2007年日本物理学会理論核物理領域:若手奨励賞(第8回核理論新人論文賞) 授賞者(所属は当時のもの)

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西田 祐介 氏 (東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 博士後期課程3年)

対象論文:
タイトル: "Epsilon expansion for a Fermi gas
            at infinite scattering length"
著者名  :  Yusuke Nishida and Dam Thanh Son
発行雑誌:  Physical Review Letters 97 (2006) 050403.

[選出理由]
短距離力で相互作用するフェルミ気体において、散乱長が発散する
強結合領域はユニタリー極限と呼ばれる。本論文は、ユニタリー極
限にある強結合フェルミ気体に対する新しい手法として、空間次元
の4次元からのずれ(イプシロンε=4−d)を展開パラメータと
するイプシロン展開法を提唱し、その有効性を示したものである。
 このイプシロン展開法は、強結合系に対する新しい手法として 独
創的であり、ユニタリー・フェルミ気体に対して初めて解析的な分
析を可能にしたことは高く評価できる。また、この方法は、BEC-BCS
クロスオーバー領域における原子気体の定量的解析のみならず、中
性子星などの核物質系に対しても広く応用が期待される。

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高橋 徹 氏 (京都大学 基礎物理学研究所)
学位取得: 2003年3月 (大阪大学)

対象論文:
タイトル: "Detailed Analysis of the Three Quark Potential
            in SU(3) Lattice QCD"
著者名  :  T.T. Takahashi, H. Suganuma, Y. Nemoto and H. Matsufuru
発行雑誌:  Physical Review D65 (2002) 114509.

[選出理由]
本論文では、クェンチ近似の格子QCD数値シミュレーションにより、
バリオン内のクォーク間ポテンシャルの系統的解析が行われた。
この解析により、長距離でY型フラックスを持つ3体閉じ込めポテ
ンシャルが現れる事、この閉じ込め力の強さがクォーク・反クォ
ーク間の閉じ込め力とほぼ一致する事などが示された。長年の懸案
であったバリオン内のクォーク閉じ込め実現形態を、第一原理計算
の立場から初めて明らかにした意義は大きい。
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今年度から核理論新人論文賞が理論核物理領域の日本物理学会若手
奨励賞へ移行したことに伴い、核理論委員会が選出した候補者は、
物理学会で最終的に決定されます。正式な受賞は次回の物理学会年
会(2007年秋)となりますが、上記の候補者については、学会より
受賞が内定したとの報告を受けました。
受賞者の方々には、学会年会において論文の内容を講演していただ
く予定です。

(核理論委員長 国広 悌二、担当幹事 矢花 一浩)




 核理論委員会(2006年12月18日、[ntj-l 1760])