ブラックホール地平面付近からのレイトレース
シミュレーション条件
無限遠からブラックホールの地平面へと落ちてゆく光線の軌跡は ヌル測地線として与えられ、下図 [図1] の様になります。 この図では半径1のシュワルツシルトブラックホールの地平面に落ちてゆく光線束を示しています。 逆に、地平面近くから無限遠に出ていく光線も同じ軌跡をたどります。 この図から、ブラックホールの半径よりも光線束の半径の方が大きくなっている事がわかります。 即ち、無限遠の観測者にとってのブラックホールの像は実際の大きさよりも大きく見える事が分かります。見かけの半径は本来の半径の √(27/4) になります。 これは重力のレンズ効果の一つです。
では、地平面付近に何か模様が書いてあったとすると、 無限遠の観測者にはどの様に見えるのでしょうか。
[図2] 球面の塗り分け。 | [図3] 無限遠の観測者が見る光景。 |
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上左図の様に、地平面の北半球を赤色と青色で、南半球を黄色と水色で塗り分けたとします。 通常の球面であれば観測者からは単に上左図の様に見えるわけですが、ブラックホールの場合は上右図の様な光景が観測される事になります。 ここでは、色の赤方偏移は無視しています。 通常の球体では、裏側となって見えない領域(例えば南極)もレンズ効果で見えています。 像の周辺域にはブラックホールの周囲を何回も回ってきた像も見る事が出来ます。
どの部分がどう対応しているかを見易くするために、gifアニメーションで重ねて見ると、以下のようになります。
ものは試しに球面上に「地球」の絵を描いてみると、以下のような光景が見られる事になります。
[図4] 地球。 | [図5] ブラックホールなら。。。 |
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さらに、自転している場合の光景 (GIFアニメーション)も描いてみました。 少しファイルサイズが大きいかも知れませんが、是非、御覧下さい。 あと、図4と図5の重ね合わせのGIFアニメーションもあります。
北極の真上から見た地球を描くと、以下のようになります。 南極がリング状に引き伸ばされて見えます。
[図6] 北極を中心にして。 | [図7] ブラックホールなら。白いリングは南極大陸。 |
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プログラム
この計算に使用したC++言語(gcc向け)などで作ったプログラムを以下に公開します。
出展さえ明示して頂ければ、自由に使用・改変してもらって構いません。
追記
ブラックホール周囲のレイトレースも計算してみました。 以下、YouTubeにアップロードした動画(BGM付)です。 両方とも内容は同じですが、画面解像度を標準SD(480p)と高解像HD(1080p)の2種類を用意しました。 HD版はダウンロードに時間がかかったりPCへの負担が大きいかも知れません。
永谷幸則@ワイツマン科学研究所 素粒子物理学部門
(基研)