基礎物理学研究所市民講演会

カーナビから宇宙まで

--アインシュタイン理論の現在と未来 --

2005年 7月2日(土曜日) 13:00-16:00
京都大学理学部6号館 401 号室
京都市左京区北白川追分町(京都大学北部キャンパス内)


会場への交通

基礎物理学研究所では以下のテーマについて 市民向の講演会を行います。理論物理学の基礎的な話題について 解説する予定です。

「The Origin and the Fate of the Universe (宇宙の始まりと未来の姿)」

講演ファイル( Japanese   English

京都大学基礎物理学研究所客員教授 Andrei Linde
Stanford 大学 教授

リンデ教授は、インフレーション宇宙理論を最初に提唱した研究者の一人です。 その業績に対して2002年にはディラックメダルを受賞されました。 特に、彼の「カオテック・インフレーション」理論は、インフレーション 宇宙理論の最も標準的なモデルとして受け入れられています。近年、 リンデ教授の理論を支持する観測データが続々と得られています。

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Linde 教授


For a long time scientists believed that our universe was born as an expanding spherically symmetric ball of fire. If the universe expands fast enough, it would expand forever, whereas if its expansion is slow, it is going to collapse and disappear. This scenario dramatically changed during the last 25 years. Now we think that initially the universe was rapidly inflating, being in an unstable energetic vacuum-like state. It became hot only later, when this vacuum-like state decayed. Recently it was realized that the inflating baby universe probably looked like a bagel rather than like a sphere. Its subsequent evolution transformed the universe into a huge fractal consisting of many exponentially large parts with different laws of low-energy physics operating in each of them. According to string theory, each part of this fractal may eventually collapse into a huge black hole, or become 10 dimensional. However, the universe as a whole is immortal.

(日本語訳) かつて長い間,科学者の間では,我々の宇宙は膨張する丸い火の玉として生ま れ,その後は,宇宙の膨張が十分速い場合には宇宙は永久に膨張を続け,膨張 速度が遅い場合には宇宙は膨張から収縮に転じて最終的にはつぶれて消滅する と考えられてきた.このシナリオは,最近の25年間で大きく変化し,現在で は次のように考えられている.まず,宇宙は誕生時に不安定な真空状態にあり, その真空エネルギーのためインフレーションと呼ばれる急速な膨張が起きる. この真空のエネルギーはその後様々な素粒子からなる物質に壊れ,それに伴っ て宇宙の温度が急速に上昇する.このインフレーションにより生み出される宇 宙は,従来考えられていたような均質で丸い形ではなく,むしろベーグルパン (ドーナッツ上の堅ロールパン)のような姿をしていることが,最近の研究で 明らかになりつつある.この宇宙は,その後の進化で,大きく膨張した多くの 領域が織りなす巨大なフラクタルへと変化し,各領域では異なる(低エネルギ ーの)自然法則が実現される.弦理論によると,このフラクタルを形成する各 領域のあるものは最終的にはつぶれて巨大なブラックホールとなり,あるもの は膨張を続けて10次元の宇宙へと変化する.しかし,宇宙は全体として不滅 である.


「一般相対性理論と重力波」

京都大学大学院理学研究科教授 中村卓史

中村教授は、一般相対論の分野で世界的に活躍する研究者で、 ブラックホールの形成過程を世界で初めてコンピュータを 使って明らかにしました。その業績に対して、今年学士院賞を受賞 されました。最近は、時空の揺らぎ・重力波を使って宇宙を見る、 という天文学最後のフロンティア、重力波天文学の育成に力を注がれて います。

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中村卓史教授

 「相対性理論て難しいし、どっちにしたって日常生活とは無縁でしょ?」  「とんでもありません。知らないうちにあなたは相対性理論のお世話に   なっているのですよ。そのことを教えてあげます。」  「でも表題の重力波て何ですか?聞いたことないなあ。」  「電気を持ったものがぐるぐる回ると電波が出ます。相対性理論によると   質量を持ったものがぐるぐるまわると重力波が出ます。」 「あっそう。電波の親類ですか?でも、何かの役に立つのですか?」 「現在世界の研究者が宇宙からやってくる重力波を検出しようとしています。 そして、近い将来にブラックホールや初期宇宙の研究に重力波が役に 立つことは間違いありません。そのことも話します。」 「でも、どうせ難しい式とか理屈ばっかりで眠たくなる話でしょう?」 「式なんか使いません。綺麗な絵、音、ビデオを使って話します。 聞き終わった後には賢くなって幸せな気分になることは間違いないと 思いますよ。」 「そうですか。じゃ聞きに行こうかな。」


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