永谷の Top Page > 最終更新: 2000年5月20日,   URL: http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~yukinori.nagatani/katic/

アハラノフ・ボーム効果による 3次元 磁場・電流 分布の計測法

関西テクノアイデアコンテスト'99 (京大VBL主催) 特別賞受賞
特許出願中

概要

 電子ビームなどの粒子線を用いて、 物体内の磁場や電流の3次元分布を計測する方法を開発しました。 荷電粒子線の位相が磁場の存在によって変化する「アハラノフ・ボーム効果」と、 CTスキャンの数学的基礎である「ラドン変換」を組み合わせるところがポイントです。

 電子ビームを用いる場合には、 電子線ホログラフィー像の撮影可能な透過型電子顕微鏡(TEM)の簡単な改造で実現できます。 具体的には、

の設置により実現できます。(図1参照)

(図1) 装置の概念図

 試料を回転させながら電子線干渉像を連続撮影し、 得られた干渉パタンの集合をパソコンで処理することにより、 試料内部の3次元磁場分布・電流分布を計測します。 このとき、磁場や電流分布の3次元空間分解能は使用するTEMの空間分解能(〜ナノメートル)とほぼ同じとなります。

 電子顕微鏡の電子ビームを用いる場合には、 観測可能な物体のサイズはミクロンオーダーまでとなりますが、 加速器などの利用によりその他の粒子線(ミュー粒子線など)を用いることが可能となれば、 更に大きな物体の計測も可能となるものと期待されます。 また、 中性子の磁気モーメントによるAB効果(*)を中性子干渉法によって検出すれば、 小動物内の3次元電流分布の計測にも用いる事ができるでしょう。


(*) 磁束に反応する荷電粒子のアハラノフ・ボーム効果とは異なりますが、 電荷を持たない粒子であっても、磁気モーメントを持つ粒子のスピン偏極ビームは、 磁場中で磁場の強さに応じて位相を回転し、 干渉実験によりその事を検出できる事が知られています。

KATIC'99 発表

関西テクノアイデアコンテスト'99 (1999年11月24日 於京都大学 ベンチャー ビジネス ラボラトリ)での発表に使用したトランスペアレンシーと映像を以下に公開します。

応用

この方法による3次元磁場分布と電流分布の計測は以下の分野に応用出来るものと思われます。

また、将来的には生物内電流分布の観測に適用できる可能性があります。


永谷幸則@京都大学 基礎物理学研究所
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