京都大学基礎物理学研究所 研究会『電磁波と生体への影響』 プログラム 5月30日 座長: 山田耕作 (京都大学大学院理学研究科物理学専攻) 1:00 はじめに 村瀬 雅俊 (京都大学基礎物理学研究所) 1:10 太陽光過敏症の分子メカニズム 松田 外志朗 (大阪大学大学院生命機能研究科) 2:10 原生生物における電磁場の影響 中岡 保夫 (大阪大学大学院生命機能研究科) 3:10 休 憩 (20分) 座長: 池田研介 (立命館大学理工学部) 3:30 痛み・温度感覚の分子生物学 富永 真琴 (三重大学医学部生理学第一講座) 4:30 磁界感受性とメラトニン 石堂 正美 (独立行政法人国立環境研究所) 5:30 閉鎖空間における携帯電磁波の影響 本堂 毅 (東北大学大学院理学研究科物理学専攻) 5月31日 座長: 吉村一良 (京都大学大学院理学研究科化学専攻) 10:00 電磁波問題と予防原則 荻野 晃也 (電磁波環境研究所) 11:00 ゲーム脳の現状 森 昭雄 (日本大学文理学部) 12:00 昼 食 (60分) 座長: 岡田安弘 (京都大学大学院文学研究科哲学専攻) 1:00 低周波電磁波の疫学について 兜 真徳 (独立行政法人国立環境研究所) 2:00 化学物質過敏症と電磁波過敏症 宮田 幹夫 (北里研究所病院) 3:00 広義の環境ホルモンとしての電磁波 村瀬 雅俊 (京都大学基礎物理学研究所)
京都大学基礎物理学研究所 研究会「電磁波と生体への影響」 主催:京都大学 基礎物理学研究所 場所:湯川記念館3階 大講演室 日時:2003年5月30日(金) 〜 31日(土) 内容:これまで物理学では、電磁波の生体への影響は単純にエネルギーに依存して 現れると考えられてきた。この考えに基づけば、極めてエネルギーレベルが 高い放射線は、生体の内部組織にまで到達し、その組織における正常細胞を がん細胞へと悪性化すること、およびそれよりエネルギーレベルが低い紫外 線は、生体の表層組織にとどまり、その表層組織における正常細胞をがん化 することが理解できる。それでは、エネルギーレベルが極めて低い電磁波の 生体への影響は本当に存在しないのだろうか。 生命の起源以来、数十億年におよぶ進化の過程で、生物は電磁波スペクトル の2つの領域─すなわち、低周波電磁波(〜数十ヘルツ)と可視光線─をう まく利用してきた。これらの電磁波は海水中をよく透過する性質があり、海 で誕生した生命には欠かせないエネルギー源であり情報源であった。現存す る水棲生物が餌を見つける時に使う電磁波が低周波であり、わたしたちの脳 波に現れている電磁波も低周波である。一方、わたしたちの目は可視光線を 感知するすぐれた機能をもっている。ところが、この可視光を10ヘルツ程 度の低周波数で間欠的に遮光すると、数秒も経たないうちに被験者の脳波が いっせいに同期しはじめ、てんかん発作を引き起こしてしまう。この観点に 立つと、電磁波の生体への影響は、エネルギーレベルで単純に理解できると 言うよりも、生体反応を特異的に引き起こす情報源という意味から、周波数 に基づいて捉え直す必要があるように思われる。つまり、冒頭の「電磁波の 生体への影響は単純にエネルギーに依存して現れる」という前提自体を生物 学の知見を交えてもう一度、物理学的に再検討することが必要である。 今日使用されている携帯電話のマイクロ波は低周波で変調されていることを 考えると、その電磁波の影響は家庭送電線などから受ける低周波電磁波の場 合とも共通した、低周波成分による影響発見のメカニズムが普遍的に存在す る可能性がある。逆に、電磁波の生体への影響を情報源という意味から周波 数に基づいて考察することによって、生命現象の基本的な情報統合メカニズ ムを解明できるのではないだろうか。研究会では、物理学者、工学者、生物 学者、医学者、哲学者などが多角的に意見を交わしながら、電磁波が生体へ 与える影響について、その問題点を学術的・学際的に明らかにしていきたい。 参加料:無料 事務連絡先:京都大学 基礎物理学研究所 共同利用事務室 (担当:八木) TEL:075-753-7008 FAX:075-753-7010 連絡責任者:京都大学 基礎物理学研究所 村瀬 雅俊 TEL: 075-753-7013