在外研究日記



2/21 (Tue)

オックスフォードでセミナーをしてきた。 cosmic stringの基本的な所から話をしてほしいと再度頼まれてはいたけれど、 あんなにRossやLucasにたくさんたくさん質問を受けると思っていなかったので、 結局タキオンのところは話さず仕舞い。でも、やっていることや問題意識は 伝わったと思うので、たくさん質問が出て逆に良かったと思う。 はま中君と河本君にとても世話になった。オックスフォードの駅まで迎えに きてもらったことから始まって(やっぱり汽車が遅れて迷惑かけました)、 夜はトールキンゆかりのパブにつれていってもらったり。 二人のおかげで、オックスフォードの物理と数学がどんな所かもよくわかって、 しかもひさしぶりに色々と楽しく話が出来て、とても楽しかった。 オックスフォードのセミナーのorganizerのSchvellingerさんには色々と親切に してもらった。MITにいたことがあって、知っている日本人の方の名前が出てきて びっくり。同部屋のTasinatoさんとは色々と議論した。僕が昔Kutasovと議論した ことと同じようなことを考えていたということが判明して、いろいろ お互いに知っていることを教えあえて、来た甲斐があったと思った。

帰りに少しオックスフォード大学の自然史博物館に寄る。なんと、そこはまさに 時計の博物館だった!素晴らしいコレクションである。思い余って、 博物館の研究員の方に、日時計・宇宙時計の歴史やしくみを詳しく教えてもらった。 sundialを一つ買って帰る。何よりもびっくりしたのは、 そこにアインシュタインの講義した黒板が彼のチョークの字そのままに そこに保存してあったことだった。しばしそれを眺めて悦に入った。

オックスフォード訪問がたまたまケンブリッジでの赤間さんのセミナーに重なって しまって、大変残念だったが(そういえばはま中君のも入れ違いだったっけ)、 土曜日は赤間さんとケンブリッジを観光して楽しむ。赤間さんのpregiometryという 言葉の歴史を始めて学んだ。pregiometrical SFTからしか知らなかった 僕は若干マニアックな経路でpregiometryという言葉の本当の意味にたどり着いた ようだ。

月曜は赤間さんと食事したり、Allenとしこたま議論したり。 やっと本来の研究モードに戻ってきた。 今日はDavidと色々議論する。彼と話すのはいつもいつも楽しいが、 僕がいろいろあってかなり忙しかったのと、彼もセミナーにたくさん 呼ばれてとても忙しいので、なかなか会えなかったのが残念きわまりない。 また、すぐ会えるだろうけど、でもやっぱりそばにいて議論するのと メールで議論するのは大違いだ。

今日は5時から、一年ぶりに日本語でセミナーすることになっている。 何を話すかというと、弦理論とは何かという入門を文系理系の人に話す という大それた日本語セミナーだ。ケンブリッジの日本人コミュニティーには 十色会というセミナー形式のものがあって、その関係でこのような集まりを 開いてくださった。さて、弦理論の面白さを伝えられるかどうか。

帰国準備はちゃくちゃくと進行している。住む所も決まったし、 帰ってから本当にばたばたするだろうけど、なんとかなるかな。 駒場に早く帰りたい。 帰国に際しては色々思うことがあってここに書ける量じゃないけど、 外国に出て、この一年また、本当にたくさんのことを学んだ。 駒場に戻るのがとても楽しみだ。 毎日駒場の人達と会って議論できるのが本当に楽しみ。 しかも、4月からは菊川さんがいらっしゃるし、 3月末にWatiが駒場に来るので、またもりだくさんの楽しみがある。

あと10日。Garyと議論しよう。


2/13 (Mon)

このところずっと大変で、日記を書く暇もなかった。 えらく忙しかった。これは、研究で忙しかったわけでは無くて、 あるprojectをずっとやっていたからだ。 それが何なのかはここに書いて良いものかよくわからないので まだ書かないことにするけど、寺嶋さんとの論文が出て以来、 本当にこれにかかりっ切りだった。朝から晩まで二ヶ月もの間 ずっとこればっかりやっていたことになる。 少しばかりかかなり研究がおろそかになってしまったけど、 得るものも非常に多かったので、それで良しとするしかない。 研究を長いこと休んだので、元に戻るのが大変だ。 頭がまず元に戻っていない。それと、hep-thを時々しか 読んでいなかったので、その知識も取り戻すのも大変だ。 しかし、徐々にやっていかなくてはならない。

そうこうしているうちに、日本に帰る日が近付いてきた。 あと二週間あまりである。今週はOxfordでセミナーをさせてもらう予定で、 とても楽しみにしているけれど、それが終わったら実質ケンブリッジ にいるのは10日ほどしかない。 一大projectのおかげで、何ともケンブリッジの人達との交流が 減ってしまったことは確かだけれど、けどこれから少しの間又 色々交流したいと思っている。あ、でも、冬休みは実際研究室に人が いなかったから、まあそんなに損していないかも。 それに、こういう風に外に出してもらっているときぐらいにしか、 こういう(僕にとっての)一大projectは完成できなかったと思う。

先週は平野さんに来ていただいて、セミナーしてもらった。 tachyon bounceの記述がこんなに正確にできているとは、知らなかった。 そのほかにも色々と議論してもらう。たまたま興味が近いことを 考えていて前からぼつぼつと議論していたのだけれど、 こうやって会って議論すると色々と話せてよかった。 平野さんお疲れさまでした。

日本に帰る用意がちゃくちゃくと進んでいる。 用意に圧倒されないようにしたい。(笑)


1/29 (Sun)

昨日ケンブリッジに戻ってきた。Pisaでの滞在は楽しいものだった。 それも、全部全部横井君と奥さまのおかげである。もちろん、呼んでくださった とても気さくな小西さんにも感謝。楽しい楽しい滞在だった。 しかも、なんと西島先生にお会いして、一緒に食事などをさせていただいた。 光栄である。

火曜日にセミナーをさせていただいたのだが、木曜・金曜の研究会などで 忙しいあたりにもかかわらず、小西さんを初めたくさんの方が集まって くださった。はからずもPorattiさんまでいらっしゃって、 色々質問をくださる。初めてAspenへ行ったときに、参加者のほとんどが スポーツっぽい服を着ていたのに一人だけ青いスーツに赤いネクタイ を身に纏った人がいて、 それがPorattiさんだということをその時に人づてで聞いて知った。 アメリカのリゾート地で、自分のスタイルをくずさずにさっそうと歩いている 研究者がいるということを知って、当時は大いに驚いたものだった。 そして、5年後の今、 ここでこうしてお会いして、そしてセミナーの後に握手をしに来てくださった。 自己紹介したが、なんだか不思議な感じがした。

火曜日は、ウォルター君という人の発表を聞く。 Davidとの論文を詳しく紹介してくれて、少しはずかしかったが、 周囲の論文や細かい問題点まで議論・レビューしてくれて、 こちらが感謝したい所である。 研究会ではやはりVenezianoの話がrelevantで面白かった。 そんな論文書いてらっしゃったのですね。 読んでみよう。

って、時間が無いな・・・ このところ、ちょっと大変。 しかも、あと一ヶ月で帰国だ!!


1/16 (Mon)

日記の更新が滞ってしまった。むぅ。

先週はAmsterdamでセミナーをしてきた。 まあまあうまくいったのではと思う。 お昼前に研究室に着くと、招待してくれたNickが笑顔で出迎えてくれた。 僕がCambridgeにいるというのはDavidから聞いたという。 そういうことだったのね。 研究所の建物は美しく、セキュリティーがかなり高いハイテクビルだった。 ファンデルワールスの名を関した研究所と同じビルである。 廊下にtopological stringの手書きポスターがはってあるところを見て、 おそらく院生が作ったのだろう、ああここはDijkgraafさんのいるところだなぁ と思う。 そのDijkgraafさんと、昼食でたまたま向かいになり、 色々と話す。日本の職事情も厳しいという話にたまたまなって、 国立大学の独法化などの説明をする。それで大学教育の話になった。 ここでは当り前のように、大学院では英語で講義をするらしい。 日本はそんな時代がいつか来るのだろうか。 しかし、ここのポスドクはほとんど全員アメリカの大学院から来ているので、 会話について行きやすくて助かった。 アメリカ英語ということもあるし、 会話の内容や文化的背景も親しみが湧く。

セミナーは、Jan deBoerがよく質問してくれたりと、 なかなかスムーズに終わったと思う。 Dijkgraafさんもうんうんとうなづいていらっしゃったし。 セミナーの後も、Leiden大学からわざわざ来てくださった方など たくさん質問を受けた。セミナー後は、ひとしきり Nickと議論する。彼の新しい論文が楽しみだ。 いろいろと腰の入った意見を聞けたので、 ここに来てセミナーした甲斐があった、 としきりに思った。

先週はそれしか覚えていない。 ふぅ。 このところTex打ちをカタカタカタカタとしているので、 妙に疲れる。雨が降っていないことだけが幸いだ。 毎日の大学の行き帰りがリフレッシュ時間。 美しいSt. John's collegeの庭を突き抜ける。 この風景を見るのもあと一ヶ月ほどか、と毎日思う。 Cambridgeに来て初めは、寒くて暗くて恨めしい風景だったが、 それにもなれて、このところ風景がなんとも趣深く見えるようになってきたから 不思議だ。

研究室はようやく今週からセミナーも始まり、ゆっくりスタートしそうだ。 けど、GaryもPaulもDavidもまだいないので、まったく静かだ。 今日も一人も会わなかった。


1/2 (Wed)

あけましておめでとうございます。

といっても、こちらは初詣も何もない正月である。 サンタバーバラでポスドクをしていたときの正月を思い出す。 あのときも、何もなく、ただ日本の方を向いて 御参りしてみようと思ったけど結局日本が正確に どちらなのかよくわからなかったので、適当にした思い出がある。 けど、少なくともサンタバーバラでの初日の出は拝んだ。 そして5年後、ケンブリッジにいる。 初日の出など拝めるはずのないほどの天気の悪さである。 それで、妻のアイデアで、 ニュートン参りをすることにした。 まあここでは拝むものというとニュートンしかないので、 今年の物理の豊作を願って(?)行ってみようというわけだ。 このとてもいいアイデアを試すべく Trinityカレッジへ雨の中少し歩いていってみたのだが、 やはり肝心の礼拝堂(その中にニュートンの凛凛しい像が立っている)は 閉まっていた。そこで、扉の外から拝んでおいた。 ついでにニュートンのりんごの木にも拝んでおいた。

それ以外は本当に何もない正月である。 周囲もいたって静かな冬の一日である。 一年の計は元旦にあり、というけれど、 そんなことをする気分にもならない。 ま、一年の在外研究の締めくくりはあと二ヶ月たった3月2日なので、 その時に振り返るのがよかろうと思っている。 そういえばあと二ヶ月だ。 この一年いろんなことがあったな・・・ ま、振り返るのはあと二ヶ月たってからにしよう。

今日は大学でだれにも会わずに過ごした。 椅子にすわってじっとしていると、 部屋の電灯が突然消える。 ここの電灯はモーションセンサーになっていて、 机について手を動かしている位では 30分くらいで誰もいないと判断されてしまうらしく、 勝手に電灯が消えてしまう。 今日はその消えた電灯をまたつけるという操作を10回くらいしたような気がする。 それしか運動しなかったということかな。 そっか、そういう風に休憩と運動をしなさいという、 研究所の配慮かな? あ、又電灯切れた。ちょっと腹立ってきた。(笑)

来週はAmsterdamでセミナー。その後Pisaに行く。

本年もどうぞよろしくお願いします。 3月頭に帰国します。


12/28 (Wed)

朝起きて窓から外を見てみると、一面銀世界である。 写真では見ていたけど、こんなふうにCambridgeが白く染まるとは。 気温はマイナス2度で、まあ寒いけれど、 寒いのがつらいなーと思っていた時期は通り越したので、 逆に雪がなんとなくうれしい。大阪育ちなので、 雪を見ると誰も踏んでいないところを探して歩いたりする。

研究所にいってみる。 誰ももいない。 一人もいない。 それがどうしてわかるかというと、まずメインゲートは 完全にしまっていて、僕の大学のIDカードを使ってもうんともすんともいわない。 そこで、裏口に回ってみると、そこはカードで開いたのだが、 なんと僕以外の足跡が無い。 雪が降ったのは夜中だから、僕以外は研究所に来ていないことになる。 ほー、イギリスはクリスマスの後は完全におやすみなわけですな。

と思っていたら、台湾出身のAllenが僕の部屋にやってきた。 そういや、去年のクリスマスは、24日に台湾でセミナーしたっけ。 台湾は旧正月を祝うので、年末年始は通常どおりだ。 それでAllenも研究所に来たのだろう。 こんな時期に研究所に来るのは僕達だけだねえ、と話した。 ついでに議論を3時間あまり。 そうこうしていると、DavidやNickもやってきた。 やっぱり、若い人は年末も出てくるのかな。 Davidと久しぶりに少し議論する。 おもしろい話をいつも彼は持ってくるので感心する。 今日の議論も、彼の最近の論文関係だったが、 面白い話だった。これ、もっと発展するといいんだけど。

外は雪だ。 はじめは楽しかったけど、研究所に来る途中で雪で滑ってこけそうになったので、 もうあんまり楽しくない。 早くこれ、とけないかな。 ていうか、明日は大学どうしよう。 あのささやかな食堂も全部閉まっているし・・・

今日わかった新しいことは、archiveが少し模様替えしたということだ。 クリスマスっぽい?見やすくなったのは事実かな。


12/25 (Sun)

Barcelonaから帰ってきた。短かったけど楽しい滞在だった。 talk自体はまあまあうまくいったと思う。 特有の、お昼をゆっくり過ごす時間帯にあたってしまった (昼の休憩の直後のセミナーだった)せいか、 弦理論以外の人達の姿は余り見えなかったけれど、 Paulが「今日のトークの中では君のがhigh pointだったよ」 と言ってくれたのは、単に僕の話がPaulのやっていることに いちばん近かったからだけではないと思いたい。 Robertoに久しぶりにあう。 彼に前あったのはもう4年ほど前だ。 あいかわらず元気にいろんな人と共同研究をやっているようだった。 研究会でも活発に質問していた。 そういや、David Mateosにはじめて会った。 休憩にくつろいでいたら彼の方から挨拶してくれて、 サンタバーバラではnon-Japanese ポスドクは今君だけなんじゃないの? と聞いたら、かなり彼はのってきて、そうなんだよー、 たまたまだけど面白いね、と言って、僕は日本人のふりをしてるんだ、 とジョークを飛ばしていた。 やっぱり彼はこないだImperialで会った Toni Mateosの兄弟らしい。 二人ともこの研究会で話したが、 そこではお互いに質問しあって、 例えば兄が弟に、 「それでexactly marginal deformationは全てなのか」 とか聞くと「いやこれはもちろん知られているものだけで、しかもSUSYの 数が違うと状況も変わる、例えば・・・」 とか答えているのを見て、 兄弟でこういう会話が出来るって、どんな気分なんだろう、 とふと思った。

Paulがこれに招待してくれてすべてアレンジしてくれたのだが、 まったく感謝してもしきれない。ありがたかった。 彼といつもいっしょに行動して議論もふんだんにできるといううれしさも もちろんだが、それより、このようなdistinguished figureと こういう経験をいっしょにできるというのも素晴らしいことだ。 5年前に富士山のSIで彼と色々話をしたのが、 今こんな風になっていると思うと、 それはそれは不思議な感じである。 僕は彼の、p-brane democracyという論文が好きなのだが、 というか、大学院に入ってはじめて目にした彼の論文が 確かそれだったわけだが、 その考え方に魅了されて、色々自分の研究をしてきたつもりでいる。 そのことを彼に話して、どうしてあの論文が 雑誌の論文として出版されておらずproceedingsになっているのかを聞いてみた。 すると、驚いたことに、あの面白い論文はどこもacceptしてくれなかったという。 それは、まさに、D-braneが爆発的に売れる前だったからだそうだ。 この世の流行って、そういうことを生み出していたりするのか、と思った。 その論文から、僕は彼の研究スタイルを、すごく長い目で色々計画的に やっている人かなーと想像していたのだが、 彼によると彼自身はそういう人では無いらしい。 面白い物理をいつも追求しているだけなのだそうだ。 まあ彼がそうおっしゃっても、 僕のような人間から見ればそれは長いlong shotがあるに違いないわけで、 そういうのを笑い飛ばす彼の懐の深さには恐れ入った。

最後のbraneworldの話の時、Paulが面白いコメントをした。 その話ではbraneの上のmassless scalar場とbulkの重力場との couplingを現象論的に論じていたのだが、 そもそもNG作用は一般座標変換不変なので、 重力は全然coupleできないのでは?というコメントだった。 このコメントをめぐって、場内が大紛糾し、 二時間以上も議論があった。 もちろんこれはある意味正しいけど、 弦理論やbraneworldではそうはなっていない。 彼にそのことを説得できたのがよかった。

クリスマスのケンブリッジは、静まり返っている。 と言っても、たぶん今日25日だけのことだろう。 明日からは、クリスマス商戦で売れ残った品々の、 ものすごいバーゲンが始まるようだ。 例えばNEXTという服飾品店では、あさっての朝5時に店を開けてバーゲンを するらしい。5時とは!!行列の好きなこの国の人達に、 行列を作らせないための配慮?!


