【日時】 | 2010年8月18日(水)〜 2010年8月20日(金) |
【場所】 | 京都大学数理解析研究所420号室 |
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町 |
[第1キーワード] 古典可積分系,量子可積分系,微(差)分代数,超幾何関数,完全WKB解析,非平衡系,確率過程,流体力学極限 |
[第2キーワード] (離散)パンルヴェ方程式,可解格子模型,アフィン・ヘッケ環,非対称単純排他過程(ASEP),Zero-Range Process |
8月18日(水) | |
11:00--11:50 | 前座:金井 政宏 『RIMS2010可積分系数理の多様性について』 |
(昼食) | |
13:00--13:50 | 鈴木 淳史 『ODE/IM 対応』 |
14:00--14:50 | 白石 潤一 TBA |
(30分休憩) | |
15:20--16:10 | 今村 卓史 『KPZ, δ-Bose gas, and random matrices』 |
16:20--17:10 | 佐々田 槙子 『ランダムな方向反転を伴う単純排他過程の流体力学極限』 |
8月19日(木) | |
10:00--10:50 | 西岡 啓二 『微分体入門―付値理論による線形常微分方程式の研究』 |
11:00--11:50 | 西岡 斉治 『差分Riccati方程式の可解性』 |
(昼食) | |
13:00--13:50 | 木村 弘信 『Grassmann多様体上の超幾何関数,一般化Yang-Mills方程式とmonodromy保存変形』 |
14:00--14:50 | 竹井 義次 『1次元 Schrodinger 方程式の完全 WKB 解析 --- WKB 解の Borel 変換の特異点について ---』 |
(30分休憩) | |
15:20--16:10 | 川上拓志,中村あかね,○坂井秀隆 (○は登壇者.) 『4次元パンルヴェ型方程式の退化図式』 |
16:20--17:10 | 笠谷 昌弘 『境界付きqKZ方程式と非対称Koornwinder多項式について』 |
18:30-- | *懇親会を予定しています. |
8月20日(金) | |
10:00--10:50 | 上原 崇人 『Rational surface automorphisms with positive entropy』 |
11:00--11:50 | 津田 照久 『UC階層とモノドロミー保存変形,超幾何函数』 |
(昼食) | |
13:00--13:50 | 広田 良吾 『Ultradiscretization of a coupled MKdV equation』 |
14:00--14:50 | 野邊 厚 『トロピカルHesse曲線の加法公式について』 |
【題目】 ODE/IM 対応
【概要】 あるクラス微分方程式(ODE)系に対するquantum Wronskian,
Baxter のQ作用素、TBAやNLIEといった可積分系(IM)の手法の適用に関して
議論をおこなう。
【題目】
【概要】
【題目】 KPZ, δ-Bose gas, and random matrices
【概要】
【題目】 ランダムな方向反転を伴う単純排他過程の流体力学極限
【概要】
気体や流体等の非常に自由度の高い系のマクロなふるまいを,ミクロな系の相互作用から説明することが,統計力学のテーマである.統計力学に数学的に厳密な
基礎づけを与えるため,確率解析を用いた多くの研究が行われ,様々な手法が確立されてきた.特に,系を特徴づけるマクロなパラメータの時間発展方程式を,
ミクロな系の時空間変数に対する極限操作により導出する手法は,流体力学極限と呼ばれる.
本講演では,格子気体モデルと呼ばれる,格子空間上を相互作用しながらランダムウォークする粒子系をミクロな系として考え,その流体力学極限について論
じる.格子気体モデルの時間発展は各粒子のランダムウォークの発展規則と,粒子間の相互作用により定められる.この発展規則および相互作用によって,マク
ロな系のふるまいがどのように変わるのかを明らかにすることが,格子気体モデルの研究の主要な目的の一つである.対称単純排他過程 (Symmetric
simple exclusion process),および非対称単純排他過程(Asymmetric simple exclusion
process)は,格子気体モデルの非常にシンプルかつ興味深い例であり,確率解析と可積分系の双方の立場から多くの研究がなされている.今回は,これ
ら二つの過程の中間に位置づけられる,ランダムな方向反転を伴う単純排他過程についての結果を紹介する.この過程は,方向反転の起こりやすさを表す正値の
パラメータγにより特徴づけられる.形式的には,γ→∞の極限としてSSEPが,γ→0の極限としてASEPが得られ、実際に極限方程式の拡散係数につい
てはその収束が示される.
