第6回(2004年度)核理論新人論文賞 授賞者(所属は当時のもの) ・明 孝之 (北大理、大阪大学核物理研究センター) 学位取得: 2002年3月 (北海道大学) タイトル: "Three-body Coulomb breaup of 11Li in the complex scaling method" 著者名: Takayuki Myo, Shigeyoshi Aoyama, Kiyoshi Kato and Kiyomi Ikeda 発行雑誌: Physics Letter B 576 (2003), 281-288. [受賞理由] 本論文は、11Liの 9Li+n+nへのクーロン分解反応を複素座標スケーリング法(CSM) を用いて解析した論文である。3体共鳴状態、3体連続状態、2体の連続状態(10Li+n) を複素スケーリング法で求め、それに基づいて分解反応の強度関数や双極子遷移 強度分布の計算を行い、実験データとの比較を行った。また、強度関数をそれぞれ の寄与に分解し、それらの振る舞いと暈構造との関連を論じた。不安定核の反応に 対する一つの有力な解析法を提示し、高い完成度で実行した優れた論文である。 ・野中 千穂 (デューク大) 学位取得: 2001年3月 (広島大学) 授賞論文: タイトル: "Hadronization in Heavy-Ion Collisions: Recombination and Fragmentation of Partons" 著者名: R.J. Fries, B. Mueller, C. Nonaka and S.A. Bass 発行雑誌: Physical Review Letters 90 (2003), 202303. [受賞理由] 本論文では、RHICの重イオン衝突で生成される横運動量2−5GeVのハドロンの 生成機構として、クォークの再結合模型が導入された。この模型により、これまで 説明が困難であった生成率・原子核増大因子・楕円型フローなどにおける陽子の 異常な振る舞いを、パイ中間子とともに統一的に説明可能であることが初めて 示された。この分析は、 RHIC エネルギーにおけるクォーク・グルオン・プラズマ 研究に大きな影響を与えている。 ・藤井 新一郎 (東大理) 学位取得: 2000年3月 (九州大学) タイトル: "Charge-dependent calculations of single-particle energies in nuclei around 16O with modern nucleon-nucleon interactions" 著者名: Shinichiro Fujii, Ryoji Okamoto and Kenji Suzuki 発行雑誌: Physical Review C69 (2004), 034328. [受賞理由] 本論文は、ブルックナー理論に代わる有効相互作用の微視的理論である UMOA (Unitary Model Operator Approach)の方法を用いて、最新の現実的核力を出発点と する 16O近傍原子核の多体問題的計算を遂行したものである。このような方法に よって、比較的重い 16O閉殻近傍核の 1粒子(空孔)状態エネルギーの計算結果が 実験データの特徴をよく再現すること、また、より重い原子核や不安定核における 第一原理的計算の可能性を示した意義は大きい。
今回も前回と同じく多くの応募をいただきました。ありがとうございました。 厳選な審査を核理論委員会で行って決定しました。論文内容の詳細については 春の学会で企画講演として発表していただく予定です。
核理論委員会(2004年10月25日、[ntj-l 1192])