12/19 (Mon)

娘と洗濯に行く。ランドリーはTrinity collegeの中にあるので、 そこまで少し歩く。洗濯をしている間、Newtonの像を観に行く。 何度見ても素晴らしい。乾燥している間、Trinity collegeのコート でのんびり娘と歩く。空気が冷えていて、それが余計に カレッジの古い建物を美しく見せる。 こんなに美しいところなのに、人がだれもいない。 ここがもし日本だったら、人で埋めつくされているだろうと思う。 カレッジも冬休みだし、観光客が入れる時間でもない。 人がだれもいないコートを娘と二人でてくてく歩けるのは この上なくうれしい。 今日は夕方娘と散歩した。 散歩といっても、5時頃は真っ暗で、 星を見たのだけど。北極星が非常に高い。 12年前にイギリスに来たときもはっきりそう思ったが、 あのときは3月、今は12月。 冬至の直前、やはりえらく高い。 カシオペアと北斗七星が同時に全部見える。 こぐま座が見える。綺麗だった。

あっと、研究日記じゃないな・・・明日からバルセロナ


12/12 (Mon)

このところ天気がよく、大変気持ちいい。 と言っても、研究室は真っ暗だ。 今日はGaryに会ったけど、彼は「それじゃに1月10日会おうね」 と言い残して、インドの研究会へ旅立っていった。 ここは誰もがそんなふうで、みんな今週からだいたい クリスマス休暇である。それで、common roomも人がいなくて 真っ暗である。ひっそりと、大きなクリスマスツリーが ぴかぴか光っている。 まあ、外も大体3時半くらいで日がくれて、四時には真っ暗なので、 この雰囲気を助長している。いまも四時だけど、 外は日本で言うと、東大阪で夜の10時くらいの暗さだ。 いや、10時でも、東大阪の商店街の方が百倍明るい。

それで、僕もゆっくり部屋に腰を据えていろんな物理を楽しんでいる。 おっと、それは、レフェリー以外。なんでかいきなり三つもレフェリーがやってきて、 それをやっつけるのに四苦八苦している。 よくできたいい論文だったら問題ないんだけど、なんちゅうか・・・ しかも一つは自分の論文に関係のあるちょっとまずい主張のやつ だから、じっくり計算を全部符号までフォローしないといけない。 今日ようやっと二つやっつけた、けど、また戻ってくるかもな・・・ それにしても、これから一箇月程こんな研究所だとは。 こんなに人と会わないのも珍しいんじゃないかな。 もちろん、20日からはバルセロナのクリスマス研究会に呼んで いただいているので、そこでたくさんのスペイン人には会えるだろうけど。

机に座って、書き物をしている。 こんな感覚、なんていうか、masterの院生時代以来かな。 本当に、ありがたい。


12/9 (Fri)

昨日はロンドンから(韓国から)木村くんがやってきた。 こないだ濱中くんがきたときもそうだったなーと思ったが、 ひさしぶりにいろいろと話せてとても楽しかった。 日本や韓国の業界のことを聞くのも楽しいけれど、 それよりもやっぱり、外国に住んでいてどういうことを感じているか というのが話せるのがありがたい。 もちろん国が違えばそれも全然違うわけだけど、 日本を外から見る、自分が外国人になる、とい大きな点では もちろん同じなわけで、その話題を日本語で共有できるという 当り前っぽいことが何よりうれしいのだった。

木村くんと話していて、ケンブリッジが改めて美しい町だということに気づく。 こちらにきてすぐは感動の嵐だったが、 こちらに来てもう二ヶ月、どんどん外は暗く寒くなっていって、 最近、辛い生活気分が目立つようになってきていた。 けど、やはりここはMaxwellやNewtonが教鞭をとった場所である。 あと三ヶ月、充実した研究生活にしたい。


12/7 (Wed)

研究室は、がらんと静かになっている。もうtermが終わったので、 セミナーも今週で全部おしまい。人も極端に少なくなっている。 院生もみな実家に帰ってしまったようで、 今日はお昼にcosmology lunchに参加したけれど人もまばらだった。 ただ、セミナースピーカーの横に輝くクリスマスツリーが印象的だった。 セミナーの邪魔だ。(笑)

先週末から昨日まで、ドイツ人の友達のところにおじゃましてきた。 彼はもう10年来の親友だが、ついにこのところ、彼の素晴らしいアイデアが 成功している。彼は量子カオスの専門家であるが、それに加えて、 彼は物理の演劇をやり、そしてこのたびはQEDというタイトルのDVDを 製作し発売・劇場公開した。このDVD、素晴らしい出来栄えである。 大学生にかなりわかりやすくテクニカルなところのアイデアが説明 されている上に、導入としてもかなり面白い出来栄えである。

恥ずかしいのは、そこに僕へのインタビューが収録されていることだが、 僕も自分で見るまでは恥ずかしくてどうなっているんだろうと気が気で はなかったんだけど、見てみると案外楽しそうにインタビューに答えている 自分があった。自分が画面に入っているなんて、かなり不思議な感じだ。 それにしてもついに、DVDデビューしてしまった。………

旧友と親交を深められるのは本当にうれしいことだ。 楽しかった。彼に、先週Niels Bohrの部屋でぐるぐる回ったけど アイデアも出てこなかったという笑い話をしたら、秀逸なコメントをくれた: 「それは、ある特定の条件を満たした軌道しか意味をなさないからだよ」


12/1 (Fri)

寺嶋さんとの論文、 "ADHM is Tachyon Condensation"が世に出た。感無量だ。半年くらいかなり濃く寺嶋さんと議論していたわけだけど、 非常に面白い論文になったと、自負している。まあいつも書くことだけど、 自分で面白いと思わなければ論文にはならないんだけど、でも今回はなんていうか、 ああ共同研究でこうやって仕上がって面白い結果が出て本当に良かったし、 楽しかったなと思う。何が面白いかって、conjectureが書いてあることだ。 この論文では、もちろんタイトルにある通り、instantonのADHM構成の複雑な 手順は全てbrane antibraneのtachyon凝縮で簡明に理解できる、ということが メインの結果なんだけど、これを使うとですね、とんでもないことが言えるわけだ。 それは何かというと、ちょっと宣伝しておこう。ていうか面白いので。 昔、と言っても7年くらい前かな、Tseytlinのsymmetrized traceによるnonabelian Born-Infeldが出たときに、Yang-MillsのBPS解がそのNBIの解にもなっているという 論文がいくつか出た。これは、BPSだとalpha'補正をなぜか受けないのではという 「噂」につながった。しかしもちろんその証明は、特殊なabelian BIonを除いて されていない。僕らの論文では、small instanton singularityでのYang-Millsの self-dual configurationが、alpha'補正を受けないということを証明している。 これは、全てのmoduliでそれがalpha'補正を受けないということを強力に示唆する。 というのは、moduli spaceの中で一番alpha補正を受けていると思われる small instantonでそれがないというのが示されているわけだから。 ADHMを弦理論で理解するというのはかなり重要だというのは自分でずっと 思っていたけど、こういう風に結果が弦理論に寄与するとは正直昔は思って いなかった。なので、とても嬉しい。

今週の火曜日は、Niels Bohr Instituteでセミナーをしてきた。この話をしたの だけど、いろんな人が面白いと言ってくださったので、嬉しかった。 ADHMとタキオンが結び付くという面白さに興味を持ってくださる人もいれば、 alpha'補正のところを大変面白いと言ってくださる人もいた。 セミナー発表者冥利につきる。セミナーではNielsenも質問をしてくださり、 光栄だ。普段はあまり質問されない方らしいので・・・ そうそう僕のvisitor部屋はNielsenの部屋の向かいで、Olsenの部屋の隣だった。 二人の部屋の間に立って、密かに「僕がvortex」とかつぶやいてみた。 それでかなり自己満足。

そもそもNiels Bohr Instituteに滞在できるだけで光栄だけど、これはひとえに そこに10月から移られた平野さんのおかげだ。平野さんというと、 僕が京都からサンタバーバラに5年前に移ったときに、神様のようにいろんなことを 助けてくださった生涯の恩人だ。今回も例にもれずまたまたお世話になって しまったんだけど、数年ぶりにお会いして大変楽しかった。 積もる話もたくさんあって、会う場所は前とは違うけど、僕の知っているあの 平野さんと、久しぶりにたくさん話すことができて、セミナー訪問というより、 なんというか平野さんに会いに行ったという感が強い。

Niels Bohr Instituteというと、もちろんNiels Bohrなわけだけど、 セミナーをしたのは何とあの超有名な講義室だった!何で超有名かって、 いろんな量子力学の歴史の本で引かれている 写真がこの講義室なわけだ! ボーアが講義をしたのはもちろん、1930年位当時の天才達が集まった場所が ここなのである。ここに、Landau、Pauli、Heisenberg、Bohrが 一緒に座っていたわけだ!!!!すっげー!!!こんなところでセミナー させて頂けるとは!

セミナーの後は、ボーアの部屋に少しだけ入れてもらう。 ボーアがなくなった1960年代以降全く手をつけれらていないその部屋は、 なんというかすごいオーラがあった。ボーアの机に手を触れてみる。 ここにボーアがいたのかという、当たり前だけど天才が実在していたという感触、 これは、CavendishでMaxwellの机に触ったときよりちょっと実感があった。 机の前には、Maxwellやいろんな人の肖像画が飾られていた。鎌倉に行って 仁科と一緒に撮った写真もあった。 部屋で放心状態になっていると、髭の生えた老紳士が入ってこられて、 君はどこから来たのかねと尋ねられた。少し挨拶して、この研究所の方ですか と聞いてみると、なんとdepartment headだった!それで、彼は忙しいにも関わらず この部屋でボーアがどのように暮していたかを説明してくれた。 それによると、中央にある大きな机にボーアは彼の書記を座らせて、 本人はその周りをぐるぐる歩きながらぶつぶつつぶやいて、それを全て 書記に書き留めさせていたという。それを聞いて、もちろんミーハーな僕は 机の周りをぐるぐる歩いてみたのだけど、もちろん新しいアイデアなど 沸いてこなかった。まあそれは単にボーアと同じ場所で同じことができたという 感慨のせいであろう(ということにしておこう)。

一昨日帰ってきて、昨日は浜中君に久しぶりに会う。彼のセミナーを聞け なかったのが申し訳ないが、えらく楽しく話ができて、とても元気が出た。 というのも、この日記には、楽しかったことや感動したこと、研究上のこと、 しか書かないんだけど、なぜこの日記が毎日更新されずに週に一回程度に なっているかというと、そのあいだは結構つらい日々が続いていたりして それは全然日記に書かなかったのだ。ところが 浜中君の日記 は毎日更新されていてしかもその内容通り彼は物凄く楽しそうに生活しているのだ。 ということが彼と話して分かって、僕はたいそう驚いた。 なんたって、僕にはイギリス生活つらいですからね・・・ 何がつらいかって、やっぱり寒いし暗いし、ため息ばっかり出るよ。 人とうまくコミュニケーションとれるかというと、 イギリス英語にはなかなか慣れないし、 娘の風邪を毎回もらってほとんどずっと風邪を引きっぱなしの状態だし、 寒そうな外の景色を見るだけで本当にうんざりだ。 などなど毎日思って暗く沈んだ気分の日がほとんどである。 Niels Bohrでのセミナーも、風邪をこじらして前の晩に嘔吐して、 何かかなりやばい状態で臨んだし・・・なんか体調が全然すぐれない。 そういう日々の間に、平野さんとあったりボーアの部屋を見たり、浜中君にあったり、 そういう楽しいひとときだけを日記に書いているので、 こうやって更新が遅くなってしまう。 ところが浜中君は毎日日記を更新している通り、あの通りに楽しんでいるので、 そういう前向きな浜中君と昨日楽しく喋って、えらく元気が出た。 せっかく在外研究をさせて頂いてこのケンブリッジにいるんだから、 もっと楽しく気楽に行こう、そんな気分になった。 2月にOxfordに行くのが楽しみだ。


11/19 (Sat)

確かに前の日記で「疲れた」と言っている。 その次の日の夜から高熱が出た。ケンブリッジに来る日本人は初めの冬で 必ず風邪を引くといううわさがあるが、それはやっぱり現実になってしまった。 外国で病気になることくらい辛いことはない。 さいわい、二日間ずっと眠っていて、そのあと少しずつ元気になった。 二日間ずっと眠れるくらいきっと疲れていたんだろう。 日曜日はAllenに夕食に招待してもらっていたのに、行けなくて、 とても申し訳ない。

その後だんだんと復活してきたので、 木曜日は無事にImperial Collegeでセミナーを終えてきた。 前日に、Imperial Collegeへの行き方を調べていると、降りる駅が何とあの tubeのGloucester Road駅であることが判明。 あの、12年前に行った、あの駅にまた行けるとは!! この駅は、知る人ぞ知る、列車の上に死体が置かれた駅なのだ。 ふっわー、やっぱ行くなら調べるしかないわな・・・ というわけで、セミナーの一時間前に現地に到着した僕は、 調査を開始。District lineがあやしい。いや、circle lineの可能性もある。 ・・・・で、結局、可能性のある家を三つほど特定して、満足した。 満足した頃、あれ、セミナー間に合うのか?と我に帰る。 結局ギリギリ間に合ったんだけど、いやー、セミナー前にリラックス するためとは言え(ホンマか?)、ちょっとやり過ぎたかな。

セミナーは、前にCambridgeで既に話した内容だからか、 スムーズに説明が進む。幸運にもTseytlinがセミナーに参加してくださる。 僕は彼はずっとOhioにいると思っていたので、嬉しかった。 セミナー中色々質問してくださった。 筑波の佐藤さんにもお会いした。佐藤さんによると、Tseytlinが セミナー中自分の計算をしないで話を聞いているのは珍しいらしい。 それを聞いてたいそう嬉しかった。 セミナーの後でも、Tseytlinに大変面白いと何度も言って頂く。 それで、あとで一時間ほど議論させてもらった。 彼と議論できてとても嬉しかった。

セミナーの後はJeromeと佐藤さんに、パブに連れていってもらう。 こちらに来て本格的なパブは初めてなので、楽しかった。 12年前に行ったパブは、もっと静かなとこばかりだったけど、 学生の集うパブも、気の合う人と一緒に行っていろんな話を大声でして、 それはそれは面白い。

昨日はDAMTPの玄関でヒョッコリ石橋さんにあった。 石橋さんにはケンブリッジの情報を色々教えてもらっていて、 それでこんな風にヒョッコリ会えると思っていなかったのでずいぶん驚いたけど、 おかげで前のGibbons-Ishibashiの話で詳しく色々と議論できて、 とても良かった。それにしてもChicagoよりここが今は寒いとは! 毎日最低気温が氷点下、この冬は寒くなるらしい。どうなるんだろ・・・

今日はGaryご夫妻を招いてうちで夕食を楽しんだ。 とてもおだやかな、そして話していて本当に楽しいご夫婦で、 招いている側が和んでしまった。 Garyのことを歩くインテリジェンスだと思う。 そう石橋さんに言ったら同意してくださった。 もう6年前、Garyが基研に滞在されたときに、 思いきって彼の部屋のドアをノックしたのを思い出す。 それが彼と初めて話した時だった。 いやー、ノックする前はたいそう緊張したっけな・・・ ドアの前でずっとうろうろしたのを思い出す。 (かなり不審者っぽかったに違いない。) あのとき勇気を出してノックして、それで 今こうして一緒に夕食をケンブリッジで楽しんでいる自分があるかと思うと、 不思議な気がした。

浜中君、すまーん!その日はニールスボーアでセミナーするからケンブリッジ不在なんよ!


