モード結合理論(MCT)は第一原理的な方程式から導出され、 ガラス転移点近傍において実験で観測される過冷却液体の 緩和の挙動などをよく説明している。 しかしMCTは、ガラス転移温度を実際よりも高温に予言し、 さらに過冷却液体に対して非エルゴード転移を予言してい るなど、いくつかの問題がある。 これに対してDasら[1]は流速-密度相関によるカットオフ により過冷却液体が非エルゴード転移をしないことを指摘した。 しかし、彼らの理論において行われる近似にはいくつか問題点 があることから、実際に流速-密度相関によるカットオフが 存在するのかどうか未だに分かっていない。 そこで我々はAndreanovら[2]により提案された方法により、 fluctuating hydrodynamicsに対して揺動散逸関係を保存した 場の理論の構築を行った。 これにより、我々はDasらの求めた流速-密度相関によるカットオフが 存在しないことを示した。 これらについてお話しする予定である。 [1] P. S. Das and G. F. Mazenko, Phys. Rev. A, 34, (1986) 2265. [2] A. Andreanov, G. Biroli, and A. Lefevre, J. Stat. Mech., (2006) P07008.