Article: sg-l/1208013
Date: Mon, 06 Aug 2012 13:04:19 +0900
From: "Yoshifumi HYAKUTAKE" 
Subject: [sg-l 7332] 第12回素粒子メダルの選考結果報告

素粒子論グループの皆様、

素粒子メダル選考委員会委員長の石橋延幸氏より、2012年度第12回素粒子メ
ダル及び素粒子メダル功労賞選考報告書が送られてきましたので、転送致します。

素粒子論委員会 素粒子メダル担当
百武慶文

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2012年度第12回素粒子メダル及び素粒子メダル功労賞 選考報告書

2012年度の素粒子メダル1件4名を以下のように選考しましたので、ご報告します。
なお、本年度は素粒子メダル功労賞は推薦がありませんでした。

             2012年度素粒子メダル選考委員会
                                石橋 延幸* 川合 光 九後 汰一郎
                鈴木 久男 日笠 健一 東島 清 
                                           (* 委員長)


<2012年度素粒子メダル>
 ○小谷恒之氏、高杉英一氏、土井勝氏、西浦宏幸氏
 「マヨラナニュートリノのCP位相に関する研究」

<選考経緯>
1.本年度は、最初の推薦募集締切の時点で推薦がなかったため、素粒子論委
  員会と選考委員会の協議の上、再募集することを決定した。再募集の結果、
  素粒子メダル3件6名の候補者推薦があった。
2.推薦された業績のうち1件は既に他の賞を受賞したものであったため、選考の
  対象とはしないこととした。
3.各委員が推薦状と推薦業績の原論文を閲読し、参考意見を出し合った後に
  投票を行い、素粒子メダル1件4名を決定した。
4.選考委員会の判断で、素粒子メダル受賞者は推薦者の挙げた候補者とは異
  なる結果となった。また、論文の共著者に受賞資格のない方が含まれてお
  り、この方は受賞者に含めることが出来なかった。

<授賞理由>
<素粒子メダル>
○小谷恒之氏、高杉英一氏、土井勝氏、西浦宏幸氏
「マヨラナニュートリノのCP位相に関する研究」
“CP violation in Majorana neutrinos,”M. Doi, T. Kotani, H. Nishiura, 
K. Okuda and E. Takasugi, Physics Letters 102B, 323--326 (1981).

ニュートリノ振動の確立により,ニュートリノが質量を持つことが明らかになり,
現在では質量差および3つの混合角が測定されるに至っている。しかし,質量の
絶対値およびCP非保存位相については今後の課題である。さらに,ニュートリノ
の質量がディラック型かマヨラナ型のどちらであるかは,質量の起源を探る上で
も重要な問題である。小谷氏らは,マヨラナ型ニュートリノの関わるCPの破れを
調べ,他の2グループと独立に,ニュートリノがマヨラナ型の場合には,ディラック型
の場合よりもCP位相の数が多いことを発見した。3世代の場合には,ディラック型
では位相が1つなのに対し,マヨラナ型では3つの独立な位相が存在する。さらに,
この余分なCP位相はニュートリノ振動においては観測できず,レプトン数を破る
ニュートリノを伴わないダブルベータ崩壊のような過程でのみ観測可能なことを
示した。この研究は,ニュートリノ物理のその後の展開に重要な役割を果たした。
現在ニュートリノを伴わないダブルベータ崩壊を用いてニュートリノ質量を探る
実験が多数進行中であるが,このCP位相の存在は実験の結果の解釈にも重要な影響
を及ぼすものである。

以上

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