11/11 (Fri)

なんか疲れた。はー。この所セミナーで良く質問しているのだけれど、 いやー僕の英語って分かりにくいかな。突然質問するから悪いんだろうか。 今日もspeakerの人に聞き返されちゃったので。ま、いいか。 結局伝わっているんだし。もっとはっきりゆっくり言うのをいつも心 掛けないといけない。こないだのセミナーはそれでうまく行ったと思う。

一週間も終わり。早いね。早い早い。 そうそう、月曜日はPenroseのセミナーに行ったっけ。 トラペが面白くて、こないだ出た本Road to Realityの挿絵は全部 Penroseの手書きだということが判明。面白い人だね。 しかも、このトラペをもう20年も使っているらしい。 それもすごいな。一つのトラペを20年も使えるような仕事をしているとは。 普通だと、既にメディアが違ってしまって使えないところだけどね。 数学という分野のなせる業かな。

一昨日はたまたま、Greenさんに自己紹介できた。 自分のやっていることを話したんだけど、イマイチ反応が鈍かったのは、 あまり興味を持ってくださっていないからだろうか。 でも、昨日のご本人のセミナーでは、R^4補正のことをしつこく議論していた。 alpha'補正だけのセミナーを聞いたのは久しぶりだ。 僕のもずいぶん関係すると思うんだけど、まあopen stringだから違うという ことかな・・・・ それにしても恐ろしく話すのが速く、しかも頭の回転の速い人だ。 Watiに初めてあったときにそう思ったものだが、その彼に少し慣れた今でも Greenさんの英語を速く感じるということは、そりゃすごい速さだと いうことなんだろう。今まで会った弦理論屋さんで一番速いんじゃないかな。

ふー。一週間終わり。


11/8 (Tue)

色々書くことがあるんだけどなかなか書く暇がない。何でだろう。 まあ充実している証拠かな。昨日は電話で寺嶋さんと議論させてもらった。 いつも議論は大変面白い。前は寺嶋さんに電話をかけてもらっていて 電話代で恐縮していたけど、今回はこちらからSkypeで電話をしてみた。 声の質はずいぶん悪かったけど、話せて良かった。これ、やっぱり物凄く安くて、 一分で2円くらい。これで世界各国にかけられるんだから、すごいね。 それで、今、寺嶋さんが手を入れてくださったドラフトにまた 手を入れている。これ、ボツボツ出せそうな気がしてきた。 まあ、内容はもうだいたいこないだのセミナーのppt fileに書いたので、 実はそっちのほうがトラペだから一目で見るには良かったりして。 もうすぐ論文出すので是非見てやってください。

OxfordとPisaからセミナーの依頼が。嬉しい限り。 Oxfordは、K本君やH中君がいるので、こちらからセミナーさせてくださいと 頼んだんだけど、ありがたいことに実際させてもらえることになって、 楽しみだ。それと、PisaはY井君がいて、久しぶりに会えるのでそれも楽しみ。 いろんなところに行って自分の研究成果を話せるって、これ以上 幸せなことはないよね。感謝感謝。

先週は念願のWren libraryに行ってきた。 Newtonの髪の毛を見る。うぉぉぉぉ、ここにNewtonありき! すごいよね、Newtonのいたところで物理の研究できるなんて。 本当に素晴らしいことだ。 Newtonの筆跡、美しい。しばらく魅了された。 それと、確か先々週だったか、Cavendish laboratoryへ行ってきた。 そこに物理関係の展示があると聞いていたからなんだけど、 行ってみてびっくり、あれ、これはstrings2002の会場だったとこやん?! あれって、Cavendishだったのね・・・・忘れてたよ。 それで、ああ、懐かしい、確かこのベンチに座ってTyeと議論したっけな、 とか、思いながら、研究所を散策した。 展示は非常に素晴らしく、例えば一番の目玉は、 「Maxwellの机」だ。こんなものが現存しているとは!!!!! その机の上に手を置いてみる。レザーが張ってある木製の机からは、 相当な「気」が感じられた。ひょっとして放射能だったりして(冗談)。 しかし、そこで面白かったのは、 「マックスウェル教授の机の上にコップを置かないでください」 という張り紙が机に置いてあったことだ。 こんなにspecificにやってはいけないことが書いてあるとは、 きっと過去にこの上に濡れたコップを置いて、 「教授」の机に型を残してしまった学生でもいるに違いない。 僕はそーっと引き出しをあけて楽しんだりしたが、 まあそれはやってはいけないとは書いていないので、いいんじゃないかな。 もう一つ面白かったのは、研究所の構成員の集合写真を毎年撮影して いるということ。それが全て展示してあって、 年ごとにJ.J.Thomsonが年をとっていくのが分かる・・・・ そして、ある年の写真で、彼の姿が消えてしまう。悲しかった。

今日はお昼をDavidとNickと楽しんだ。こういう風に議論できると嬉しい。 Davidのもうすぐ出る論文はかなり、かなり面白そうだ。 出たらまた読んでみよう。

先週末はシャーロックホームズ博物館を襲撃。 うおおお、すばらしいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!


11/3 (Thr)

ふぅー。DAMTPでのセミナー終了。疲れたー。

やっぱり話す前は少し緊張。でも、ここに来て一ヶ月たつせいもあって、 リラックスして話すことができた。今回は、セミナーとしては初めて power pointを使ってみた。前に駒場の原子核の研究室向けに話を したときに一度使ってみてそれ以来使っていなかったんだけど、 今回色々と絵を入れたりとかいう感じで式をくどくど説明するというより アイデアの説明だったので、思いきって ppt fileを作ってみた。時間はそんなにかからなかったけど、 出来はまだイマイチかな。セミナーに間に合って良かった。 3日前にトラペを書き出したのって、今まであっただろうか? ギリギリの今朝に仕上がった。

セミナーではやはりNickがたくさん質問をしてくれた。あと、DavidやGaryも 質問。セミナーの後はParthaと一時間ほど議論しただろうか。 彼には面白い点を分かってもらえたようで、それは良かった。 彼はboundary stateを知っているから。 トラペはboundary stateを極力explicitには使わないようにして 書いてみた。やっぱりboundary stateはマイナーらしいので・・・

はー、これで一段落だ。 かなり集中してこれをやっていたので、疲れがどっと出た。 今日はもう帰ろう。

久しぶりに平野さんと連絡がついてとても嬉しい。ホント久しぶりだ。 Niels Bohr Instituteに呼んで頂けることになった。とてもありがたい。 楽しい旅行になりそうだ。そう言えば、昨日はこれまた久しぶりに Kirillに会った。彼は今Newton Instituteに少し滞在中らしい。 会うのも何年ぶりだろう。彼はもうノッティンガムのlecturerだ。 また色々サンタバーバラ時代の話でもできるといいなと思う。 そうだ、そういやまだNewton Instituteのセミナーに行ったことないな。 毎日セミナーをやっているし、しかも同じ敷地にあって毎日その前を通って DAMTPに来ているのに。来週月曜日は、AshtekarとPenroseの話があるようなので、 行ってみよう。


10/31 (Mon)

今日でイギリスに来てから一ヶ月。 先週は Johnとの論文 を仕上げることができたので、フーッと一息だ。 これ、学部生でも読める論文である。こんな論文書いたのは初めてだ。 hep-thに投稿して良いのかなとも始め思ったけど、投稿してしまった。 この論文の始まりは、去年の12月クリスマスに台湾を訪問したときに Johnがふと始めた議論だった。これは Sunny達の論文で、 rolling tachyonはある極限でD-braneが「虚時間」に並んでいると解釈できる という話があるのだが、こういう「虚時空にソースがある」という 考え方はそもそも普通の場の理論でどう考えるべきなんだろうかという 疑問から話が始まったのである。初めは色々調べるとこれが 面白い時間依存するしかもsourceのない古典解を生成するうまい方法だという ことが分かってそれで楽しんでいたのだけれど、長いこと議論しているうちに、 これが基本的な概念なのではと思える結果が色々出てきた。それで調べてみると、 なんとMaxwellの電磁気学では、この虚時空のソースというのが 全ての古典解のベースを張るということが証明できた。 これは場の理論の一つの面白い見方になると思い、それをまとめて 論文にしたと言うわけだ。結局これはWick回転の話なんだけど、 それがどこまで一般的かにチャレンジしていてしかもconjectureまで 言っている論文はないと思う。ていうか、こんな具体的なconjectureを 論文で書いたのは初めてだ。まあ、非線型な系についてはこういうことを つぶやいてみてもどの程度応用できるのかは全く不明だけれども.... なにしかもう10ヶ月もやっているので、論文が無事出て良かった。 論文が出てから、GaryやPaul、寺嶋さん、Parthaなどから色々と質問があり、 面白いと言ってもらえたので大変良かった。この日記を読んでいる皆様、 本当に、学部生でも読める論文なので、是非暇潰しにでも読んでやってください。

先々週は確か家にDavidを呼んで夕食をした。彼は非常にentertainingで、 話していてとても楽しい。このCambridgeに来たいと思ったひとつの理由は彼が ここにいたからだった。日本人の先輩後輩の考え方の話をしていると、 偶然にも、時差も含めて彼と全く同じ誕生日だったということが判明。 こないだ論文を一緒に出したとき、年齢も同じで、 しかも初めて論文を出した年月も同じ、今まで出した論文の数も同じ、 ということでおおいに偶然の一致で驚いていたけれど、なんと誕生日も同じとは! 不思議な話だ。地球の裏側で生まれ育ったのに今こうやって毎日顔を合わせて 議論しているとは。確率だよと言ってしまえばそれだけだけど、 何だかそれ以上のものを感じてしまったわけ。

先週末はPaulに自宅に呼んでいただいた。 そんなことはあり得ないと思っていたので、これまた大変感動した。 Paulの手作りスコーンを頂いて、身に余る光栄だ。 このスコーン食べたら少しいい着想が得られるかな、と真剣に思った(笑)。 彼に初めて会ったのはもう5年前のSIで、奥様と四人で富士山にのぼったのを 覚えている。彼はこの冬から5年間fellowshipでsabbaticalである。 5年とはすごい。今度Spainに来てセミナーしないかと言われて、 もちろんとすぐ返事をした。実現するといいなあ。

毎日寺嶋さんと議論している。これはADHMの話だけど、 7月に出した 寺嶋さんとのNahm論文 の時から比べると色々なことが分かって、非常に楽しい。 ドラフトもずいぶん出来てきた。今週木曜日はこの内容で seminar をここでする予定だ。そして、11月17日にはImperical College London でseminarをする。どんな反応があるか楽しみだ。ていうか、トラペ書かなきゃ。

先週は色々税金やらで消耗。なんで「旅行者」なのにcouncil taxはらわにゃ ならんねん。色々ホームページを検索してみると、エジンバラでは客員研究員 はうまくやるとCouncil taxを免除してもらえるらしいが、ここCambridgeでは 一律、免除なし。悲しい限りだ。5ヶ月だけなのに、10万円の支出。日本で税金 払っているけど、確かに市民税は今は払ってないしな...まあそういうことで、 新しい国は色々些細なことで時間を使って消耗する。まあ、楽しもうと思って いるんだけどね。

週末は近所をブラブラする。天気は悪いけど、毎日雨が 降っているわりにはこの所週末は雨が降っていないので、助かる。 住んでいるところはCambridgeのど真ん中なので、歩いて50メートルで Newtonの林檎の木があるTrinity Collegeだ。どのcollegeもuniversity cardで 入り放題なので、先週末はKing's collegeに入ってみる。 壮麗なチャペルで、すばらしいコーラスを一瞬だけ味わえた。 一瞬だけ、というのは、娘がすぐに騒ぎだしたので出ざるを得なかったからだ。 まあそういうのは慣れているのでもう悔しくも何ともない。 娘に一瞬だけでも素晴らしいコーラスを聞かせられて良かったと思う。

それと、土曜日は十色会という日本人の集まりに参加。これ、 日本人で集まってセミナーをするという面白い集まりで、 なんというかサンタバーバラの日本人会ではこういうの考えられないな、 と思うばかり。どっちが良いかという問題ではなくて、 サンタバーバラなら楽しいバーベキューのところが、ここでは 暗号の歴史を学んだりする会になるのが、何か文化的な違いが見えて面白かった。 また行ってみよう。


10/19 (Wed)

今日は9時に大学につく。良い感じである。 水曜日はセミナースピーカーとお昼を近くに食べに行くというので、 一緒に食べに行ったが、なかなか会話に入れずに困った。 イギリス英語にまだ慣れていない。同じ英語なのに、関西弁と東北弁くらい違う。 分かる人もいるが、なまり(というと怒られるけれども)のきつい人は 特に食堂のようにがやがやしていると聞き取りづらいことこの上ない。 知らない人ばかりだというのもある。知っているのはDavidくらいだしなあ。 ここは食べ物も高くてまずいし......駒場が天国に思えるよ。 例えば近所で肉屋弁当が買えるというだけで。

セミナーはERG(と略すと何のことか分からない人がほとんどのはずだが) の話だった。むぅ、イマイチ要点がつかめない。

昨日の夜も、論文の校正をした。これでJohnが納得してくれたら、 出せるに違いない。ずいぶん形になってきた。あと少し。 色々と詰めの計算をしている。ていうか、計算はとても簡単。 いろんな例で試している。 論文出来たらここでまた宣伝させてもらおうっと。

この二ヶ月というもの、引っ越しやら研究に忙しくて、 あまりhep-thをまともに見ていなかった。それで、archiveからの メールがたまっていたので、昨日頑張って一気に見てみた。 面白そうな論文がたくさん出ている。一気に机の上がうずたかい 山になってしまった。print outするだけで満足していてはいけないので、 一つ一つ時間の空いたときに読んでみよう。 そう言えば、hep-thが無くなるらしいね。 なんでカテゴリを変えるんだろう。しかも、QCDだけ独立のカテゴリに するというのは、何か変な気がするけど、どうだろうか。 そんなにQCDの論文多いかな?しかも、 QCDはhep-thにもhep-phにも含まれないという論理が分からない。 S本さんが怒るんじゃないかな(笑)。 というか、今のカテゴリを変えるという論理が分からない。 今のままでは問題があるというのは分かるけど、 分野の分裂をよけいに激しくするような新システムに見えて仕方がない。 問題が大きくなっている気がする。 cross-listingをあんまりみない僕の方に問題がある?まあ、 こんなことをここで愚痴ってみても、変わることには間違いなし。

今、バリバリと大きな音で雷が落ちて、雷雨が始まったかと思えば、もう晴れている。 David曰く、「welcome to Cambridge」だそうだけど、 確かに。10年前にスコットランドへ行ったのを昨日のように思い出す。


10/17 (Mon)

ようやくこちらのでの生活が安定してきた。生活しているという感じだ。 朝から大学に来て研究するという当たり前のことができるようになった。 それで、うきうきして色々やっている。

