Volume 32-3修士論文
背景磁場を含む 6 次元理論における スカラー場の質量補正の相殺機構
廣瀬 拓哉 (大阪市立大学)
素粒子論研究・電子版 Vol. 32 (2020) No. 3
2020年5月16日受理
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概要
素粒子標準模型の問題の 1 つに階層性問題がある。これはヒッグス粒子の質量補正が新しい物理スケールの 2 乗に比例し、観測値である 125 GeV を不自然なパラメーターの調整なしに説明できない問題のことである。階層性問題の解決にはいくつかの方法が議論されている。本研究では、flux compactification の発想を元に階層性問題の解決のアプローチを試みる。ここで flux compactification とは、背景磁場が含まれる余剰次元空間のコンパクト化を指す。余剰次元空間が背景磁場を含む 2 次元トーラスの場合、磁場中の量子力学の議論を応用できる。例えば、磁場中の量子力学ではエネルギー固有値として Landau 準位が得られるが、このエネルギー固有値が場の質量固有値になる。flux compactification を出発点とすることで、ゲージ場の余剰次元成分 (スカラー場) の質量補正が相殺されていることを見る。具体的には 6 次元量子電磁気学と 6 次元 SU(2) Yang-Mills 理論の例で見る。 またスカラー場の質量補正の相殺の物理的理由が、トーラス並進対称性の自発的破れが関係している。トーラス並進対称性の自発的破れが起こることにより、質量が零の南部-Goldstone ボゾンが生じる。スカラー場がこの南部-Goldstone ボゾンに対応する。本研究は主に [1] の内容である。
キーワード
階層性問題、flux compactification