【題目】 微分体入門―付値理論による線形常微分方程式の研究
【概要】
微分体,微分拡大,微分多項式などを説明した後,代数的微分方程式の一般解を微分体のことばを用いて定義する.微分拡大が任意定数に関して有理的に依存す
る(定有)とは,ある係数拡大との合成体が定数によって生成されるときにいうが,定有拡大には微分に関して閉じた十分多くの付値が存在する.逆に一階代数
的微分方程式の一般解が生成する微分拡大が,微分に関して閉じた十分多くの付値をもつならば,それは定有である.これはFuchs
の定理やPoincare の定理としてよく知られている.線形常微分方程式の解にこの概念を適用すれば,Harris-Sibuya
の定理や,その一般化であるSperber の定理が簡単に証明される.既約な線形常微分作用素の存在に関するFloquet
の定理(Eisenstein
の定理の微分版)も付値環を用いることによって明快に得ることが出来る.講演ではこれらをどのように表現するのかを説明する.
【題目】 差分Riccati方程式の可解性
【概要】
微分方程式の可解性の問題は,Liouvilleにより定式化されたもので,解が次の操作を有限回行うことで得られるか,という問題である.操作は,四則
演算と,巾根や微分,積分,積分の指数関数をとる操作である.一方,差分方程式の可解性の問題はFrankeにより定式化された.操作は,四則演算と,巾
根や変換,逆変換,移項和,移項積をとる操作である.
私はFrankeの可解性の理論を付値環により捉え,差分Riccati方程式の可解性に関する一般的な定理を得た.本講演ではその定理の紹介を中心に差分代数の解説を行う.
【題目】 Grassmann多様体上の超幾何関数,一般化Yang-Mills方程式とmonodromy保存変形
【概要】
青本によって研究された超幾何関数の拡張は,1986年にI.M.GelfandによってRadon変換の立場から見直され,Grassmann多様体上
の超幾何関数として理解された.このときRadon変換を受ける関数は$GL_N(C)$のCartan部分群の指標である.このCartan部分群を別
の極大可換部分群に置き換えることによって,ベッセル関数やAiry関数などのGrassmann多様体上の関数への拡張が得られる.このような一般化さ
れた超幾何関数は,その後,Radon変換の視点からの一般化やトーリック多様体上の超幾何関数の理論へと発展した.一方,Painleve方程式や
monodromy保存変形を記述する非線形微分方程式をGrassmann多様体$G_{2,N} $
で定義されたYang-Mills方程式の変数分離により理解しようとする研究がMasonとWoodhouseによって始められた.変数分離とは
Grassmann多様体に作用する群によって不変なYang-Mills方程式を求めることであり,そのときに使われた群が上記に述べた極大可換部分群
である.この講演では,このような群論的な視点からの超幾何関数とPainleve方程式などの非線形方程式の関わりを話題にする.
【題目】 1次元 Schrödinger 方程式の完全 WKB 解析
--- WKB 解の Borel 変換の特異点について ---
【概要】 1次元 Schrödinger 方程式の WKB 解とは Planck 定数を微小パラメータと
考えて得られる形式解であり、この WKB 解に Borel-Laplace の方法を用いて
解析的な意味付けを与えるのが完全 WKB 解析である。河合隆裕氏との共著
「特異摂動の代数解析学」(岩波書店、2008)で論じたように、完全 WKB 解析
は複素領域における解の大域的な挙動(例えばモノドロミー群)の解析に威力を
発揮する。そこで最も重要な役割を果たすのは、WKB 解の Borel 変換の特異点
である。この講演では、1次元 Schrödinger 方程式の完全 WKB 解析の入門的
な部分から始めて、その中心的な問題である WKB 解の Borel 変換の特異点の
構造について、最近の成果も交えながら解説する。
【題目】 4次元パンルヴェ型方程式の退化図式
【概要】
【題目】 境界付きqKZ方程式と非対称Koornwinder多項式について
【概要】
qKZ方程式とは,Yang-Baxter方程式を満たす行列の積を用いて定式化される$q$-差分方程式系である.(ダブル)アフィンヘッケ代数の多変
数多項式環上の表現を用いることで,qKZ方程式は,代数の生成元の作用に関して関数の族が満たすべきいくつかの条件として書き下される.さらにその条件
は, $q$-Dunkl作用素などについての固有値問題に帰着される.
