6月 5(月) 16:00~
発表者
後藤 晋 (所属:京都大学 大学院工学研究科)

題目
直接相互作用近似:成立条件と乱流統計理論への応用

概要
 
直接相互作用近似(Direct Interaction Approximation, DIA)は乱流の統計理論の
ひとつとして1950年代にクライクナンにより提案された。DIA はその後の乱流理論
に大きな影響を与えた近似方法である。ところが、DIA により導かれる速度場の2
点2時刻相関関数(および応答関数)についての閉じた方程式系は、DIA のオリジ
ナルの考え以外にも、さまざまな方法で導出できることが知られる。このため、DIA 
の成立条件やその適用範囲はしばしば誤解されてきた。そこで本講演では、まず簡
単な2次の非線形方程式系において DIA のオリジナルの考えと手順とを確認しつつ、
この近似の成立条件を明らかにする。その結果、DIA は相互作用が疎であってかつ
系の自由度が大きい場合によい近似を与えることが示される。

発達した乱流はこれらの条件を満足するので、次に、流体運動の基礎方程式(ナビエ・
ストークス方程式)へと DIAを適用し、速度相関関数の関数形を導く方法を紹介する。
このとき、速度場をラグランジュ的に記述する必要があることに注意しなければなら
ない。ラグランジュ変数で構築した DIA 方程式からは、エネルギースペクトルに関
するコルモゴロフの-5/3乗則が導かれ、また(調節パラメターを用いることなしに)
実験や観測結果とよく一致する比例係数を予言することもできる。ただし、ラグラン
ジュ的な DIA の構築には問題が全くない訳でもない。この辺りの事情について、著者
の知る限りの事情をなるべく正確に紹介したい。 
      

場所
京都大学基礎物理学研究所 研究棟・講義室K102
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