2000年度の夏の学校では、以下の講義が行われます。
「K中間子の崩壊から何がわかるか」
(7月21、22日)
小松原 健 氏(KEK素核研)
概要 K中間子崩壊の実験は、素粒子標準模型の確立に重要な役割をはたすとともに、 mixingやoscillationなどの概念をもたらすことで素粒子物理を豊かな分野に育んできた。現在でも、非常に稀な崩壊過程を研究することにより、 小林益川理論の検証、対称性の破れや標準模型を越える物理の探索が世界中で活発に行われている。 この講義では、基礎的(であるにもかかわらず最近の講義や教科書では省略されがちな)概念の解説から始めて、K中間子崩壊実験の最前線と将来の見通しまでを分かりやすく説明したい。
1. K中間子崩壊でみる素粒子物理の基礎
2. 中性K中間子の稀な崩壊
3. 荷電K中間子の稀な崩壊
4. 最前線の実験と展望
代表的な実験を例にとって、高エネルギー物理実験の技法 (ビームライン、測定器、データ解析、統計処理など) を具体的に解説していきます。 Particle Physics Bookletと電卓を持参して講義に参加してください。
「素核若手のための高エネルギー宇宙物理入門」
(7月23、24日)
谷森 達 氏(京都大)
概要 最近、高エネルギー物理学、原子核等からの宇宙物理への関心が高く、 参入が多くなってきた。 高エネルギー宇宙物理は観測装置の原理的な共通面があり一見入りやすそうに見える。 しかし非加速器物理とは異なり対象は多様な宇宙天体現象であり、 素核とはそれなりに異なった学問領域である。 特に素核若手が全くの天文学の素人であることは、高エネルギー物理学者である講演者自身の経験からよく理解しているので、天文学の基礎から始め、X線、ガンマ線天文学を中心に観測対象の物理、測定法などをなるべく素核のセンスを活かして、わかりやすく説明していきたい。 また宇宙物理に関係した素粒子物理の話、特に最近の新しい試みなども話すつもりである。 最後には、まだ未開拓な領域が多い高エネルギー宇宙物理への21世紀に向けての講演者の実験アイデアなど新しいことにチャレンジする意義を伝えたい。