計画班: D23

超弦理論の宇宙論による検証

研究代表者細谷 暁夫東京工業大学・教授
石原 秀樹大阪市立大学・教授
伊藤 克司東京工業大学・助教授
白水 徹也東京工業大学・助教授
綿引 芳之東京工業大学・助手
椎野 克東京工業大学・助手
野尻 伸一名古屋大学・教授

重要な成果

ブレーン時空で宇宙論的な洞察をする際に問題となるのが、いかにして曲がった 余剰次元を解くかということである。そこで、4次元の低エネルギー有効理論を得る ために余剰次元方向について長波長展開による解法を考案した。更に、この有効理 論を用いて、より現実的な超弦理論に基づいた系に応用し、宇宙項と重力定数との 関係を明らかにした。一方で、ブレーン宇宙では宇宙論的なスケールで重力の法則 の変更を伴うような模型が存在するが、そのような場合の宇宙の大規模構造の解析 を行い、SDSS(スローンデジタルスカイサーベイ)による銀河の観測データと比較す ることで模型に対する制限について考察を行った。

年度毎の進展と成果

当班の研究は、高次元時空、非可換空間、量子力学それぞれとの関連として行 われている。

平成13年度

時間に依存する背景場で具体的に解ける平面波時空上の弦理論に ついて研究した。特に, Dブレインを背景場とする弦理論の平面波極限について 研究し, 弦の運動方程式がいくつかの場合に厳密に解けることを示した。

平成14年度

昔風双対変換をD-Braneを含むsuperstring理論へ適応した。 又、観測により確立された現在の宇宙の加速膨張を説明するシナリオとして ファントム物質や1/R重力理論の問題点とその解決法を明らかにした。

平成15年度

ブラック ホール時空における量子的な思考実験を行うことを想定し、観測の後に測定器 をブラックホールに放り込む場合の一般化された第二法則を調べた。 ブラックホール固有のエントロピーと通常の熱力学的エントロピーの和 として定義される一般化されたエントロピーの増分は、測定器を放り込まなけ れば得られたであろう情報量以上である。

平成16年度

ブレーンの衝突過程に適用できる有効理論の導出を行ない、ブレ ーンダイナミクスによるバリオン生成について吟味した。一方、高次元時空に おけるブレーン時空における保存量の定義とそれを用いた安定性についての議 論を行い、高次元ブラックホール生成の数値解析を行った。

平成17年度

Minkowski時空において対称性をもつ弦を分類し、特に5次元 Einstei-Maxwell系で,無限遠においてコンパクトな余剰次元をもち,かつ, 4次元的に平坦な時空に漸近するような性質をもつブラックホール解を構成 した。 さらに背景次元として10+2次元を持つ超弦理論の量子化、および、その量子論的 な構造を調べた。この理論は複雑な代数構造を持つのだが10+2次元よりも 高次元の理論とみるならば、その構造は単純なものとなった。

平成18年度

非可換幾何学に基づいた方法により量子重力理論の代数化された定式化を行った。 この定式化は非可換空間に適応可能であるが、さらに重力の量子化を行うときに 拘束条件が自明になるという利点がある。量子補正を求めるとこれは場の理論 による結果と一致する。

国内会議招待講演

授賞リスト

シンポジウムの開催

査読付国際誌

プレプリント

解説書