています.
  1. p.36, 最後から2つ目の式: 中辺の行列の 左上の成分を x0 + x3 に, 右下の成分を x0 - x3 に変える.
  2. p.36, 最後の式: 中辺の行列の 左上の成分を x3 + ix4 に, 右下の成分を x3 - ix4 に変える.
  3. p.42, (2.7)の左辺の添字:「a」 → 「ドット付きのa」
  4. p.54, (2.27): 「g∈GL(4,C)」→「g∈SL(4,C)」. ちなみにもとの「g∈GL(4,C)」に戻せば U(2,2) の定義になる. 実際には U(2,2) でも以後の話はほとんど変わらない. GL(4,C) の部分群としてはむしろ U(2,2) の方が自然である. しかし U(2,2)には T の要素をまったく動かさない要素 (単位行列に絶対値が 1 の複素数を乗じたもの) が含まれているので, 表現論的には無駄がある.そのような無駄を省くため SU(2,2) を用いるのである.
  5. p.55, (2.31) と (2.32) の間の式:右辺の行列の右下の成分「c」→「d」
  6. p.56, (2.35) の前の行:「h∈GL(2,C)」→「h∈SL(2,C)」. h∈GL(2,C) の場合には (2.35) の g は U(2,2) に属する.
  7. p.64, (2.59): 「H2」→「H2 - {0}」(2箇所)
  8. p.71, 6行:「前方・後方管状領域 (future/past tube)」を 「後方・前方管状領域 (past/future tube)」に変える.要するに, CM+ が「後方」管状領域,CM- が 「前方」管状領域に対応する.これは大変紛らわしいことであるが, Huggett & Todd の教科書 (文献42) でもこのような符号のねじれが見られる (同書7章練習問題7).
  9. p.77, 8行目:「令室」 → 「無質」
  10. p.112, 3行目:左辺 「ξj」→「ξj
  11. p.161, 下から2行目:「断面の層の層」→「断面の層」
  12. p.176, 17行目:「第1ポントリャーギン数」と書いたが, これは G = SO(N) の場合である.インスタントンを考える通常の設定 である G = SU(N) の場合には,これはむしろ第2チャーン類 (second Chern class)と呼ばれるもの(の積分) であり, 記号も p1 ではなくて c2 とすべきである.
  13. p.199, 5行目:「ラックス」→「ラックス表示」
  14. p.215, 最後の行:「非線型」→「非線形」
  15. p.221, 本文最後の行:「cosmologigal」→「cosmological」
  16. p.235, 5行目:「満たされれる」 → 「満たされる」
  17. p.248, 19行目:「呼ぶべもの」 →「呼ぶべきもの」
  18. p.251, 6行目:「ζn」→「ζn-1
  19. p.251, 8行目:「ζ-2」→「ζ-3
  20. p.252, 16行目:「ζ-3」→「ζ-4
  21. p.257, 参考文献41:「univers」 → 「universe」
  22. p.261, 参考文献93:「Y. and Nakamura」 → 「Y. Nakamura」
  23. p.262, 参考文献115:「複素解析」→「複素幾何」