今日はcosmology lunchに出席してみた。 WMAPの結果を解析したらgaussianからのdeviationが見つかったという話。 10度くらいの大きさのcold spotが南半球にあるらしい。 それで、面白いのは、色々な可能性を考えた結果どうも noiseではなく、topological defectではないかということなのだ。 これは消去法的に残った可能性らしくて、 どんなsolitonがそこにあればcold spotをつくれるのかとかそう言う話は これからなのだそうだ。この話を真剣に捕らえると、 なんと空にソリトンが浮かんでいる(?! 浮かんで「いた」?!)ことになる。 こりゃ大変なことだ。 しかし見え方がspotなので、cosmic stringではないことは確かである。 いや、確かではないかも知れないが、今まで議論されていたような WMAPでのcosmic stringの見え方の話とは、このcold spotはずいぶん違う。 しかし、魅力的な話だった。

Garyが1914年に書かれた電磁気学の本を貸してくれた。 こんな本を持っていてそれが僕の研究に関係があることを見抜くところが Garyのすごいところだが、とにかく読んでみる。 関係のあるところがあるような気がする。 まあこういうwick rotationの研究をしていると、 おそらく100年ほど歴史があるので新しいことを言うには難しいかも知れない。 論文を出した後でどこかのおじい様からお叱りを受けるかも知れない。 しかし面白いのである。Garyが言うには、Technologyが新しいかどうかよりは おそらくその視点がどう現代の物理に反映できるかが重要だ、 とのことだが、ホントそうである。そう思ってみなさんに読んでもらえるように 願うばかりだ。今仕上げ中。

そう言えば先週のgravity lunchはGaryの話だったけどたいそう面白かった。 これって論文になっていないのでは? 宇宙で大きな三角形の内角の和を測ってそれで宇宙の曲がり具合いを測定 できないかという話。このような話には、遡ろうと思えば1000年も遡れるわけで、 しかも本当に1000年も遡ってセミナー発表をしたGaryの知識の深さは 測り知れん、と恐ろしく感じた。こんな人と楽しく議論できるとは光栄である。

Garyにもう一つ本を貸してくれないかと頼んだ。それは、もちろん、 Strand magazineである。


10/13 (Thr)

忘れないうちに書いておこうと思うが、 ネクターカードをH中君より早く手にいれることができたのは、 H中君のhomepageが充実していたからに他ならない。 H中君のページはイギリスに住む人にとってはサバイバルに必要な情報満載。 もしこれがなかったら、ネクターカードの存在すらいまだにしらなかったに 違いないのである。

確か火曜日は、12時頃に食事をしようと思ったら研究室に誰もいないので、 とぼとぼと一人で食堂に行ってみた。 ここの食堂はひどいのである。 どのくらいひどいかというと、駒場とは比べ物にならないほどひどい。 もちろんKEKよりひどい。どうひどいかというと、サンドイッチしかないのである。 暖かいものと言えばカップスープがあるだけ。 これで皆良く生きていけるなあと感心するほどだ。 だからといって、回りにレストランがあるわけでもない。 結局このケンブリッジ大学の学生は、みなカレッジに所属しているので、 カレッジで昼食や夕食を食べることになり、 ケンブリッジには京都のような学生昼食屋が全く育たないのだ。 仕方なくスコーン一つとカップスープを購入して(これで500円もするのである) 細々と食べていると、Allenという院生がやってきた。 どうやら僕のことはDavidから聞いているらしい。 それで、色々とsemilocal vortexについて議論した。 ADHMの話も少ししてみた。面白いと言ってくれたが、 vortexに応用できるかというとかなり難しそうである。 議論していると他の院生やスタッフもちらほらやってきて、最終的には10人 ほどになった。聞いてみるとたいてい1時頃からこのテーブルで食べ始めるらしい。 そうか、昼食は1時なのか、なるほど。

昨日はZaremboさんのセミナーで、セミナー前に皆で集まって昼食に 行ったそうだが、僕は予定があって欠席した。 セミナー後にtea timeがありそこで、サンタバーバラで会ったAnneに再会した。 彼女が言うには、昼食は皆近くのカレッジに行って食べているという。 本当はカレッジのメンバーじゃないとはいれないんだけど、 そのカレッジメンバーと一緒に行けば問題ないらしい。 それで、近くのカレッジに所属している人を捕まえていくそうだ。 まるほど。毎週セミナーのspeakerといくらしいので、 来週の水曜日は参加してみようかな。

11月3日に、ここでセミナーすることが決定。 まだ三週間近くあるので、ゆっくり準備できる。 面白いところが伝わるといいんだけどな。

昨日はGaryと夕方少し議論した。 Johnと議論して分かってきたことを少し話してみる。 彼も納得してくれたようで、しかもintriguingと言ってくれた。 まあお世辞かも知れないけど、言ってもらえるのは嬉しい。 Johnと詰めの議論をして、論文出せたらいいのだけれど。 もう去年の12月からやっているから、既に10ヶ月になるなあ。 紆余曲折はあったけど、なかなか面白い論文になっていると思う。 これは素粒子物理だけじゃなく、古典物理の話なので、 どんな人でも読める論文だ。こんなの初めてかな。 wick rotationの論文、と言ったらどんな人も眉をひそめるんだけどね。 でも誰もが知っていることをテーマにできるというのはなかなかないからね。


10/11 (Tue)

ケンブリッジ到着。何と美しい街だろう。 ここで半年研究するのか、と思うと、何と幸運なことだろうと思う。

けれど、こうボンヤリ思えるのは、今日辺りになってようやく 生活が安定してきたおかげだと思う。 先週はかなりひどかった。電話回線を開いたりどこで買い物をするとか 基本的なことを全てやらなければならず、 おまけに、パスポートの問題まで浮上して、一時はいったん国外に退去 しなければいけないのではないかということで、 一日それで完全に時間が潰れてぐったり。 けれどこちらの秘書さんやGaryの機転のおかげで、 どうやら問題はないということになった。 もう少しで飛行機のチケットを買うところだった。ふぅぅ。 先週は娘の時差ぼけもひどく、妻と全然眠れなくて体調を崩す日々だったが、 今日になってようやく娘も通常の時間に寝起きしてくれるようになった。 これでずいぶん生活が良くなるに違いない。 この一週間で一番ましだったのは、きっとネクターカードをH中君より 早く手にいれたことだけであろう。(いや、冗談です。)

ここでは懐かしく、Garyと再会。僕のフラットに洗濯機の設備がないことを知ると 色々手配してくださったり、生活まで色々助言していただいた。 週末は自宅に招いてくださって、本格的なイギリス料理をごちそうになった。 まだ生活すら落ち着いていない僕たちにとっては心余る歓待で、心底嬉しかった。 彼が食事のさいに取り出したのは、なんとStrand magazineで(!)しかも それは古本屋で1ポンドで手にいれたらしい。素晴らしい。こんな風に本物を手にする ときが来るとは思わなかった。トロントでビートンのクリスマス年鑑の実物を 手にとったときも感激したが、この一年がこうホームズじみてくるとは予想すら しなかった。ホームズ世界をつなぐ、である。

Paulにも久しぶりに会う。前に富士山のSIでお会いしたときからもう5年、 もうお互い子供も大きくなっているとは、と言いながら色々話した。 娘に木のパズルをプレゼントに持ってきてくださった。感謝。 彼もADHMに興味を持ってくださっているようだ。 ここでセミナー出来る機会が回ってくればいいのだけれど。

先週木曜日は、初めてここのランチセッションに出る。 Greenさんの質問が激しい。参加者の一人がその場でいきなり こないだ出たPolchinskiの面白い論文を簡単にreviewすることになったりして。 色々質問が飛び、ああここがCambridgeなんだなと実感する。 質問を僕もしたかったが、ここがどういう場所だかイマイチつかめていないので 今回はやめておいた。もう少し感触がつかめてきたら質問することにしよう。 セッション後はGaryとPaulの議論に少し混ぜてもらう。 どうやら質問しないでおいておいたことは正しかったようだった。 これから毎週こんなセッションがあるのは楽しみだ。

Davidとも久しぶりに会う。元気そうだ。 早速ADHMの話の説明に取り掛かる。 彼なりの、面白く感じてくれた部分を教えてくれた。 そんな部分に興味を持っていたとは、となるほどと思う。 一方で、境界状態やBSFTという話題が如何にメジャーではないかを思い知る。 これからも彼と色々議論していきたい。

昨日はGaryと議論する。こちらはADHMの方ではなく、 Wick rotationの仕事の方である。これも去年に台湾に行ったときから ずっとJohnとやっていることなんだけど、そこでのstatementがどの程度 応用ができるかについて、Garyほど聞いてみるのにふさわしい人はいない のは明らかだった。一応彼がhostということになっているので、 また面白い話題で研究や議論ができないものかと思い、 そのきっかけとして今仕上げているというかほとんど仕上がっていて あとは投稿するだけという論文の話をしてみる。 結果、やはり彼の示唆は慎重でしかも重要だった。 これはJohnと少し議論してみなくては行けなくなりそうだ。 彼に話を聞いてもらって良かった。

毎日美しいTrinity collageの中を歩いて通っている。 最高の道である。こんな道を毎日歩けるなんて、想像だにしなかった。 strings2002でJohnと議論した、Cam川のほとりの芝を見つけた。 ニュートンの髪の毛が残されている図書館を前にして物思いにふけることができる のは、幸せである。


9/29 (Fri)

阪神が優勝しそうだ。うおおおお。

それはそれとして、いや、それはそれとすることはでけへんけど、 まあそれはそれとして、研究日記。 明日ここを出発してケンブリッジ大学に向かう。 KITP、楽しかったなあ。ほんまに。 今日引っ越しの用意のついでにOil pointに寄って、懐かしい 海辺を眺めた。素晴らしい。 これ、五年前、眺めながらいろんなこと考えてたなあ、と思い出す。 ここに来れてほんまに良かったなあ。

今日は数学者の人との対話セッションに出る。 色々と面白かった。やっぱり発言できなかったけど、 でもとても面白い議論を聞けた。良い雰囲気だなー。 明日は引っ越しの用意でセミナーにはもう出られないかな。 今日でもこんな面白いセッションに出て、サンタバーバラって いいところだなとひしひし思う。

お茶の時間に、Amiと話していると、僕が今ADHMを やっているという話になって、それで彼が「Nigelに紹介するよ」 と行ってくれたので、ドキドキしながらHitchinと話した。 光栄である。少し知りたかった質問もできて、しかも Oxfordにも誘っていただいたので、是非訪ねてみたい。 Imperial collegeからもセミナーのお誘いがあったので、 これも楽しみだ! イギリス、どんな生活になるんだろう。 大学生の頃からあこがれていた国だ。 そこに住むことになるとは! ドキドキしている。


9/21 (Thr)

先日、ハーバードの大学生の北川さんという方からメールが来て、 海外の大学に進学する、外国で研究する、ということについて質問を受けた。 その話が彼のアルク のblogに掲載されるらしい。 高校生にこういう形で色々僕の意見を言うことができる機会をもらって、 嬉しかった。思えば、僕の「外国」というものに対する考え方は、 大学院の一年生の頃に大きくいろんなことから影響を受けて育ったのではと思う。 一つ大きなことは、M1の時にドイツ人の留学生が来て一緒に素粒子を学んだことだ。 彼からは、日本人という概念を初めて学んだ。今もお互いとてもよい親友である。 それと、もう一つは、物理の論文を英語で読むという経験だ。 これは、今や当たり前だけど、大学の時は教科書しか読んだことがなかった 僕にとって、たとえ教科書を英語で読んでいたとしても、大学院で 論文を読んだときの衝撃は大きかった。何と言うか、 一人の物理学者が一つの物理について語っている、そういう感じがして、 教科書とは全く違う外国の世界だった。 この、外国の世界にいつ入るかは人によって経験も違うし意見も違うと 思うけれど、その辺りの面白い話題が北川さんのblogやそこの森田さんの blogにも色々見えて、とても面白い。

昨日はKITPのビーチピクニックに、5年ぶりに参加した。 懐かしかった。その一方で、ここに娘を連れてきていようとは 5年前は想像もしていなかったので、感慨もひとしおだった。 娘はまだ齢一才にして、David Grossとお話(?)するとは! それはともかく、この美しいKITPが、よけいに美しく見えたのは、 多分僕だけではないはずで、しかもそれは、ビーチが美しいとかそう いうことだけではないはずだ。この研究所が醸し出す雰囲気、 それそのものだと思う。 もうあと10日ほどでここを去らなくてはいけない。 何とも寂しい限りだ。けれど、ここでの二ヶ月の生活はとても充実していると思う。 いろんな人と重要な議論ができたという意味でもそうだ。 堀さんやNikita、新田、立川君、との議論は、とても重要だった。

来週末にはイギリスに向けて出発する。 あと10日後にはケンブリッジにいるはずだ。 今は僕にとって人生でもっとも生産的な時期であるはずで、 しかもこうやってdutyを免除して頂いているので、 またケンブリッジでも存分に物理を楽しもうと思う。うーっし。


9/14 (Wed)

Beisertのreviewはたいそう面白かった。 なんと、3-loopでのミスマッチ以外にもそういう根本的な 問題が発見されたとは、全然知らなかったし、 どう解決されるべきなのかも良く分からない。 しかしたいそうためになった。

Morrisonのコロキウムは、理論物理学者にはどれくらい数学が必要かという話題で、 面白く聞いたけど、これもいろんな人のコメントが面白かった。 Maldacenaは、物理の問題をどれだけ速く解けるかという点においてだけ 数学に興味がある、と発言して、皆を笑わせていたし、 Mooreは、数学を知りすぎていることが時には怖いんだ、 と、まったくMooreらしいコメントをもらしてそれも周囲を沸かせていた。 Grossは、数学がこのように物理で大変役に立っているのは不思議であるという 意見に対して、それはself-evidentで何の不思議もないとの意見を表明して いたけど、それはある程度正しいように思えた。 学生時代に読んだ、田中正先生のかかれた、 相対論がいかに自然であるかというエッセイを思い出した。 あの頃は哲学の本を読むのが楽しかったっけ。 一般相対論と大乗仏教とかいう本を読んだが内容は覚えていない。 クーンの科学革命の構造という本を持って 京大理学部の5階の廊下を歩いていたら、 畑さんに、「橋本君、そんな本読んでもちっとも役に立たないよ」 と声をかけられたのを昨日のように思い出す。 あれ、結局そのあと読み終えずに、本棚に眠っている。 読みたいなあ。

研究は進まず。頭の中でうろうろしている。 立川君に少し話を聞いてもらう。 やっぱり思った通りだった。 明日は少しきちんと書き始めてみようかとも思う。 書き始めたらもうちょっと分かるときもたまにあるので。 けど今回はそうでない気がするなあ。


9/8 (Thr)

さっきまたMaldacenaとすれちがった。MITでもこういうことがあって 日記に書いたっけ、と思いながら。

昨日はHitchinのtalkがあって、どうやらMITでされた話とトラペもあまり 変わっていなかった模様だが、理解は相変わらず出来なかった。 今日のLouisの話はそれよりは分かった気がする。

お昼に行くときに、今週からいらっしゃっているSchwarzさんと話す。 Cambridgeに行くのだという話をしていると、Cambridgeで四月に Greenの60才の誕生日研究会をやるというのを教えてくださった。 Cambridgeはちょうど3月に去る予定なので、これは残念だ。 しかしそのときたまたま一緒に談笑していた人が、Jan Louisだった というのをあとでセミナーの時に知った。 三年前にSchwarzさんの横でたまたま食事をしたことがあって、 そのときはあんまり話せなかったということが悔やまれるのだけれど、 今日は楽しく少し話せたので、ほっとした。 三年前のそのdinnerは、Cambridgeのstringsの会議の時に Gary Gibbonsがorganizeしてくれてせっかく誘ってくれたのに、 テーブルでのイギリスのジョークがあまり分からず、 ほとんど楽しめなくて、僕の心の中でなんというか 失敗の事件としてしか記憶に残っていない。 文化の違いプラス英語の会話能力のなさを思い知った一件だった。 それでそれがトラウマみたいに心に残っているんだけど。 あのときは目の前にCallanとかたくさん尊敬する物理学者が たくさん座っていて緊張も最高潮だったのだけど、 それだけが理由じゃあるまい。 まあそんなことも昔あったので、 今日久しぶりにSchwarzさんにお会いして普通に喋れたのが嬉しかった。

