基礎物理学研究所が主催する市民の方々に向けての講演会です。
理論物理学の最新の話題を、できるだけわかりやすく解説します。
皆さまのご参加をお待ちしております。
「宇宙を創る」
京都大学基礎物理学研究所 教授 田中 貴浩
田中教授の専門分野は「重力理論・宇宙論」で、様々な研究が国内外で高く評価されています。
最近では「ブレーン重力の研究」に対する業績が認められ、2012年には日本学士院学術奨励賞を受賞されています。
田中 教授
|
宇宙の進化に関する研究は、理論的予測と観測による実証という
形で見事なまでに着実な進展をみせています。その発展の歴史を
振り返ると、どうしてここまで見事にシナリオが構築されてきた
のだろうかと驚かされます。
近年、宇宙の進化に関する研究は観測的に更なる飛躍的進展をみ
せています。これまで、理論上の予測でしかなかった宇宙の最初
期の歴史についてさえ、観測的な制限が得られつつあります。
その一方で、我々、理論の研究者は宇宙に関する多様な理論モデ
ルを提案し、盛んにその性質に関する研究を進めています。理論
モデルが観測と比較できるところまで理解を成熟させるために、
多くの論戦が交わされています。本講演では、その研究の前線へ
の入り口を紹介できればと思っています。
|
「ブラックホールを創る」
京都大学基礎物理学研究所 教授 柴田 大
柴田教授は「一般相対論的宇宙物理学」の分野を中心に活躍をしておられます。
特に、一般相対論的天体現象に対する数値相対論を用いたシミュレーションにおいて、
柴田教授は世界をリードしておられます。
2010年には「数値的一般相対論の開拓およびその応用」に対して、
日本学術振興会賞を受賞されています。
柴田 教授
|
宇宙の中でもっとも重力の強い天体はブラックホールです。
あまりにも重力が強いため、質量を持たない光でさえ、
ブラックホールから逃れることができません。
ブラックホールは、太陽の数十倍の質量を持つ恒星の進化の
最後に誕生したり、あるいは中性子星と呼ばれる超高密度の
天体2つが合体して誕生すると考えられていますが、その
誕生過程を観測したことは人類史上ありません。誕生の瞬間を
直接観測することが、現代宇宙物理学の最重要課題の1つと
されています。
一方、ブラックホールがどのように誕生するかについては、
理論的な計算によって推定することができます。
ブラックホールのような強重力天体は、アインシュタインが
導きだした一般相対論の法則にしたがいますが、その基礎方程式を
解くことによって原理的に解明できるからです。もっとも、
この方程式は大変複雑な方程式であるため、大規模コンピュータを
用いた高度な数値計算が不可欠になるのですが、最近そのような
計算が可能になりました。
その結果、ブラックホールがどのように誕生するのかについて、
コンピュータを用いて再現することができるようになったのです。
本講演では、どのようにブラックホールが誕生するのかについて、
最新の成果を紹介したいと思います。
|
「基研の講演会」へ戻る
ポスター(PDF)