カイラルユニタリー法の概観

強い相互作用は 量子色力学(QCD) で記述されるが、低エネルギー領域での「カラーの閉じ込め」と「カイラル対称性の自発的破れ」のために、現実世界のハドロン現象を根底にあるQCDから説明するには(格子シミュレーションを除いて)至っていない。ハドロン物理を研究する方法として、QCDの持つ対称性を考慮した有効場の理論がある。例えばカイラル対称性の非線形表現に基づいた カイラル摂動論 では、体系的な低エネルギー展開が可能であり、これまで低エネルギーのハドロン現象を非常によく記述してきた。

カイラルユニタリー法では、カイラル摂動論で得られた散乱振幅に、多チャンネル散乱振幅のユニタリー条件を課すことで、共鳴状態を含む中間エネルギー領域までのハドロン散乱を記述する。共鳴状態はtree図の非摂動的な足し合わせによって動的に生成される。メソン・バリオン散乱では、共鳴状態としてΛ(1405)やN(1535)のような励起バリオンが力学的に生成され、質量や崩壊幅などの性質を再現する。

ChU

この方法の優れている点は以下の通りである。

最近では応用として、共鳴状態の性質を調べるために直接実験と比較できる過程や、核力の微視的構造、カイラル対称性の部分的回復との関連で核媒質の効果なども研究されている。


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