サンタバーバラは相変わらずの天気だ。先週はN氏が来てくれていたおかげで Amihayとも楽しくずっと議論していたが、今週からAmihayはどうやらQuiverの 共同研究者もやってきて本格的にそっちが始まるらしい。 明日はその集まりがあるようだ。いろんなinformal discussionが始まって、 ここはとてもにぎやかな感じになってきている。 先週は、うちの家族とAmihayのご家族とN氏と一緒に食事が できてとても楽しかった。 Amihayはいつも研究所に赤ちゃんを連れてきているんだけど、 その赤ちゃんが可愛いのなんのって。隣の部屋から今も可愛い泣き声が聞こえる。

今日も朝から晩までいろんなことを考えてメールをしたり、寺嶋さんと 電話で議論したり。こんなに外は天気がいいのに、食事の時に10分ほど 歩くだけなんてもったいない。けど、なぜか時間がない。昔先輩が ここでやっていたように、3時頃散歩にでも毎日でてみようかな。 と、思うことも多いのだけれど、どうも部屋にずっとこもっているなあ。 どこか国立公園でも行ってみたいなあ。なーんて 日本を出発する前から漠然と思っていて、 地球の歩き方の国立公園版を買って持ってきてはいるんだけど、 どうもそれも実現しそうもなさそうだ... 10月からはCambridge、そうこうしているうちにここを発ってしまう。 日の過ぎるのがとても速い。


9/2 (Sat)

先週金曜日から、友人のN氏がサンタバーバラに来てくれていて、 大変楽しかった。毎日たくさん議論し、それでたくさん色々喋って、 休日にはたくさんサンタバーバラなども観光した。 こうやって毎日ガチガチ議論するのは大変楽しいと再確認。 このところ、寺嶋さんと議論しているのはメールが主だけど、 時々電話で議論できるのでそれはそれは大変楽しかった。 でもこうやって目の前に議論する相手がいて、 それで一つ一つ楽しんで分かっていくのは本当に嬉しい。 当たり前のことなんだけどね。

先週金曜日はクリスカーターのtalkとやらに行ってみたけど、 これは何て言うかここの人達への逆インタビューみたいなので、 あんまり面白くはなかった。けど、Grossがどういう思い入れで この研究所を黒板だらけにしているかということも分かってそれはちょっとだけ 嬉しかった。Perimeter研究所はamerican expressのコマーシャルに出ていて、 そこでは黒板が多いことで登場しているんだけど、 あそこと比べるとここは、例えば食堂が黒板で覆われているとか言うことは ないけれど、やっぱり僕はここのロビーの黒板と、それと 新しくできた、中庭の外の黒板が好きだ。 太陽の下でゆっくり黒板で議論できるなんて申し分ない。 N氏とそれを思う存分楽しんだ。 この研究所の醍醐味は、やっぱりこれだ。

今週から大栗さんがいらっしゃって、研究会をコーディネートされていらっしゃる。 またまた楽しくなりそうだ。


8/25 (Thr)

堀さんに色々教えてもらう。Gauged linear sigma modelは良く知らないので 勉強勉強。面白そうな話がつながっているというのが、教えてもらって 分かってきた。この所古い文献を関連して見ていたりする。 UCSBの図書館はこんなのだったのか、と今更ながらに思う。 PDとしてここにいたときは、多分一回も利用したことがなかった。

Choiさんの論文が出ている(0508149)。これ、途中まで色々と議論したんだけど、 あちらから質問が来てそれで話が始まって、結局著者にはならなかった。 著者になるほど貢献したと思わなかったので。でも自分が関係した論文が 世にでて嬉しい。このrecombination(最近はreconnectionという風に名前が 変わってしまったけれども)を長岡君とやり始めたきっかけは、 braneを使った現象論でHiggs現象を取り扱うのに絶対これが必要になるからだと 思ったことだったのだが、この論文が今までの数々の"standard model on branes"の 論文達の中で一番practicalに僕と長岡君の結果、Watiとの結果、を使っていると 思う。ますます発展すると面白いと思うのだけれど。

今日から友人が訪ねてくるのでとても楽しみだ。 来週からはAdS/CFTの月が始まる。これもとても楽しみ。 今日のセミナーではちょっとだけderived categoryが分かったような気がしたけど、 気がするだけのような気がする。来週からはもう少し分かるセミナーが増えるかな。 明日はクリス・カーターが話すんだって。何話すんだろう?

サンタバーバラは相変わらずいい天気だ。


8/23 (Tue)

このように、書かないと長い間書かないけど、 書いたら毎日書くというのは悪い癖だ。 けど自分の備忘録もかねているので、 今は書いてしまう。

昨日の「黒板昼食」はNikitaの話で、数学と物理がどのように 相互作用しているかという、このworkshopの意義に関するものだった。 内容はとても興味深くてどれも勉強したくなるような例をいくつかあげていたが、 それは僕はほとんど知らなかったのでここには詳しく書けない。でも 組み紐理論がそんな風に物理との関係で発展していたとは 僕は知らなかった。ここの参加者のみなさんは常識的に 知っていることなのかも知れないけど。

そのランチでDavid Grossの初めの紹介の言葉にはびっくりした。 というのも、彼は僕の斜め後ろに座っていた長髪の人を指して、 クリス・カーターだと紹介したからだった。クリス・カーターというと Xファイルで有名なあの超有名人である。 どうやらITPもその研究対象をサイファイまで広げたらしい--- というのはもちろんウソだけど、やっぱりDavidがノーベル賞を とったことがこんな風にこの研究所を変えているのだなと分かる 面白い出来事だった。クリス・カーターは僕の部屋のすぐ近く、 Founder's roomの横に部屋をもらっている。 なんとも、面白い研究環境だ。 日本で言えば、基研の四階につんくがいるようなものかな? ちょっと違うか。

基研というと、QFTの研究会が無事終了したようだ。 って、他人事みたいだけど僕はオーガナーザーで、 こんなに離れたところにいて出席できなくて申し訳なく思っている。 それで今回はインターネットでのライブ中継を良く聞いた。 考えてみればこの研究会、前にサンタバーバラにポスドクでいた一年 以外は毎年必ず院生の頃から参加していたので、こうやって外から ライブ中継をインターネットで見るというのがプラマリーな 参加方法なのは今回が初めてだ。 外から見ているのがとても不思議な感じである。 それはともかく、ライブ中継は結構楽しかった。 トークもきちんと分かるし、聴衆の質問もきちん とマイクを回してもらっているので分かるし、解像度もほとんど問題ない。 いろんなトークを聞いて、何だかいつも通り参加した気分である。 と言ったら他のオーガナイザーの方に申し訳ないが、 けど、ポスターセッションに参加できなかったことを除いては、 聴講者としては満足だ。質問できないのが残念だったけど...

加藤さんのSLEの話は、加藤さんの駒場での文献紹介に関係したところ以外は 全然知らなかったので、面白かった。どうやらSLEというのは物性の方で 一つの新しい可能性として注目を集めているらしく、 ここKITPでも、来年の暮れからは半年ほどこのSLEのworkshopが走るらしい。 これはhomepageにはまだ多分載っていないのだが、 オーガナイザーのKayが教えてくれた。 Kayは僕がここに四年前にいたときからの友だちで、今はパリにポストがある 物性理論の人だが、確か2週間ほど前、 いきなり彼が僕のこの部屋に飛込んできて、おおいにびっくりした。 聞いてみれば、彼も8月の間はここに滞在するという。 K.Hashimotoという名札を見て驚いて部屋に飛込んできたそうだ。 こっちも驚いたけど、久しぶりの再会に、彼を家に呼んで乾杯した。 懐かしい話題に話がはずんだ。

懐かしいと言えば、何故だか知らないけど昨日から僕の部屋にAndreiが入っている。 彼は今Caltechだけど、一緒にサンタバーバラでポスドクをした仲間だ。 懐かしい仲間が同じ部屋に来てくれて嬉しい。 僕たちの部屋は海が見えて、四年前と比べたら素晴らしいなあ、 ということで意見が一致した。


8/22 (Mon)

またまたしばらく日記をサボっていたが、そのあいだあったことを色々と 思い出しつつ書いてみよう。確か先週の半ばくらいは、やっていた計算もつまり、 いや大体できているはずなんだけどどうもうまくいかなくって、 それで他のことをやってみるもそれもなかなかうまく行かず、 踏んだり蹴ったりだった。それで、ああそうだ、確かこんな時は、 昔ITPの周りを良く散歩したっけ、と思い出して、 外に出てみた。考えてみると、せっかくこうやってとても 良い気候のところにいるのに、 ここは昔来たところだから歩いても知っている道ばかりだという観念があるのか、 今回こちらに来てこうやって散歩したこともなかった。 けど、歩き始めてみると、また見る見る昔歩いたことが思い出されて、 大変楽しかった。 大栗さんと一緒に議論させてもらった小道を歩いてみると、 残念ながら今は崖の下が崩落していて危ないとの理由で網が張ってあって 入れなくなっていた。まあそういう残念なこともあったけど、 しかしこの散歩は有意義だった。 大きな海から打ち寄せる波を見ていると、 何でこんなほんの些細なつまづきで大げさにくじけていたんだろう、 と感じ始める。 このITPの良さはそう言うところにあるのだ、と改めて発見した。

先週は僕はBerkovitzと同じ部屋。先週の彼の話はおそらく唯一 topologicalではない感じのtalkで大変楽しめた。 そういうと先週のKapstinの話もそうではないと言えばそうではないので 語弊がある。まあそれはともかく面白かった。相阪-風間の話に 言及しないのは彼なりのポリシーなんだろうか、それとも僕の頭が 片寄っているのだろうか、と思いながらも、彼のhigher loopの 面白い話に興味をそそられた。 セミナー前のある日自分の部屋に4時頃お茶から戻ってみると、彼は 小さい日記帳のようなメモ帳を膝の上に置き、海の方においた机に足を投げ 出して、じーっと海の方を見ていた。その姿が一瞬で目に入り、 例の逸話を思い出した。 彼は夕方になると必ずsuperstringの量子化について 座って毎日小一時間考えている、それをこの十年以上続けている、 という噂を日本で誰かに聞いたことがあった。 彼が何とそのフェーズに入っている。一目で分かった。 その噂は果たして本当だった。

こうやって、本当の自分の物理を長い間ポリシーを貫いてやっていくのは、 大変素晴らしいことだし、なかなか出来ることではないのは自分でも重々 分かっている。それを貫いている人の姿を偶然にも同じ部屋で見ることができて 光栄だった。


8/11 (Thr)

こちらのポスドクのMichaelが自転車を譲ってくれるというので、 壊れているのだが昨日もらってみた。壊れていたのは単にパンクと 同じだということが判明したので、今朝自転車屋で修理してもらって、 今日から快適自転車通学である。なつかしいIsla Vistaのbike pathを 走ってみた。

研究の方は、昨日今日と少し詰まっている。というか、 ある方では、やり方は分かって あとはそうあるべきことを示すだけなんだけど、 どうもちょっと計算したものが合わない。やっぱちゃんとやらないとダメですな。 そんで、もう一つの方は、これまたやり方はだいたい分かっているんだけど、 微妙なところをどうやるかが分からない。これも詰まってしまった。 昨日は一日朝から晩までそれを考えていたけど、出口がまだ見えない。 こんな風に詰まってしまったときは他のことを考えるに限る。 それで、戻ってくるとたいていはすっきりして別な考え方ができるってもんだ。 まあ問題を先送りにしているという言い方もできるかも知れないけど、 まあまたすぐ戻って考えるということで。

ここで走っているプログラムは「弦理論の数学的構造」っていう名前だけど、 数学者の方もだんだんと参加が始まっている。数学っぽいことがもちろん 多くて僕にはちんぷんかんぷんのセミナーも多いけど、でも僕なりに分かる ところを楽しもうと思う。来月はAdS/CFTなのでもう少し分かるかな。


8/8 (Mon)

朝八時半に大学に来てみる。すこぶる気分がいい。部屋の外はまだここ 独特の朝霧で覆われていて、海は見えないが、いつもの香りがする。 今日も一日、セミナーも会議も何もなく、夜まで何をしても良い日であると いうことが、何とも嬉しい。朝からボンヤリと、座ってこないだの続きを 考えている。ずいぶん分かった気がするのだけど、まだ詰めが甘いようなので、 良く考えてみないといけない。寺嶋さんとずっとメールで議論させて もらっている。今帰国されていて、日本でのtalkで少しこないだのNahmの 話を紹介してくださるらしい。ありがたい限りだ。

先週金曜日は、四年ぶりにスコッチミーティングに参加。 今はPosdoc Teaと呼ばれているらしいが、場所がもっと良いTower roomに 移ったこと以外は昔のままだった。5年前にしたのと同じように、日本酒を 差し入れに持っていった。MikeやMarcusたちと地元の話題で花が咲いたけど、 途中でDavid GrossとMarty Einhornが入ってきてからは、 やはり話題が固いものに少し変わる。 定年制についてかなり議論が白熱していた。こんなときあまり話題には 入れないけど、まあいっか。Davidがうまいといいながら日本酒をたくさん すすってくれたのが嬉しかった。 彼はまだ、僕が去るときに売ったドライヤー使ってるのかなー、 とかひっそり思いながら。

週末はGoleta beachへ行ってみる。 ここに自分の娘と来るとは、あのとき想像だにしなかった。 僕はうちよせる波をずっと見ていた。 このへん、大栗さんと歩きながら議論させてもらったっけ。


8/4 (Thr)

毎日が楽しい。今日は一つ良い発見があったので、興奮している。 これも、サンタバーバラの気候のおかげかな、と思うのは、 サンタバーバラを称賛しすぎだろうか。 研究所は美しい。3時のクッキーの時間は健在で、 と言っても今は場所が変っていて中庭になっている。 これまたのんびりできていい感じだ。 時々workshopの参加者の方と議論もできるし。 昨日は確か堀さんに話を聞いてもらったっけ。 今日はNikitaと議論をした。良い。

毎日が幸せである。夢のようだ。 本当に、夢の世界に迷い込んだようだ。 何回もサンタバーバラの夢見たからなあ。 今も、5年前に座っていたFSHアパートの机に腰掛けている。 なんてこった。 まだ、サンタバーバラにいるということが信じられない。


8/1 (Mon)

今日からサンタバーバラである。懐かしさ爆発だ。 もう、懐かしい以外の言葉が見当たらない。 町のあらゆる所が懐かしい。 小さいサボテンだとか、 映画館の横のトイレだとか、 住んでいたアパートの裏道だとか、 何もかも全部が、4年前にここを去ったその時と同じまま、 残っている。何度も夢に見たこの場所が、 実際に目の前に広がっている。 こんな体験は人生で初めてだった。

今日4年ぶりに(K)ITPに顔を出した。 あのMain entranceから入ろうと思ったけど、 表は全部工事中。けど裏側がずいぶんrenovateされて、 新しい棟も出来、美しくバージョンアップされていた。 素晴らしい。 研究所に足を踏み入れるだけで、感動した。 check-inの時の説明も当時のまま。 ていうかほとんど同じなので説明が要らない。 一つだけ変わったのは、エスプレッソマシーンの場所だった。 自分の部屋に行ってみて、びっくり。 海側の気持良いところだ。 5年前は、海とは反対側の駐車場向きだった。 それで、当時のポスドクは皆文句を言っていたものだ。 けど今はビジターという身分なので、 海側の部屋である。あこがれていた部屋だった。

