数学関連 (Math)

 

『春宵十話』 岡潔 / 光文社文庫 1963 2020/8/10 読了 /12,16 記

文系の友人から「文章がきれいだった」と勧められて読んでみた。岡潔はその業績からフランスの数学者集団から岡潔の名前が日本のブルバキなのではないかと間違われたという逸話を自分は聞いていて名前は知っていたが著作を読む機会はこれまでなかった。該当部分が「私は数学なんかをして人類にどういう利益があるのだと問う人に対しては、スミレはただスミレのように咲けばよいのであって、そのことが春の野にどのような影響があろうとなかろうと、スミレのあずかり知らないことだと答えて来た。」という部分かと聞いてみたらやはりスミレの部分らしい。今を生きるしがない研究者が言うとあっという間に踏みつぶされてしまいそうな文だと思いつつ自分も感銘を受けた。「数学とはどういうものかというと、自らの情緒を外に表現することによって作り出す学問芸術」だという。これは本の巻末に述べられているように、普段自分たちは数学は論理的な学問であると感じていることと矛盾しているようだが真理をついているように思う。(この考えは小平に影響を与えたのだろうか。)また著者が自分の父親と同じく人を大事に思っているのだと強く感じた。大戦を経験した世代の人に共通するのだろうか。今の日本社会の空気の中でなかなか感じ取れなくなってしまい残念に思う。実はこの本を読んだままうたた寝をしてしまったのだが、うたた寝の間夢をみて、その夢の終わりが滑らかに現実につながるような形で目覚めた。今でも夢を見たことやおぼろげながらその内容を覚えている。本の内容に触発され、恐らく自分が無意識下に抑え込んでいる気持ちが夢の中にでてきたからなのだろう。

『怠け数学者の記』 小平邦彦 / 岩波現代文庫 2020/*/* 読了 2020/8/12,16 記

日本最初のフィールズ賞受賞者による率直な思いが綴られた著作。小平と言えば、東大闘争の頃学生から専門家は専門バカだと罵られた際に「専門バカでない馬鹿はただのバカだ」と言い返した、という逸話を物理学科の頃に(確かY氏から)聞いた印象が強かった。数学の理解には五感と同じ「数覚」が必要で、それを身に着けるには毎日長い時間をかけて訓練するよりほかなく、それはピアニストになろうとするように子供の頃から繰り返しピアノを練習するより他にないことと似ているという。自分にとって小平は怠け数学者どころか用意周到な数学者だというイメージがあるが、恐らくある種の謙遜を交えているのだろう。数学や物理に関する考え方も自分とほぼ同じで大変読みやすく、小平の主要業績の一つである高次元複素多様体の研究が物理学者のWeylが書いた『リーマン面の概念』を高次元に拡張しようという動機であったというのはうれしい驚きであった。小平は数学科を卒業したのち物理学科に入り直したのち卒業後東大物理で職を得ている。現代の数学者は数理物理をどのくらい真剣に考えているのだろうかとふと思った。

『近世数学史談』 高木貞治 / 共立全書 2019/*/* 読了 2020/8/12 記

天才数学者たちの数学との戯れが高木の文才によって色鮮やかに再現されている。