このような手続きを経て,Frenkel-Reshetikhinにより導入された($A$型の)qKZ方程式の多項式解を($A$型の)非対称
Macdonald多項式から構成することができる.これを一般化して,$C^\vee
C$型のダブルアフィンヘッケ代数の多項式表現を用いることで,非対称Koornwinder多項式から境界条件付きqKZ方程式の多項式解が構成され
る.さらには,
より一般的な境界条件として方程式に「部分的な折り返し」を導入することもできるが,この代償として固有値問題は複雑化したものを考える必要が出てくる.
本講演ではまず$A$型や$C^\vee C$型の構成法に触れ,時間が許せばその「部分的な折り返し」にまで踏み込んで解説したい.
【題目】 Rational surface automorphisms with positive entropy
【概要】 複素曲面上の自己同型写像による力学系については,
特にエントロピーとの関係において近年多くの研究がなされている.
しかし, エントロピーが正になるような有理曲面上の自己同型写像に
ついては、存在自体あまり知られていない状況である.
そこで本講演を通じて,自己同型写像が多く存在することを示していきたい.
【題目】 UC階層とモノドロミー保存変形,超幾何函数
【概要】 シュレジンジャー系とは,リーマン球面上に N+3 個の確定特異点を持つ L
連立1階線形常微分方程式の等モノドロミー族を記述する非線形方程式系です.ここでは,線形方程式が『N+3 個の特異点のうち N+1 点の近傍で
L-1
次元の正則解を持つ』ような状況を考えます.各特異点での留数行列の固有値の縮退の様子をヤング図形の組で表したものをスペクトル型と呼びますが,上の条
件はスペクトル型を
と選ぶことに同等です.対応するシュレジンジャー系は,実はUC階層(=KP階層の拡張)という無限可積分系の相似簡約として自然に現れるものであり,例
えば(L,N)=(2,1)の場合としてパンルヴェ第6方程式,L=2,N:一般の場合にガルニエ系を含むような興味深いクラスを与えます.
講演では,UC階層についての簡単な復習から始めて,モノドロミー保存変形方程式の導出とその多項式ハミルトン系としての表示(註1),超幾何函数(註2)との関係などを紹介する予定です.
(註1)多時間ハミルトン系表示
但し,ハミルトン函数は次のように正準変数の多項式で与えられます.
(註2)多変数超幾何級数
【題目】 Ultradiscretization of a coupled MKdV equation
【概要】 We consider a coupled modified KdV equation of the following form [1],
which is transformed into the bilinear form,
A discrete coupled MKdV equation is obtained discretizing the bilinear form.
However a ultradiscrete form of the discrete equation is very difficult to obtain in its present form because of negative terms.
We have succeeded in ultradiscretizing the discrete coupled MKdV equation with the help of the Miura transformation.
[1] The coupled MKdV equation was introduced in a lecture note, 広田良吾『行列式とパフィアン(4)』応用数理14, (2004) 381-389, in order to prove the Cusick theorem, "A product of Hankel determinants is expressed by a pfaffian".
【題目】 トロピカルHesse曲線の加法公式について
【概要】 トロピカルHesse曲線とは,楕円曲線の標準形のひとつであるHesseの3次曲線をトロピカル化したものである.論文[Kajiwara,
Kaneko, Nobe, Tsuda, KJM 63
(2009)]において,Hesseの3次曲線をパラメトライズするレベル3テータ関数の倍角公式とトロピカルHesse曲線の倍角写像との関係を明らか
にし,それらの定める可解カオス写像について議論した.本講演では,レベル3テータ関数の加法公式とトロピカルHesse曲線の加法との関係について議論
する.
本研究集会は,可積分系の数理に関する最新の成果を発表する場として,あるいは可積分系理論が応用されている諸分野間の情報交換の場として,毎年夏に開催されています. 2010年度は,今後可積分系との関係が深まっていくと予感される数学および数理物理の分野から講演者を招聘し,各分野における基本的な結果から最新の話題まで紹介して頂く予定です. これによって,本研究会が分野間相互の交流と発展のきっかけになることを期待しています.