お昼に百武くんに誘ってもらって、 ここのポスドクのみなさんや堀さん、奥田君と生協に食事に出かける。 あの時と全く変わっていない。 Haackという人や他のポスドクと挨拶して、 どうやら各人どこかで一度会ったことがあると判明。 ああ、顔をなかなか覚えていないんだよなーこれが。 失礼なことをしてしまいました。 嬉しかったのは、Joeがいきなり挨拶して話しかけてくれて、 すぐにcosmic stringの議論が始まったこと。 こないだの面白い論文の話で盛り上がった。 lunch tableでは、Steveにも少し、LHCのBHのことで質問。 何と、lunch tableでは僕がベラベラと喋っているではないか。 ああ、こんなことはPD時代はほとんどなかったなあ。 今はお客さんだからかな。とか思ってみたりするけど、 嬉しかった。お昼の後は、百武君に色々教えてもらう。 うーんやっぱり良く分かっていないのでもっと今度教えてもらおう。

しかしこんな感慨があるとはね。 明日から、二ヶ月研究頑張りたい。


7/19 (Tue)

Strings 2005も終了して、TorontoのFields Instituteの静けさを取り戻している。 またのんびり研究ガシガシ計算の毎日がやってきた。

Stringsで一番面白かったのはやはりpanel discussionだったかもしれない。 面白いtalkはたくさんあったけれど、やはりpanel discussionで Stromingerがanthropic wayにこぶしをあげて反対したのを見て、 気がすっとした人も非常に多かっただろう。 最後の挙手投票では、人間原理ではないと思う人が8割を超えていたが、 まあやっぱりそんなもんだろう。 2割もの人が人間原理を考えているということが驚きだとも言えるかも知れない。

面白かったtalkをあげて書き始めるときりがないけれど、 それにしても今回はreview talkがあって、この企画は成功していると思う。 その中でもCachazoの話は新鮮でとても面白かった。 Bern-Kosowarといった昔勉強した人の名前がたくさん出てきて、 弦理論もtechnologyとしてこんなに発展しているのか、と、 改めて嬉しかった。

個人的には、Polchinskiの話にとても期待していたのだけれど、 というのは、個人的な通信で彼らの論文がもうすぐ出ると聞いていて、 それがまだだったので彼のtalkでその話に触れるのかと思っていたからだ。 結果的には彼らの新しい話は入っておらずreviewだったので残念。 けれど、僕の話をたくさん引用してくださったので、 嬉しかった。トラペでは、「HT string」という名前もつけてくださった。 自分の名前のついた物理が人によってこういう風に使われたのは 多分初めてなので、小さいことかも知れないけど、むずむずと何だか嬉しい。

今日もガシガシと計算している。 うーん、結構うまく行っているかも知れない。 ADHMはCambridgeの人が喜ぶかな。 10月に行くまでにきっちり仕上げて、 あちらで発表させてもらえれば一番いいなと思っている。 Stringsではposter発表をさせてもらったが、 いろんな人と議論をさせてもらったりコメントをもらったり、 なかなか有意義だった。 非常に面白いと言ってくださる方もいらっしゃって、ほくほく。 ADHMも出来そうなので、そうするともっと評判が上がらないかな。 いやいや、そんなことを言う前に、計算計算。


7/8 (Fri)

もう長いこと日記を書いていなかった。まさに「月記」になってしまった。 6月からはToronto大学のFields Instituteにお邪魔させてもらっている。 ここはすこぶる居心地の良いところだ。美しい建物に部屋をもらって、 思う存分研究させてもらっている。毎日3時にはおやつとお茶が振る舞われるし、 研究所を突き抜ける螺旋階段の下にはコクセターが三歳から使っていたという ピアノが置かれている。 天井からは四次元多胞体の三次元投影が ぶら下がっている。すばらしい。しかも、快適だ。 知っている人は堀さん以外ほとんどいないんだけど、それにセミナーもほとんど ないけれど、それが逆に嬉しい。ゆっくり自分の研究ができるから。 MITではホントいろんなセミナーに追われていた感じがする。まあ学期中だった というだけかも知れないけど、でもこちらに来てあまりセミナーがない毎週を 過ごしていると、のんびりしていいなと感じる。平山や細道君、堀さんと 昼食に行ったり、ほんの少し議論したりで、その他の時間は、きれいな部屋で のんびり物理をやっている。

あっという間に来週はStringsだ。たくさん日本の人や友だちがやってくるので 楽しみだ。それで、Stringsに 寺嶋さんとの論文が 間に合ってそれも良かった。これ、自分で言うのも何だけど、 かなり面白い論文。内容は、monopoleのNahm構成法が、弦理論から導かれるという 話。このNahm構成法、Nahm方程式がD-stringのBPS方程式ということは良く知られて いるけれど、D1-D3系をどう見ればNahm構成法自体の物理的意味が分かるのか、 それは知られていなかった。これを、寺嶋さんのこないだの 論文のアイデアと、 K-matrixの手法を使って、完全にNahm構成法を導出出来た、という話。 面白いのは、Nahm構成に出てくるDirac operatorが、実はそのままtachyon profileに なっているという所。これが、物理的意味のエッセンスで、興味ある人は是非 ご覧下さいな。しかし、Nahm構成をD-braneのbrane democracyから出す、というのは、 タキオン凝縮を平野さんと研究し始めた5年前からの念願だったので、 もう嬉しいことこの上ない。あのときの疑問がこんな風に解決するとは! ほんと研究って面白いね。5年前に、確かサンタバーバラの生協の食堂のテラスで、 平野さんとの話をGomisさんに説明していたら、それに関連したことを質問されたの をはっきりと思い出す。懐かしいな。出来るといいな、できるといいな、 とずっと思っていた。寺嶋さんの論文(と、こないだのEllwoodの論文)で、 本質的な突破口が提供された。それにしても、あれが5年前で、 5年たってこんな風になるとは。。。で、もうすぐ「ADHMの導出」も発表予定。 これも、うまくいってます。やったね。ああ、やっぱしD-braneはすごい。

Stringsではこの話でposter発表させてもらうので、 もしこれを読んでいてStringsにいらっしゃる方がいれば、是非議論しましょう。 って、時間的にもそんな人はほとんどいないだろうな... けど、同じ日に酒井さんと杉本さんの論文、高柳君の論文、 そして土屋さんと高山君の論文が出ているとは! Stringsに間に合わせようとすると 今日が最後なので、考えることは同じだったのかな。 とにかく来週はStringsで、えーもうそんな時期かー、と感じること、しきり。 6月にFieldsに来て、初めはいきなり家族全員で風邪をこじらし、 またまた辛かったけど、なんとかバタバタしたいいろいろで今まで来てしまった。 7月が終わるまであと半月あまり、楽しく過ごしたいと思う。体調に気をつけて。

こちらに移ってすぐ、 Davidとの論文を出した。 この論文、完成に 色々紆余曲折が... その顛末を少し。内容は、cosmic stringを、通常良く研究 されているAbelian-Higgsじゃなくて、nonAbelianにしたら、reconnectionの 確率がどうなるかというのを調べたもの。その主張のポイントは--- ふつうはnonAbelianにしたら、cosmic string解のModuliが増えてしまって、 それであたかもstringは高次元空間を運動しているのと同じような感じになる。 その結果として、reconnectionは確率がゼロになってしまう。はずである。 けれど実は、このモデルの場合、確率は1のままなのである。つまりAbelian Higgsの時と同じままになってしまうのだ。(Moduli space近似が妥当な領域では。) これはかなり、ナイーブな期待と反しているので、びっくりである。 僕らは初め、確率はゼロだろうと思っていた。その方向で色々と計算してみて いた。それで、ある社会的問題が。。。というのは、四月にDavidがHarvardで セミナーしたんだけど、そのときは彼は確率はゼロかもしくは非常に小さい という考え方をそこで示したわけ。そしたらそのセミナーの詳しい内容が、 Lubosの有名な homepageに全部載ってしまって!!! これだからインターネット時代は怖い。しかも、そのhomepageはblogなので、 いろんな人がコメントを書けるんだけど、Polchinskiがそれにコメント (fast comment)をしちゃった。 しかもそれは、「Davidの言っていることに近いことは、既に私の講義録に 書いてある」という恐ろしいコメント。えー、まじでー?!と、彼の講義録を めくってみると、確かに小さい脚注で、少しだけ書いてある。あっちゃー、 まずいじゃん。。。。それで、インターネットにこういうことが 載ってしまったことに気づいた僕らは、早く論文を仕上げようと したんだけど、どうもこの方向はきちんと確かめるべきだと言うことになって、 それで色々調べたところ、何と、まったく結論はそうではないということが判明して しまった。まあ結果的にPolchinskiの脚注はナイーブすぎたわけで、 我々の論文でその反例を示せたわけだし、そう言う意味では良かった。 論文を出す直前にもまた、Polchinskiから、面白い結果だとのコメントも頂いたし。 Distlerのblogでも、光栄なことに詳しくレビューしてもらった上、 面白いとコメントしてもらった。 しかし、インターネット時代、恐ろしいですな.......


5/27 (Fri)

今日でとりあえずMITを離れることになっている。 5月は娘の風邪から始まって僕も妻も看病からそれをもらい、 もう大変な二週間を過ごしたせいで、 とても充実した研究生活を送れたとは言いがたいけれど、 今週体も良くなって毎日大学に来て普通に研究して、 ああやっぱり来て本当に良かったと思える。 今週はいろんな人にあって議論をした。 さっきは最後までのびのびになっていた Bartonとの議論も少しできたし、 Watiとも挨拶ができた。 彼と今少し研究の方向性が違うので、 結局議論はあまり出来なかったけど、 やっぱり彼がここにいるからMITに来たわけで、 それは十分に楽しむことができたと思う。 きっと、ここを離れてから、ああMITにいたらこういうことを Watiと議論できただろうなあと思うこと仕方がない。 まあそれはどこを離れるときも同じで、 駒場を少し離れるときもそういうことを切に感じたんだけど。 Hananyとかなりたくさん議論ができたのは本当に良かった。 とても親切な人でしかも気さくで、 こんな人と共通の興味でいつも議論ができるのは大変嬉しかった。 結局論文は1月に出したものだけれども、 そのあとその話でいろんなところでセミナーさせてもらって、 得るところもたくさんあり、そしてAmiとの議論へのfeedbackもあり、 大変ためになった。

話は変わるけど、このMITではTEALという面白い授業があって、 CGを多用して電磁気を教えている。このことで、たまたま 駒場の先生がこれに興味を持っていらっしゃったので、 TEALの開発者であるBelcher先生と水曜日に会談してきた。 非常に気さくなしかも面白い方で、voyger計画の メインスタッフであると後で聞いてびっくりしたけど、 大変楽しかった。どの大学でも、物理をどのように学生に教えるかということは 大きな問題で、それに大きく心を砕いている方がたくさんいる。 TEALのような面白い授業が東大でも出来ればと ナイーブには思うが、それは莫大な資金と莫大な人的投資が必要なわけで、 それは大きな問題をつくることになる。 そのことも改めて実感した対話だった。

木曜にはなんとScottに再会。 彼とはSanta Barbara時代のポスドク同期だけど、 彼今ここの物理学科でfacultyになっているので(!) それでこの機会にと思って前から少しコンタクトを取っていたわけ。 しかも、彼の専門は重力波なので、僕のやっている cosmic stringが観測されるのはおそらく重力波であろうと言われているから、 それがどの程度真剣に重力波の人達に捉えられているのかを知りに、 彼の部屋を訪ねた。そしたら!!!!!なんと、 サンタバーバラで僕がベッドとして使っていたあのカウチ「フトン」が、 彼の部屋にどーんと置いてあるじゃないですか!!! サンタバーバラを去るときに彼に譲ったあのカウチに、 なんとここで再会できるとは! 全く夢のような話だ。 そのソファーにゆったり腰掛けて、彼とサンタバーバラ時代の話に花が咲いた。 まあ本筋はそれではなくて、 重力波の人達の意見を聞いたんだけど、 僕がCaltechで少し聞いた話とは少し違うらしい。 重力波が観測されたとしてそれがどういう源から来ているかということを知るには amplitudeやtime dependenceそしてfrequencyなどの情報のtemplateが 必要になるわけだけれど、cosmic string originのはtemplate研究があまりない ということだったのだ。けれどScottによると、実はcosmic stringから来る 重力波バーストはtemplateが単純すぎて、詳しい解析の必要がないということ なわけ。それで、もちろん重力波解析の人はcosmic stringを解析の 可能性の一つとして常に考えている、ということも聞いた。 これはとても嬉しいニュースである。 しかし逆に、それがcosmic stringであるとした場合に、 tensionのestimationからstring理論がダメであることが示せるか、 という、彼からの厳しい質問。答えは、示せない、である。(彼には)残念。 弦理論のコンパクト化にはパラメーターが多すぎる。

風邪を引き込んで、もうろうとしてベッドの上でボーッとしている数日間に、 Davidとの議論で本質的な点が見えた。それで、今週はずっと論文を書いている。 というか、もう書き終わっている。後は出すだけなのだけど、 一応JoeとJacquesに反応を聞いてみようということで、彼らに少し 聞いてみている。それで返事が来たら出そうと言うことになった。 この話、出たらまたここに少し書いて宣伝するけど、 もっと早く終わっているはずだったのが、今までのびのびになってしまった。 それは結局初めの期待とは逆の結果が出たからだ。 これは面白い。この三ヶ月、Davidと議論をかなり密に行なったけど、 これはとてもとても面白かった。 結局100ページの計算ノートはそのことについてほとんど 一言も触れずに論ぶな出来ている。それは、その計算とは違う論理で結論が出て、 それはそれはまたおもしろい訳だけど、やっぱり僕のノートは100ページになる わけである。なにしか、面白い共同研究だった。 彼のいるCambridgeに10月から行くので、これまた楽しみである。 来週論文出せるかな。

今週寺嶋さんの大変面白い論文が出て、それを電話で色々と教えてもらった。 今議論を少し始めさせてもらっている。 これ、一月にある面白い論文があって、 それを読んですぐに思ったことをそのまま今まで放っておいたのが、 たまたま寺嶋さんも同じことを考えていたらしく、 それで一緒にやらせてもらうことになった、ということだ。 個人的にはとても面白いことだと思っている。 4、5年前にサンタバーバラで考えていたことが、 こんな風に実現するとは夢にも思っていなかった。 今週末寺嶋さんを訪ねることになっていて、 楽しみにしている。

ここでは大川さんとも色々議論や話をさせてもらったし、 磯さんとも少し話をさせてもらった。三ヶ月は本当にあっという間だ。 ここで会った人はたいてい今度のstringsで会えると分かっていても、、、、 さあ、ダメダメ気分を一新して、頑張ろう。


5/23 (Mon)

ダメだ。ダメダメである。 風邪を引き込んでしまって、この二週間何もできなかった。 ダメダメだ。

今日久しぶりに普通に大学に来た気がする。 しかも、来週からFields Instituteだ。 やれやれ。5月は充実させたかったけど。 ホント、ダメダメだ。病気の時、外国はつらい。

まあ、こういう時もあるよ。


5/9 (Mon)

帰ってきてモンモンとしているうちに一週間たってしまったが、 それはどうもこの所研究が思うように進まないからである。 娘が風邪を引いたりしてぐったり。しかしまあ研究が思うように進むなら それは研究じゃないのだから、のんびり構えてやることにしよう。

Caltechでのセミナーは大変面白かった。 大栗さんに非常に良いコメントをたくさん頂いて、 セミナー発表者冥利につきた。問題点なども良く把握できて、 ホントCaltechまではるばるセミナーさせてもらいに来た甲斐があった。 2泊3日で西海岸は結構大変だということも分かったけど、 それ以上に得るものがたくさんあった三日間だった。

そうこうしていると、来週はBrownでセミナーをすることになってしまった。 それで少し頼み込んで、BSFTの方の話をさせてもらうことになった。 先方は、今やっているDavidとの話を希望されていただのが、 そちらの方は来週にどうなっているかまだ自信がないので、 それは議論させてもらうということだけに。 BSFTの話は、Jevickiさんにも聞いてもらいたかったので、 話ができて嬉しい。

先週はTseytlinがやってきてセミナー。昼食を買いに行くときに 少しだけ質問して議論させてもらった。しかししり切れとんぼになってしまったので、 メールでも書いてみようかと迷っている。何故迷っているかというと、 質問を始めたものの、自分の分かっていないところが色々あることが分かって、 そう言うことは勉強してから質問するのが筋のような気がしてきたからだ。 気負いすぎかな。


4/28 (Thr)

飛行機の中で結局計算していたので、6時間半のフライトがあっという間だった。 それにしても、フライトの終わるまぎわになってようやく解釈が進んだというのは 嬉しいことだ。

ほぼ4年ぶりにカルフォルニアに降りたって、 もう懐かしいやら。LAは、懐かしい匂いに包まれていた。 Caltechに到着するも、感慨ひとしお。 四年前にここで、必至になってセミナーしたのをありありと思い出した。 あのときは生きていくのも必至だったなあ。 セミナー前に緊張しすぎて、Caltechのこの中庭のこのベンチに座って 両手を揉みほぐしていたのを、つい昨日のように思い出した。 またここに来ることができてホントに光栄である。 明日のセミナー頑張ろう。

大栗さんにお会いして、固体の中の超流動(supersolid)という コロキウムに誘われて出席する。面白かった。このたびのCaltech訪問で visitor deskとして使わせてもらっているのは、何とゲルマンの 使っていた机らしい。座っているだけで賢くなりそうだ(笑)。 Andreiに会って一頻り議論する。彼はなかなか面白い視点を持っているなあと、 サンタバーバラ時代を思い出した。変わってないなあ、Andrei。

早くねようと思っていたけど、Davidからのメールの内容が頭の中を ぐるぐる回ってどうも寝れそうもない。時差ぼけのままBostonに帰ろうと 思っていたのに......


