2008年日本物理学会理論核物理領域:若手奨励賞(第9回核理論新人論文賞) 授賞者(所属は当時のもの)

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北沢 正清 氏 (大阪大学大学院理学研究科) 

対象論文: 
タイトル: Pre-critical phenomena of two-flavor color superconductivity 
           in heated quark matter: Diquark-pair fluctuations and
           non-Fermi liquid behavior
著者名  : Masakiyo Kitazawa, Tomoi Koide, Teiji Kunihiro, and Yukio Nemoto 
発行雑誌: Progress of Theoretical Physics 114 (2005) 117. 

[選出理由] 
本論文では、カラー超伝導相の臨界温度近傍において強く相互作用するクォー
ク物質に関する研究がなされた。QCDの低エネルギー有効模型のひとつである
南部ーヨナ-ラシニオ模型を線形応答理論によって解析し、クォーク対ゆらぎ
のソフト化が引き起こす集団モードの出現を示し、カラー超伝導相の形成を検
証する上で有力な手がかりとなる擬ギャップなどの、前駆現象の特徴を明らか
にした。QCD相転移の理論的な理解ととともに、観測量との関係についても検
討しており、今後関連する研究に大きく貢献することが期待される。 

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兵藤 哲雄 氏 (ミュンヘン工科大学、京都大学基礎物理学研究所) 

対象論文: 
タイトル: Exotic hadrons in s-wave chiral dynamics
著者名  : Tetsuo Hyodo, Daisuke Jido, and Atsushi Hosaka
発行雑誌: Physical Review Letters 97 (2006) 192002.

[選出理由] 
本論文では、ハドロンと南部・ゴールドストーンボソンとのs波による準束縛
状態として、エキゾチックハドロン状態が存在する可能性について系統的に分
析された。低エネルギー定理から一意に決定される相互作用を用い、任意のフ
レーバー表現について相互作用の強さがカラー数を用いて陽に書き下された。
それにより、エキゾチック状態に対する相互作用は多くの場合斥力であり、引
力の場合でも、標準的なカイラルユニタリー模型を用いた解析により、準束縛
状態を構成できるほどその力は強くない事が示された。本論文は、エキゾチッ
クハドロンが実験的にほとんど観測されていない事実を理解する上で明快な基
礎を与えるとともに、今後のハドロン分光学の研究に有用な視点を与えたもの
である。

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受賞者の方々には、来年春の学会年会において受賞講演を行なっていただく予
定です。

なお、昨年度より、核理論新人論文賞は理論核物理領域の日本物理学会若手奨
励賞に移行しています。

(核理論委員長 国広 悌二、担当幹事 松尾 正之)


 核理論委員会(2007年11月13日、ntj-l/0711007)