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研究実績概要(2012年度)

今年度は、インフレーション宇宙からの曲率揺らぎの非線形効果に関して大きな成果をいくつも得た。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

佐々木は、複数スカラー場の一つが重い質量を持つ場合の有効理論を第一原理計算によって検証し確かめるとともに、有効理論で無視されていた新たな相互作用項の重要性を指摘した。また、重力と非極小相互作用する複数のスカラー場がある場合の曲率揺らぎの共形変換依存性を揺らぎの2次まで明らかにし、その最終的な値が再加熱機構に大きく依存することを示した。さらに、スカラー場がひとつの場合には局所的非ガウス性は無視できるという「定理」に対して、具体的反例を与えて大きな局所的非ガウス性が生成され得ることを示した。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

田中は、インフレーション宇宙で一般の真空を選ぶと赤外発散が生じるが、通常用いられるユークリディアン真空を選ぶと、赤外発散も同時に回避されているということの証明に成功した。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

高橋は、ヒルトップ・カーバトンモデルが観測されているスペクトル因子を自然に説明することを示し、そのカーバトンの候補としてモジュライ場が有力であることを示した。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

山口は、超対称化したDBIインフレーションモデルでは、超対称性のない場合と異なり音速がほぼ光速度に なること、また観測可能な大きさのテンソル揺らぎが生成出来る事を示した。

向山は、インフレーション中に磁場を生成するシナリオに対し、インフレーションスケールにモデルに依存しない上限を与えた。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

松原は、バイアスを取り扱うことのできる新しい宇宙論的摂動論に基づき、初期非ガウス性がもたらすパワースペクトルへの影響について調べた。それによってこれまでに知られている近似的な方法に比べて、より精度のよい予言ができるようになった。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

また、ブラックホールや拡張された重力理論、高次元重力理論に関しても、いくつもの重要な成果を得た。

千葉は、二体のブラックホールの「影」の構造を解析的に求め、影の形状はブラックホールの間隔や質量に依存することが分かった。また、新しい超新星の最新の観測データやバリオン音響振動の観測データを用いて、幅広いクラスのスカラー場ダークエネルギーモデルに対する観測的制限を与えた。非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

石原は、コンパクトな余剰次元をもつ高次元ブラックホールの厳密解を求め、特に、多体ブラックホールに関する幾何学的な構造を解析した。また、5次元時空において閉じた定常なNambu-Gotoストリングの古典的厳密解を求めた。これは、4次元時空では存在しない高次元時空特有の解である。

最近、加速膨張宇宙を説明するような有力な重力理論として二重計量重力理論が盛んに究されている。早田は、そのような理論が現在の構造形成を説明するインフレーションシナリオと矛盾しないことを明らかにした。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

向山は、非線形有質量重力理論において、一様等方解に、非線形レベルでの新しい不安定を発見した。そして、その帰結として、新たな加速膨張宇宙解を構成した。また、ガンマ線バーストからのガンマ線の偏光観測により、CPTの破れに対する強い制限を得た。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

白水は、超弦理論は高次元時空で定式化されている。そこで、近似的に成り立つと考えられる漸近的に平坦な高次元時空の角運動量の定式化と代数を調べ, 遠方でポアンカレ代数が成立していることを示すことに任意次元の場合に成功した。また、コンパクト化した空間をもつ高次元時空における帯電したブラックホールの近似解を構成した。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

山本は、一般化されたスカラーテンソル重力模型の理論予言と宇宙論的観測との整合性に関する研究を行い、理論模型に対する制限を得た。さらに、非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

辻川は、最も一般的なスカラーテンソル理論に基づくインフレーションシナリオにおいて,生成される曲率揺らぎの非ガウス性とその形状に関して明らかにした。また、スカラー場の微分項が重力と結合している模型やガリレオン模型への応用、超重力理論に基づくF(R)インフレーション模型の構築、クインテッセンス模型に対する最新の観測からの制限に関する研究を行った。 非ガウス性の波数依存性に特徴的な振動が現れることを明らかにした。

以上の成果を踏まえて、12月にタイ・パタヤにおいて、ナレースワン大学基礎学問研究所(Institute for Fundamental Study (IF), Naresuan University)と基礎物理学研究所(YITP)合同研究会「TJ2012: Japan/Thai workshop in cosmology」を開き、 宇宙論の現状の総括と今後の研究方針に関する議論を行うとともに、IFとの共同研究の可能性を探った。 また、2月には韓国・チェジュにおいて、アジア太平洋スクール・研究会を開催し、インフレーション宇宙・修正重力理論・高次元ブラックホールの研究の最先端と今後の課題について議論を行った。