Volume 42-2修士論文
SU(3)格子QCDを用いたDimensional Reduction ゲージにおける低次元化の解析
當銘 啓 (京都大学大学院理学研究科)
素粒子論研究・電子版 Vol. 42 (2024) No. 2
2024年3月8日受理
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概要
クォークの閉じ込めは、クォーク間の線形ポテンシャルで特徴づけられ、それにはカラー電束が1次元的に絞られた「フラックス・チューブの形成」が本質的に重要と考えられている。1次元的なフラックス・チューブ形成は、4次元QCDにおける「低次元化」の可能性を示唆しており、この「低次元的性質」を浮き彫りにする目的で、我々は「Dimensional Reduction (DR) ゲージ」という新しいゲージ固定を考案した。このDRゲージでは$t,z$にのみ依存するゲージ関数$\Omega (t,z)$によるゲージ変換に対する(2次元QCDと同じ)ゲージ対称性が残留し、従ってDRゲージの4次元QCDは2次元QCDと類似のゲージ系になると期待される。本研究では、解析的議論とSU(3)格子QCD計算 [$\beta = 6.0$(格子間隔 $a \simeq 0.1$ fm), クエンチ, 格子サイズ $24^4$] を用いてDRゲージの性質を調べ、以下のような結論を得た。 (1) DRゲージではグルーオン場の$x,y$方向成分$A_{x}, A_{y}$が抑制されるので、それらを格子QCD 配位から取り除く「$tz$-射影」を考え、それによりクォーク間ポテンシャルがどのような影響を受けるかをSU(3)格子QCD 計算で調べた。その結果、DRゲージではクォーク間ポテンシャルが$tz$-射影で変化せず、グルーオン場の2次元的成分のみによって再現されることが分かった。これは「長距離の物理量が 2 次元的な自由度のみで再現できる」という可能性を示唆する。 (2) 解析的議論からは、DRゲージで$tz$-射影した4次元QCDは「近接相互作用をする2次元QCDの類似系のアンサンブル」という描像が得られる。 (3) この描像に現れる 2次元QCD類似系間の相関を格子QCDを用いて調べた。2次元QCD系間には $e^{-mr}$[$m \simeq 0.6$ GeV] という指数関数的に減衰する相関が見られ、従って 2次元QCD系間の相関長は $\xi \equiv 1/m \simeq 0.3$ fm という結果が得られた。 (4) この $\xi \simeq 0.3$ fm以上で2次元QCD系間の相関が$\theta$関数的に切れるという非常に大まかな近似の下では、DRゲージの4次元QCDが「結合定数が $g_{2} \equiv gm$ の2次元QCD系」のアンサンブルとして記述できる可能性を指摘した。
キーワード
格子QCD、閉じ込め、低次元化