4/27 (Wed)

日記を書くのをサボっていたのは、色々と忙しくて……… そうこうしているうちに、明日にはCaltechに発つことになった。 明後日はセミナーだ。トラペもようやく出来たし、 あとは飛行機に乗るだけ。

先週日本の友人が、計算ノートをファックスで送ってきてくれた。 とても面白そうだ。そのノートをいろんな向きから眺めている。(笑) 四次元以上だと、想像力をたくましくしないとな。

今日はDavidから電話がかかってきた。 やっぱ直接話すのが早くて良い。 計算は週末にかなり進んで、 それで結局最後のconsistencyもcheckできたけど、 しかしそのあとが・・・ どうないしたもんかな。 飛行機の中で色々と考えてみるかな。

うー。


4/19 (Tue)

昨日の夜、ようやく、計算を簡略化する極限を発見したので、 早速ベッドから飛び起きて試してみる。どうやらこの極限はうまく働きそうだ。 そう思ってやっていると、どうやってもU(1)極限がconsistentじゃない。 それで、Mathematicaに一番最初のところから少し簡単化してつっこんでやった。 そしたら、何と自分のノートの計算間違いが発覚。 しかも2ページ目やん!ああ、そりゃ30ページ計算しても 合うわけないわな・・・ それで、そこを直してやってみると、 U(1) reductionが完全に合った。ふぅぅぅぅ。 それで、今朝はDavidにtex noteを書いて送ってみる。 ようやく先週から重い腰をあげて始めた面倒な計算が一息ついた。 これで少し、進むかな。

今日はなんとヒッチンの講義があったので行ってみるも、 セミナー室を間違えて講義の始めの辺りを聞き逃したからか、 良く分からなかった。むぅ。カラビヤウの一般化ってすごそうだけど、 弦理論ではコンパクトじゃないとあんまり使えないのかな。

このところ、妙に暑い。確か先週雪が降ったはずなのに、今日は 25度くらいまで上がって、研究室は冷房が効いている。 体がおかしくなりそうだ。7時頃外を散歩していると、 どうやら時々行っている近くのドーナツやさんの上の階に、 Clay Mathematics Instituteがあるのを発見。 すんげぇ、こんな近所にこの研究所あったの?!としばし呆然。 来週はここで'tHooftがセミナーするはずである。 いつも通っていたドーナツ屋が、すごく高級に見えてきた。

来週はCaltechでセミナーさせてもらえることになっている。 行くぞー。おっと、その前に、きちんとトラペ書かなくちゃ。


4/15 (Fri)

水曜日はWatiと久しぶりにゆっくり議論することができた。 午後に喫茶店でコーヒーを飲みながらで、楽しかった。 僕のアイデアは良く分かってくれたようだった。 彼のsuggestionは面白そうだ。 しかし本質的な彼のポイントは、 「そしたらあとは手を動かすだけじゃないの?」 ということである。全くその通りだ。 あとは手を動かせば面白い結果になることはほとんど疑い無い。 けど、なんでかいろんなプロジェクトに手を動かしていて、 新しいアイデアに手をつけている余裕がない。 何でだろう。ふむ。 多分原因は、Davidとのnonabelian cosmic stringの話が ちょっとこんがらがってしまって面倒な計算をやっているということ、 それと、Johnとの年末以来のプロジェクトが復活して色々計算をやっていること、 そして、最近嬉しくもいろんなところから原稿執筆を依頼されて それで日本語の文章をたくさん書いていること、 これらの相乗効果だ。 こういうのは一つ一つ片付けていかないといけないんだけど、 どうもいろんなことを一度にできる人間ではないので、よけい効率が 落ちていたりするかもしれない。

こないだErasmoが持ってきてくれたWatiとの新しい論文で、 どうもすっきりと理解できない点があるので、それも悩みの種だ。 まだ論文が出ていないので何ともここに書けないが、 すっきり理解したいものだ。 水曜に彼と散々議論したんだけど、 そのへんは彼もまだ手がついていない領域らしい。 簡単な例で色々分かるかも知れないとは思うけれど、 しかし一般的に示さないと意味がないかも知れないし。 Tseytlinがgauge場の場合に示しているというのを彼が教えてくれたので 少し見てみよう。 もう少し手を動かしたら何か分かるだろうか。

Johnとの議論はかなりノートがたまってきたけれど、 面白い計算方法があるというので始めた話なので、 どういう方向に焦点を絞ってこれをまとめていくかが謎だ。 少し彼と相談してみよう。やっぱ重力かな。


4/12 (Tue)

昨日はAmiの誘いで、DEDM lunchに参加する。DEDMはDark energy dark matter の略で、dark sideの人達が集まって最近の動向を議論する場所らしい。 Amiによると、cosmic stringに興味を持っている人もいるかも知れないから 是非行こうよということだったんだけど、行ってみるとあんまりそうで はない感じだった。むしろ、cosmological parameterを決める観測手段として 最近NASAがぶちまけているやり方には諸手をあげて賛成できない、 という意見表明が多かった。しかし、観測の話を久しぶりに聞くのは とても面白い。ある人の話では、数日以内に超新星爆発が起こるだろう ということだ。宇宙定数がnonzeroで存在するかどうかというのは もちろん理論的に非常に重要なステートメントなので、 それがどのように観測から決まってくるかはきちんとフォローしないと いけないんだけど、今日の話だけではまだ良く分からなかった。 どうやら、超新星爆発よりは、高エネルギーガンマ線バーストの 観測の方がrelevantに効いているように見える。

昨日と今日と、ずっと計算をやっているのだが、 どうもどこかで計算間違えをしているらしい。 そう思って見直してみるんだけど、 どうも計算間違いが見つからない。 むー。ヒョッとして考え方に間違いがあるのだろうか。 U(1)へのreductionがconsistentになっていないとこの先の 計算が信用できないので、ここで止まっている。 どうしたもんだろう。ちょっと散歩でもしてrefleshして、 計算をまた見直してみるしかないかな。

Erasmoが、Watiとの新しい論文を持ってきてくれた。 もうすぐ投稿するらしい。 寺嶋さんとの話が役に立っているようで嬉しかった。 CSFTとこんな風にrolling tachyonがconsistentになるとは、 面白い話である。しかし、 寺嶋さんとやっていたときの、field redefinitionの 問題はここでは少し触れてあるだけで問題にしていない。 onshellを見ているだけだからなー。


4/8 (Fri)

昨日は朝から色々とアイデアを試す。しかしだめだった。うまく行くかなあ と思っていたこないだのやり方も、良く考えたら全然だめだった。 夕方からHarvardへ行ってSilversteinのtalkを聞く。 こないだのよりはずいぶんとdetailも入っていたけれど、 結局、tachyonが凝縮すればmass gapが出来るだろう、 という以上のことは言っていないような気がする。 きちんと論文を読まないといけない。 Nimaが面白いことを言っていた。彼の質問は、 もしtopology changeが起きて、内部空間が二つのRiemann面に 分裂してしまったら、有効作用ではgravitonが二つ出るのか? そりゃ変じゃないか? というものだったと思うけど、 これは僕に、昔やっていた非可換の手法による標準模型の構築の話 を思い出させた。つながっていない内部空間、例えば二点とか、 そういうのの上でconnectionを定義してhiggs場を得るというやつだ。 まあだいぶ違うけど。 結局Allanの答えは、内部空間の一部が小さくなってしまっているので そこから無限個のwinding modeが降りてきてしまって、 低エネルギー有効作用が次元が変ってしまい破綻する、 という面白いものだった。Evaはこれを「新しいunification」 と言って笑っていたが、はてさてどんな応用があるんだろう。 面白い物理であることには間違いない。

さて、今日は朝からボンヤリとDavidとぶち当たっている問題について考える。 これ、二週間以上わからないままである。と思っていたら、今日 面白い解決法が思い浮かんで、計算が出来てしまった。 これ、仮定のところが間違っていなければ、面白い結果だと思うんだけど、 果たしてこれで良いのかはちょっと自信が持てない。 それで、午後一杯かかって計算をやってTexノート書き、 Davidに送った。彼がどういう反応をするか楽しみだ。 まあ、近似を超えることをやっているので、 どのようにこの仮定を証明できるかというと、それは難しい。 けれど、非常に尤もらしいアプローチであることは確信ができる。 彼もそう思ってくれると良いのだけれど。

今日のlunch clubは、BrianがDimerの話をした。 これ、まもなく論文が出るAm達の話で、 非常に面白そうだ。Brane Tilingという言葉を創始して、 それによりいろんなAdS/CFTのQuiverの例が大量につくれるんだという。 非常に面白く魅力的な話だった。 内容もそうだが、Brianのpresentationの能力の高さには驚いた。 面白いエッセンスのみを凝縮して、黒板で人々を引き付ける、 そんな発表を僕もやってみたいと思った。 論文はもうすぐ出るらしい。Dimerブームがやってくるか?!


4/6 (Wed)

MITでのセミナーを終えた。少し時間を超過してしまって申し訳なかったけど、 いろんな質問をもらって幸せだった。いろんな人にコメントをもらえて、 面白いと言ってくれた人も何人かいたし、とても満足だ。 しかしその一方、 やはりこのDavidとの計算を何とかしないといけないと感じた。

思えばMITでセミナーしたのはもう二年前になる。 あのときが非常に懐かしく思い出された。 ここでセミナー出来て光栄です、と切り出したのを覚えている。 今回ももちろん光栄だけど、今日は、 ここにもうしばらくいるのでぜひみなさん議論しましょう、と言って始めた。

今週からAmiと時々議論をしている。 結局Aspenで会って以来ずっと会っていなかったので、 メールでの議論も疲れたし、会えて色々議論ができてほんとによかった。 一月の論文をJHEPに投稿した。 違う分野の論文を書いたときは、間違いがないか慎重にならないといけないので、 それもあって少し遅くなった。 もうこの論文の話題で今日が5つ目のセミナーなので、 ずいぶんいろんな人のフィルターがかかって、もう安全なのではと思う。 昨日投稿したら、今JHEPはメンテナンス中で 投稿しても受け付けられないらしい。実質レフェリーに回されるのは 来週辺りのようだ。まあもう急がないので、 ゆっくり、acceptされるのを待とうと思う。

今日はPappalardo lunchというのに誘われて行ってみた。 このお金持ちの人の名前がついたfellowshipがあるらしくて、 その人達とfaculty memberとseminar speakerがlunchに 参加している。そこで僕は初めて、LIGOのメインの実験屋さんが MITにいるということを教えてもらった。 せっかくastroの方にScottがいるので、 今度訪ねていって色々聞いてみようかと思う。 いくらやってもcosmologyは素人裸足なので、 実際にやっている人に聞くのが一番話が早い。

seminar speakerなので晩御飯に誘ってもらった。 楽しみだ。


3/31 (Thu)

今日はlandscapeの日だったが、期待以上に面白かった。 Douglasの話はいつものようにあんまり聞く気がしない。 が、あんまり期待していなかった、その次のDienesのtalk は非常に楽しかった。場の理論の模型のパラメータ空間を いろいろ見てやることで、場の理論でのlandscapeを 考えるという話。このcoupling spaceのmeasureが discretizeされたflux vacuaの話から得られるということを理解して、 僕はたいそう満足した。初めて、landscapeのmeasureが どういう意味を持っているかわかったからだ。 しかし、低エネルギーでmatter contentが変わってしまうような場合は このmeasureをどう考えてよいかはまだ意味がよくわからない。 それと、Dienesが言っていたようなIRでcouplingがfixed pointに 行くという話は、実際現象論で使われているはずだ。 現象論の友人が昔説明してくれていたのを思い出した。

背景をwatari君に少し教えてもらったりしてたんだけど、 やっぱりlandscapeは仮定のところでまだ僕にはしっくり来ない点が多い。 どちらかというと、Brandenbergerみたいな考え方のほうが しっくりくる。何で6次元だけコンパクトか。

今日最後のセッションは、Discussion sessionで、これはたいそう面白かった。 壇上に上ったのは、H.Verlindeがmoderatorで、 SmoilinとAcharya, Arkani-HamedとKachruだった。 これらの人々の間の議論がとても面白かった。 基本的にKachruは、Aspenで彼が話した時の立場と変わっていなかった。 あのような考え方で進めていくというのはよくわかる。 現象論的なモデルbuildingと同じだということだ。 非常に広い場の理論の理論空間の中から、landscapeは その一部をconsistencyとして切り出せているわけだから、 それで既にpredictiveであるという立場だ。 よくわかる。けど、 これに確率という話がどう入ってくるかは全くわからない。 その辺は理解できなかった。 一方、Nimaの話は非常に面白かった。 彼は基本的にlandscapeをmotivationとして使っていて、 僕の理解が正しければ、split susyというのは、 まず宇宙項が小さいのはfine tuningをしなければいけない証拠であり それを認めればsusy breaking scaleが別に大きくても higgs massへの補正のfine tuneなんて別に気にするほどのオーダーではない という議論である。この辺にlandscapeの感触を、 naturalnessを捨てる(?!)のに使っているわけだ。 landscapeという理解しがたい代物を、自分なりに解釈してそれで しかも面白いモデルを提唱できるのだから、Nimaという 人はほんとにすごい人である。

Mark Jacksonと少し話をしたけど、 僕らの計算を、彼らのJackson-Jones-Polchinskiのより正確な計算だと言ってくれた。 彼もその辺りの計算を続行しているらしい。論文を見るのが楽しみだ。 彼のshort talkの中で、僕らの論文をbeautiful paperと言ってくれたのが 嬉しかった。

しかし、今日は予想以上に面白かった。 この研究会に来て良かった、と思う。 さあ、明日は午前だけだし、来週からMITに戻って仕事だ。


3/30 (Wed)

Brandenbergerの話はまとまっていてたいそう面白かった。 それでトラペをコピーさせてもらえればと思ったんだけど なかなかブラブラしている時を見つけられないので、だめかもねえ。 人と議論しているところを邪魔しちゃ悪いし。 お昼は思いきってMyersと一緒に食べてみた。 なかなか気さくな方で、昨日の僕の話の重要なところを質問してくれた。 そうですよ、そこなんですよ。 お昼は適当にサボってPiljinと議論したり、 Davidにメール書いたり、そんなこんなで今日はゆっくりしている。 明日はLandscapeの日なので、discussion sessionもあることだし かなりexcitinになるだろうから、今日はのんびりムード。

