Volume 34-2修士論文
Anomaly Inflow In Curved Space
青木 匠門 (大阪大学)
素粒子論研究・電子版 Vol. 34 (2021) No. 2
2021年4月9日受理
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概要
対称性は物理学において重要な概念の一つである. しかし,経路積分による場の量子論の定式化では,古典的には期待できる対称性が存在しない場合がある. これは古典的な対称性が量子効果で破れることを意味し,アノマリーと呼ばれる. アノマリーは有限自由度と無限自由度の差から生じる. 空間にドメインウォールが存在する場合,高次元時空におけるアノマリーがドメインウォール上のアノマリーを補正し,全体としてアノマリーのない理論を構成できる. これはアノマリー流入と呼ばれ,Callan-Harvey 機構やドメインウォールに局在する状態で説明される. そこで,曲がった空間を高次元の空間にドメインウォールとして埋め込むことを考える. 重力はこれによって再現されるため,曲がったドメインウォールに局在したフェルミオンによってアノマリーへの重力の寄与を計算できると期待できる. 本研究では最初に,ドメインウォールで重力アノマリーを再現することを念頭において,重力アノマリーの構成をレビューする. 重力アノマリーは,古典的に期待できる局所 Lorentz 変換や一般座標変換が量子効果で破れることを表す量である. そして,この 2 つから生じるアノマリーが局所 counter term で移り合い,本質的に同じであることを確認する. 次に Euclid 空間に曲がったドメインウォールを設置して,フェルミオンの振る舞いを調べる. ドメインウォールとして球面や円筒を用いて,ドメインウォールに局在する状態の固有値や相関関数を解析的に求める.