第4回(2002年度)核理論新人論文賞 授賞者(順不同、所属は当時のもの) ・慈道 大介 (大阪大学核物理研究センター) 学位取得: 1999年 3月 (東京工業大学) タイトル: "Chiral Symmetry of Baryons" 著者名: D. Jido, M. Oka and A. Hosaka, 発行雑誌: Progress of Theoretical Physics 106 (2001) 873. [受賞理由] 本論文では、 著者たちがこれまで展開してきた、カイラル対称性に基づいた バリオンの新しい分類法が包括的に議論されている。特に、励起状態を含むバリ オンが、カイラル対称性の線形表現のどのような多重項に分類できるかの一般論 とそのQCDからの基礎付けが与えられ、更にπη中間子生成反応によるその検証 可能性が示された。 ・平野 哲文 (東京大学理学系研究科) 学位取得: 2001年 3月 (早稲田大学) タイトル: "Is early thermalization achieved only near midrapidity in Au+Au collisions at $\sqrt{s_{NN}}$ = 130 GeV ?" 著者名: Tetsufumi Hirano 発行雑誌: Physical Review C65 (2002) 011901R. [受賞理由] 本論文では、著者が中心となって開発してきた完全な (3+1) 次元での相対論的 流体模型を発展させ、高エネルギー重イオン衝突を効率的にかつ精度よく記述できる 枠組を示している。そして、これを用いて RHIC でのハドロン一粒子分布と楕円型 フローの擬ラピディティ依存性を分析し、新しいデータとの比較に基づいて、 熱平衡への到達度と QGP 生成領域についての新しい描像を示唆している。 ・杉田 歩 (大阪大学核物理研究センター) 学位取得: 2000 年 3 月 (京都大学) タイトル: "Semiclassical Trace Formulas in Terms of Phase Space Path Integrals" 著者名: Ayumu Sugita, 発行雑誌: Annals of Physics 288 (2001) 277. [受賞理由] 半古典論の Gutzwiller のトレース公式を分配関数の位相空間上での経路積分表示 を出発点として正確に導出し、そこに出てくるマスロフ指数がゲージ理論での アノマリーと類似した周期軌道の幾何学的性質を反映するものであることを示した。 これによって、経路積分の 2次の効果であるマスロフ指数を正確に採り入れた、 Bohr-Sommerfeld 型の量子化条件を初めて導くことに成功した。
今回も前回と同じく多くの応募をいただきました。ありがとうございました。 厳選な審査を核理論委員会で行って決定しました。論文内容の詳細については 秋の学会で招待講演として発表していただく予定です。
核理論委員会(2002年5月8日、[ntj-l 696])