研究会趣旨

1986年の銅酸化物高温超伝導体の発見以来、強相関電子系における超伝導は物性物理学における最も重要な研究テーマの一つとなった。2008年に発見された鉄系超伝導体は銅酸化物に次いで高い転移温度を有し、2例目の強相関系高温超伝導体と考えられている。その発見は、銅酸化物以外の物質でも高温超伝導が実現されうるということを印象づけた点で意義深い。また、これまでの研究から、その多彩な超伝導状態や特異な電子状態等を理解する上で軌道自由度の重要性が指摘されており、高温超伝導の発現機構として、磁気揺らぎを担うスピンの自由度とどのように競合、協力するかは今日最もホットな話題の一つとなっている。このように多自由度をもつ強相関電子系がどのような場合に高い転移温度を有し、また、新奇な超伝導状態を発現するか、という問題は、鉄系超伝導体に限らず、重い電子系超伝導体やフラーレン、ルテニウム酸化物等、他の超伝導体とも共有するトピックである。また、最新の実験結果によれば、一部の鉄系超伝導体がBCS-BECクロスオーバー領域にある可能性が高く、その理想的な研究の舞台を提供している。このようなテーマは銅酸化物や冷却原子系を対象としてよく研究されてきたが、鉄系においては多自由度との関連という新しい切り口を提示している。同様の話題は冷却原子系における最近のトピックでもある。このような状況を踏まえ、日本国内で鉄系超伝導体をはじめとする多自由度強相関電子系の理論研究やBCS-BECクロスオーバーで成果を挙げている第一線の研究者を集め、最近の成果について討論する。

招待講演者による口頭発表に加えて、一般申し込み者による口頭発表と、一般申し込み者によるポスター発表を行う。暫定的なスケジュールとして6月9日10:00開始、10日17:00頃終了を予定。

世話人

招待講演者(敬称略)


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