粉体について
砂やゴマのような巨視的な大きさを持つ粒子の集まり粉体と呼ぶ。
図の写真はゴマであるが、ゴマを特徴付けるものは何であろうか。
この写真に写っているゴマ粒の数は数千から数万といったところである。
従って熱力学極限とは程遠い数である。
また見ての通り、粒はそれぞれ形状を保ったままお互いに離れた状態を保っている。
つまり主たる相互作用は斥力相互作用である。
更に自発的な運動はなく、外場によって力を加えてもその力を取り除けば速やかに減衰してしまう。
このように散逸多体系であることが大きな特徴になっている。
このような粉体は土木、薬学、化学工学、機械工学、地学等いたるところで応用があるばかりか、
その振る舞いは固体、液体、気体とも異なった特異なものである。
このような物質の物理に長年取り組み、ようやく研究成果が出始めた段階である。
その顕著な成果の一つは粉体の液体論の構築であり、
もう一つは液体的状態から固体的状態への転移であるジャミング転移の物理的メカニズムを明らかにしつつある点である。
思ったより不思議でないこの粉体は統計力学の好個の対象であり、
その理解を進めるためには間違いなく過去の学問の蓄積を総動員しなければならない。この知的チャレンジに挑む若者を当研究室は歓迎する。