白水 徹也


これまでの研究経過

超弦理論の進展により、我々の宇宙は高次元時空の中のブレーンと呼ばれる薄膜のようなものであるとするブレーンワールドが注目を浴びている。そこではブレーンの重みによって、 余剰次元が著しく湾曲し、その湾曲によってさまざまな自然界の現象を説明できる可能性がある。例えば、電弱スケールとプランクスケールの大きなエネルギースケールの開きを自然に解消したり、 宇宙初期に起こったと考えられているインフレーションの模型を自然に提供してくれる。しかし、これまでの研究ではブレーンの重みが適切に考慮されていない、 あるいは模型が単純化されすぎていて素粒子模型の痕跡を残していない、などという深刻な問題があった。そこで、白水は、超弦理論の低エネルギー有効理論である超重力理論、 特に6次元模型においてブレーンの自己重力を考慮した、ブレーン上での有効理論の非線形レベルでの導出を行うことに成功した。これによって、 6次元ブレーンワールドにおける諸現象を議論する基礎が構築されることとなった。

白水はまた、発散を伴わない量子重力理論の候補として最近注目を浴びているHorava理論の宇宙論的な洞察を行った。この理論に従えば、驚くべきことにインフレーション期が なくても宇宙の大規模構造の種が生成される可能性がある。我々はこの理論から揺らぎと同時に大域的な磁場が必然的性生成されることを示した。 そしてこの磁場が現在観測する銀河などの磁場の種になり得ることを示した。



代表的な成果発表
<雑誌論文>
  1. R.Mizuno, S.Ohashi, T.Shiromizu,
    “Static black hole uniqueness and Penrose inequality”. Physical Review D, 81: 044030 (2010).
  2. S.Maeda, S.Mukohyama, T.Shiromizu,
    “Primordial magnetic field from non-inflationary cosmic expansion in Horava-Lifshitz gravity”. Physical Review D, 80: 123538 (2009).
  3. T.Kobayashi, T.Shiromizu, C. deRham,
    “Curvature corrections to the low energy effective theory in 6D regularized braneworlds”. Physical Review D, 77: 124012 (2008).
  4. F.Arroja, T.Kobayashi, K.Koyama, T.Shiromizu,
    “Low energy effective theory on a regularized brane in 6D gauged chiral supergravity”. JCAP, 0712: 006 (2007).
  5. A.Shirata, Y.Suto, C.Hikage, T.Shiromizu, N.Yoshida,
    “Galaxy clustering constraints on deviations from Newtonian gravity at cosmological scales II: Perturbative and numerical analyses of power spectrum and bispectrum”. Physical Review D, 76: 044026 (2007).
<学会発表>
  1. 白水徹也
    「宇宙の謎に迫る ブレーンワールド」、信州大学理学部講演会、2009年10月27日
  2. 白水徹也
    「高次元ブラックホールと唯一性定理・ブラックホールがつなぐ物理の輪」、東北大学GCOEプログラム 春の学校 アインシュタインの世界観、2009年2月24日
  3. 白水徹也
    「4次元ブラックホール・4次元ブラックホールの唯一性定理」、東北大学GCOEプログラム 春の学校 アインシュタインの世界観、2009年2月22日