そう思っていたら、Lubos Motlのホームページに昨日のDavidの セミナーの様子が詳しく書かれてしまっているではないか! うっわー、これ論文の言いたいことほとんど全部書いてあるやん・・・・ しかもそれにPolchinskiが既にコメントを二つもしていて、 それが思った通りのレスになってるやん・・・・ というわけで、この論文早く仕上げなくてはいけなくなってしまった。 けどなー、そう言ってもそんなすぐに書いて出来るものでもないしな。 困った困った。情報が重要になっている今の世の中で、 論文が出る前にこんなことになることがあるとは。参った。

参ったと言ってばかりじゃなくて少し計算しよう。 しかしこんな風に焦らされるのって、かなわないな。

こないだから、「どこどこでお会いしましたね」って声をかけてくださる方 が何人か。しかし、覚えてないんだなー!あれ、そうだっけ・・・って、 すごい失礼なんだけど、なかなか記憶をたどり寄せられない。 それで、その人にどこであったとか少し説明してもらうと、やっと思い出す。 こんなことあんまりないんだけど、やっぱり外国の研究会で少しだけ会った人とか なかなか全員覚えてないんだよね。first nameをきちんと覚えるのがこちらの習慣 だから、気をつけないと。


3/29 (Tue)

Perimeter研究所の、string phenomenology研究会にこの一週間出席している。 今日は僕の発表が終わった。ちょっとほっとしていて、これからは 少しゆったりと研究会に出席できる。 今日一日はcosmology関係のtalkが重なっている日だった。 僕のtalkはちょうどHenry Tyeの次で、なんとBrian Greenが座長という光栄な 環境。いつもの通り僕はかなり緊張して話をして、 しかも僕の英語はあのとおりのレベルなので、はっきり言って僕の話がどの程度 伝わったのか不安だった。話が終わると光栄にもJohn Schwarzが質問してくれた。 質問内容は、reconnectionのあと三番目のstringが残るようなstring network formationの場合にもこの計算手法は使えるかということだったんだけど、それ は確かに使えるので説明しておいた。これはWatiとやった話に詳しく書いてある んだけど、そのことも言及しておけばよかったと思う。Brian Greenも質問をく れた。話の後はGary Shiuが、よい話だったといってくれたけど、それはお世辞 かどうかはわからない。お昼にもZagermannやRozaliやいろんな人と議論をする。 結構nonabelianのことに興味を持っている人が多いらしく、楽しく議論した。

昨日からたくさんの人にあってとても楽しい時間をすごしている。Piljin にも久しぶりに会ってずいぶん議論している。Garyとも話ができて楽しい。 堀さんにも久しぶりにお会いして、話をさせていただいた。 タキオン凝縮をやっていて、こんなに世界が広がるとは思っても見なかった。 いろんな人と知り合えてそれで議論ができるのは、物理の醍醐味だと思う。 今日はOliverに久しぶりに会って、日常のことをいろいろと話す。 彼のいるIASに一度お邪魔してみたい。それと、四年ぶりくらいに、親友のAlexに 会った。彼は今ここでポジションを持っていて、ホント懐かしくて、 時間を忘れて話してしまった。彼とはずいぶん親しくしていたので、 また会えてとてもうれしい。こんなところで会うとは、 サンタバーバラでは全然予想だにしていなかったけど。 そうそう、ここにくる直前にトロントで平山に久しぶりに会って、 楽しく話せた。

ところでこのPerimeter研究所は予想以上にリッチだ。 毎日豪華な晩御飯を食べている。ナイフフォークでデザートもついていて しかも飲み物もサーブしてもらえる。 すごいのは建物もすごくて、高所恐怖症の僕なんかは とても部屋で研究できそうもないようなガラス張りである。 あらゆるところに議論する環境が整っていて、黒板やソファはもちろんのこと。 さらに、ビリヤード台もある。僕が見つけただけで複数ある。 さらに、サウナがある。こりゃどんな研究所や、と 突っ込みたくなるくらいだ。まあすごい研究所なのだ。 しかし難点を一ついうと、Torontoからずいぶん離れていることだ。 バスで一時間以上はかかる。僕ら参加者は近くのホテルなんだけど、 それでもバスで15分かかるので、朝と夜のそのバスを逃すとホテルに帰れなくな る。それで、研究会をサボれない仕組みになっているわけだ(笑)。 まあサボったとしても何も観光するところもないので、結局 研究所でブラブラするだけなんだろうと思うけど。

明日からは知っている人と議論したり、ちょっと計算を進めたり、研究所の中を うろうろ探検したり、ゆっくりしてみよう。木曜日はlandscapeの日なのでそれ は議論を聞いてみたいけど、明日は少しtalkはサボろうかな。


3/26 (Sat)

そうこうしている間に、Perimeter Instituteでの研究会が始まってしまう。 明日は朝から飛行機でカナダに向かう予定だ。 幸運にもtalkをさせてもらえることになったのはいいのだけれど、 参加者名簿を見て結構ビビっている。 なんでかというと、まあ僕は「ストリング現象論屋」と自分を呼ぶには 恐れ多いからである。単にcosmic stringのsoliton的な性質を 楽しんでいるだけで、それ以上ではない感じがするからだ。 もちろん現象論的なmotivationはかなりあってやっているんだけど、 cosmic stringのことどれくらい知っているんですか、と 聞かれたら、やっぱりあんまり知りませんとしか言えない。 Vilenkin-Shellardの教科書レベル全部分かってますかと言われたら、全然。 まあけどせっかく呼んでいただいたので、 自分の思うところと分かっていることを楽しそうに喋ってこようと思う。 Strings2003で話したときに、失敗したと思うのは、 声が小さかったことである。今度は大きい声で楽しそうに喋ろうと決めた。

この一週間は色々あったけどあんまり日記に書かなかったのは、 単にサボっていただけである。 木曜日は、高柳君、山口君、こーり君、そしてこーり君の知り合いの 松村君という人と、楽しく飲んだ。ひっさしぶりに飲んだのでとても楽しかった。 また集まるのを楽しみにしている。 今週はWatiとも少し議論ができたし、Borisとも色々と string inflationのことで話ができた。 なかなか良い感じだ。

毎日のようにDavidと会って議論していたが、 彼は来週一週間でCambridgeに帰ってしまうのと、 僕は来週一週間PIに行っているので、 結局昨日が最後になってしまった。 しかし問題点はきっちりと分かったし、 これからどういうことをしたら良いかという点も見えたので、 それが難しそうだということも分かってきたし、 ここいらですこし短い論文を書こうかという話になった。 まあ僕はもう少し詰めれたらよいのではとも思ったけど、 詰めて分かる性質のものでもない感じもするので、 この判断は良いかもしれない。 書いているうちに、そちらの方も考えつつやると言うことなので、 気が変わるかも知れない。 しかしDavidと論文が書けて嬉しい。 cosmic string業界の人達がどう反応するかが楽しみだ。 ちなみに、僕がPerimeterで話をするのは誕生日29日だけど、 その日のあたりにDavidがHarvardでその話をするし、 しかもAmiがその日にBrownでその話をすることになっている。 偶然だけど面白い。

さあ研究会楽しんでこよう。カナダも初めてだし、 会いたい人たくさんに会えそうでそれも楽しみ。


3/22 (Tue)

今週はCTPはstring breakということになっていて、 一週間セミナーも何もない。かといって人々が来ていないわけでもなく、 今日は昼食に磯さんとWilczekも加わって、結構たくさんの人数だった。 こないだの'tHooftの話をどう思ったかとか色々楽しい話題が出たけれど、 ふんふんそうだなーと思っているうちにやっぱりほとんど発言せずに 昼食が終わってしまう。もう少し人数が少ないと喋りやすいんだけど、 まあいっか。

Davidと議論しにHarvardへ。実はHarvardに近いところに住んでいるので、 帰り道と言えばそうである。しかし、初めてあの美しいJeffersonの 黒板で議論した。あの大きな黒板を使っているだけで、 自分が何だかすごい経験をしているように思えるのは単なる錯覚だろうか? その後、大川さんに存在を教えてもらった数学教室のセミナーに出る。 セミナーはtopological stringのopen化の話で、 SingerとYauが座っているだけでおおすごいなと思う。 しかし内容は僕にはからきし理解がついていかなかった。 Gromov-Witten、Gopakumar-Vafaと言われて全然ピンと来ないようでは 弦理論研究者として失格だろうか?

Perimeterのトラペが出来上がった。30分でどこまで話せるか謎だが、 図が多いのでトラペ15枚でも何とかなるような気がしている。 やっぱり発表練習一回しておいたほうがいいな。 毎日、朝から晩まで好きなだけ研究している。 何て幸せなことだろう!

実は今日は、僕の人生最初のpublicationが、英訳されてアメリカで出版された 記念すべき日である。翻訳を担当された方から今日献本が届いた。 本の名は、その名も 「Japan and Sherlock Holmes」である。 僕の人生最初の出版物は大学生の時で、 『シャーロックホームズ紀要』という雑誌に載っている論文である。 これを面白いと思ってくださった方がいて、 このたび日本のホームズ研究をアメリカのホームズ愛好家の倶楽部(歴史ある Baker Street Irregulars)が出版することになり僕の論文を光栄にもそこに 含んでくださったというわけだ。 他の論文を見るにつけ、素晴らしい方達の名が上がっているので、 僕がそれに含まれているのはとても光栄である。 今日はシャーロキアンとしてついにアメリカでデビューしてしまった。 翻訳された方々にくれぐれもお礼申し上げたい。

浮かれていたせいかも知れないが、sg-lに間違ってメールを出してしまった。 皆様ご迷惑お掛けしました・・・・


3/19 (Sat)

今週は娘が風邪を引いて、それが移って僕も妻も体調を崩し、 大変だった。火曜日にWatiの新しい話のセミナーを聞いて、 ホント物理はそれだけしかしていない気がする。早く復帰せねば。 Watiの話は、最後の点がかなり面白かったが、 自分なりに解釈してみようと思ってそのまま風邪を引いてほったらかしである。 少し考えてみよう。

昨日今日と、Colemanに捧げる研究会に参加。 これが、物凄い顔触れで、ノーベル賞受賞者がずらずらである。 講演室の扉をあけて後ろの人に扉を「渡す」と それがGell-Mannだったり、ふと座ったら前に座っているのがWittenだったり、 はー、1960年70年という時代はこのような人達が物理をつくってきたのか、 ということがまざまざと感じられる研究会だった。 思い出話も面白く、どのような人間関係かもにじみ出ていて楽しかった。 Colemanさんが早く復活されることを、参加者の一人として切に思う。 偉大な先人達の話に聞き入って恍惚としていると、 ふと我に帰る一言があった。 Wittenの話が終わり、最後の質問に対して彼が答えた中に、 「日本人二人の書いた、QCDを重力で記述する論文がある」 というのがあった。これは間違いなく酒井さんと杉本さんの論文のことだ。 Wittenが杉本さんのことに言及するのを聞いたのは二回目である。 世界に知られる研究をするというのは本当に素晴らしい。 僕も本当に良い研究を志してこの一年間在外研究をしているのだというのを、 ぐぐっと思い出した。

体調も戻ってきたし、Davidも現れて今日挨拶したので、 研究モードに戻りたい。先週本屋でPenroseの新しい面白い本を入手したので、 今晩は少し手にとって読んでみよう。 こんな本を死ぬまでに一回書いてみたいもんだ、 とつくづく思わせる本である。


3/11 (Fri)

昨日のVafaのセミナーは物性の研究室向だったので、 かなりtechnicalityを省いた物理そのものの話だった。 topological stringと普通のstringを区別しないセミナーだったのだけれど、 Vafaがどんな情熱でどのようなことを考えたいと思っているのかの 方向性が少し見えた気がして、とても勉強になった。

Tyeのセミナーは想像していたよりはずいぶん一般向の感じがして、 少し拍子抜けだったのだけれど、 どうやらもうすぐ論文が出るらしいのでそれを楽しみにしておこう。 彼の言っていることが全部本当ならとてもすごいことが数年のうちに起こるわけだが、 まあそれは期待と言うわけで、LIGO2がどんな結果を出すか、 僕は初めて観測の結果を心待ちにしている感じがする。 Harvardで久しぶりに高柳君や山口君に会った。 せっかくHarvardに近いので、 また食事でもできればと思っているのだけれど。 Harvardには大栗さんがいらっしゃっていた。 VafaとMaldacenaとRandallと議論しているところを見て、 おおすごいなーと思うばかり。 Harvardは研究室を改装したせいもあってか、 なんともゴージャスなところである。

そう言えば今日Davidからメールが来て、 何と彼は来週末からHarvardに滞在するらしい。 こりゃ好都合だ。話しながら計算するのが一番速いに決まっているので、 彼と時間を共有できるのはとても嬉しい。 ただその次の週末からは僕はPerimeterに行くので 一週間しかない。彼が来るまでにもう少し計算を進めておく必要がある。 今日は色々と計算をやってみた。 久しぶりに手を自由に動かせた感じがしてとても嬉しい。

Perimeterの研究会で話をしてくれないかと誘いが来た。 もちろん大変光栄なお誘いである。 どんな人達と議論できるのかとても楽しみだ。

外を見ると大雪だ。週末どうしたもんだろう。


3/10 (Thr)

さっきMaldacenaとすれ違った。

それというのも、先週末からMITにやってきているのだ。 大変ありがたいことに、この3月4日から在外研究を一年間させて 頂けることになって、まずこのMITのCTPにお邪魔している。 出発するまでは鬼のように忙しい毎日で、 ほんと日記を更新する暇も全く無いくらいだったけど、 何とか、東工大、駒場、本郷でセミナーをさせて頂き いろんな方と挨拶して、引っ越しも済ませ、 ようやくここBostonに落ち着いてきた。

部屋は4階で、Borisと一緒の部屋になりとても嬉しい。 サンタバーバラにいたときもドイツ人と一緒の部屋で、 親友にドイツ人がいるせいか心が和む。 Borisとうまくやっていければと思う。 昨日は早速Maldacenaのセミナーがあった。 ゴージャスである。その一言以外に説明は何も要らないだろう。 内容は非可換と絡んでいて面白かったが、 これを非可換パラメーターが定数でない場合への拡張と見て 非可換の話に応用できれば面白いだろうと思う。 しかし時差ぼけが治っていなくて、 正直なところセミナーの一番最後の辺りはボーッとしてしまった。 悔しいくらいだ。早く時差ぼけを治さなくてはいけない。

こちらに来てまだまともに物理ができていない。 昨日は少しだけお昼にJoeと話ができて良かった。 Kutasovの話がもう少し理解できればいいんだけど。 彼がもし興味を持っているようだったら議論してみよう。 大川さんのとても面白そうな論文が出ていたので、 物理モードに戻るきっかけとして少し読んでみたいと思った。 高橋さんの話とつながっているところが大変素晴らしい。

今日はHarvardでVafaとTyeのセミナーがある。 これまたゴージャスだ。住んでいるところが Harvardの物理があるところから歩いて五分のところなので、 実はこちらの方がMITより近い。 やっぱり大学に近いというのはとても重要だ。 東京に帰ったら絶対大学の近くに住もうと思う。

この在外日記はこれまたどの程度更新できるのか分からないけれど、 少し時間に余裕もできたことだし、 それに前にサンタバーバラで日記を書いていたときのことが物凄く思い出されて、 これまたどんどん書いてしまいそうな気もする。 今日はとにかく、たまっていたメールの返事を何とかしないと行けないけど、 その前にその返事を書くために、送ってもらったノートや論文を たくさん読まないといけない。むー。 やるぞおおぉぉぉっと。

今月末にはPerimeterの研究会に招待されたので、 ちょっと遠いのが気になるけど行ってみようと思う。 それまでにcosmic stringの話をもっと深めておかなくては。 今日はTyeのセミナーでその関係の話が聞けるので、 彼とも議論してみたい。


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