Penta04印象記 (2004年7月28日記)

(2004年10月12日改訂;整形し、少し書き加えた。)


2004年7月20日から23日まで行われた SP-Ring8での ペンタクォークのワークショップに参加しての 「印象記」です。 詳しい内容はトーク'sのpdfファイルの載っている ホームページを参照。

全体の印象では、Theta+の存在自体が未だ100パーセント確立したとは 言いがたいということです。
特に、NA49の\Xi quartetsのことはほとんどの人が信じていないようです。 私をはじめ多くの人がこの論文でTheta+自体を信じるようになったと思うので すが。

Theta+はthreshold近くなので、直感的に考えて運動量移行の小さい反応で 生成されやすいはずです。このことは、 LEPS@SP-ring8のように低エネルギー実験で超前方にacceptanceのある detectorで「見えている」こととは整合的です。

したがって、

Diakonovが低エネルギーと高エネルギーでの反応機構の違いから 高エネルギー実験ではTheta+ができにくい理由を説明していました。 ポイントは、高エネルギーではハドロン交換ではなく、Pomeron交換に よること、するとさらに、OZI-suppressionが効く、 ということでした。

ところが、HERAのZEUSで見えているというので混乱します。

格子QCDでは、

ということになっていて、これも混沌としています。

共鳴状態かどうかを確証する上で体積依存性を見ることが重要であることが一般に 認識されていて、みなそのことに言及していました。 しかし、これについてきっちりした計算を見せることができたのは 高橋君だけでした。それによると、K-Nの散乱状態とは見なせない、 共鳴状態が存在し、その「波動関数」を取り込むには格子長Lは2.5fm以上は必要。 それより小さい格子では散乱状態以上の「斥力的」なエネルギーのずれが 観測される。

QCD和則も 東工大(TIT)グループ(J.Sugiyama et al), KEK(西川 et al), S.H. Leeで少しずつ違っていました。

Pentaquarksの研究の現状は
混沌 という言葉でまとめられるかもしれません。
決着を見るには最低あと1,2年はかかるでしょう。

ここでおじけついてPentaquarksから遠ざかるか、それとも、 Multi-quark状態の物理として大きく捉え、そこに新しい物理を見いだし 踏み止まるか、
研究者それぞれのセンスと見識が問われるのでしょう。
その点、 延與さんのトークの最後のスライドは示唆に富んでいて感心しました。
ただし、一言付け加えるならば、これは我々が主催した基研ワークショップ
``Multi-quark Hadrons; four, five and more?"
の基本理念の分かりやすい 概念図になっていると思います。
以上。