向山 信治


これまでの研究経過

インフレーションは宇宙初期の高エネルギー状態で起こったと考えられるだけでなく、宇宙背景輻射の観測と直接結びつくため、そのモデル構築及び揺らぎの生成機構の研究は、 高エネルギー物理に有益な知見をもたらすと期待される。向山は、主に、超弦理論に基づくインフレーション模型の構築と観測との比較を行ない、本研究課題名にもなっている 「超弦理論と宇宙の創成」の理解に貢献した。具体的には、以下の研究成果が挙げられる。

(i)DBIインフレーションと呼ばれる超弦理論に基づくインフレーション模型に対して、観測からの制限を求めた。 (ii)今までインフレーションを起こさないと考えられていたconformal couplingを持つスカラー場が、実際にはインフレーションを起こし得ることを示し、宇宙背景輻射についての理論予言と観測データとの比較を行なった。 (iii)Rapid-rollインフレーション模型への観測からの制限を行なった。(iv)弦理論に基づくCurvaton模型の提唱をした。また、(v)フラックスコンパクト化の安定性や、 (vi)QGP実験の状況に双対なブラックホール時空の構成、(vii)新しい量子重力理論(Horava-Lifshitz理論)に基づく宇宙論についての研究も行なった。



代表的な成果発表
<雑誌論文>

  1. S. Kinoshita, S. Mukohyama, S. Nakamura and K. Oda,
    “A Holographic Dual of Bjorken Flow”. PTP, 121-164 (2009).
  2. S. Mukohyama,
    “Scale-invariant cosmological perturbations from Horava-Lifshitz gravity without inflation”. JCAP, 0906: 001 0-8 (2009).
  3. T. Kobayashi and S. Mukohyama,
    “Curvatons in Warped Throats”. JCAP, 0907: 032 1-20 (2009).
  4. T. Kobayashi, S. Mukohyama and S. Kinoshita,
    “Constraints on Wrapped DBI Inflation in a Warped Throat”. JCAP, 0801 (2008).
  5. L. Kofman and S. Mukohyama,
    “Rapid roll Inflation with Conformal Coupling”. Physical Review D, 77: 043519 (2008).
<学会発表>
  1. S. Mukohyama,
    “What is cosmology telling us about fundamental physics? “. 16th ICEPP Symposium, 白馬, February 14 (2010).
  2. S. Mukohyama,
    “Horava-Lifshitz gravity”. Crete Workshop on the Frontiers of Cosmology, Crete Center of Theoretical Physics, Greece, March 28 (2010).
  3. S. Mukohyama,
    “Cosmological implications of gravity at a Lifshitz point”. Gravity at a Lifshitz Point, Perimeter Institute, November 9 (2009).
  4. 向山 信治,
    “Inflationary models in string cosmology”. 日本物理学会2008年年次大会, 近畿大学, March 23 (2008).
  5. S. Mukohyama,
    “Brane inflation in string gosmology”. Quarks 2008, Sergiev Posad, Russia, May 24 (2008).