杉本 茂樹
これまでの研究経過
杉本はある種の曲がった時空における超弦理論が4次元のゲージ理論と等価になるという予想に基づき、4次元の量子色力学を超弦理論を用いて解析する研究を行っている。
弦理論による記述では、バリオンは時空の4-サイクルに巻き付いた Dブレインによって表される。この Dブレインは5次元ゲージ理論におけるソリトンとして表すこともできる。
この記述に基づいて陽子や中性子などの磁気モーメント、荷電半径、形状因子などを計算したところ、実験で得られているデータを期待以上の精度でうまく再現することが
分かった。また、2つの核子が非常に接近している場合の核力も計算し、実験が示唆するように斥力芯があることが確かめられた。
また、このような方法がどのくらい有効であるかを確かめるために、ゲージ群が O(N) や USp(N) である場合の量子色力学を構成する方法を考案し、
対称性の力学的破れ、バリオンやフラックスチューブの安定性などに関して、ゲージ理論で期待されている通りの性質が、時空の幾何学な性質から容易に導けることを示した。
代表的な成果発表
<雑誌論文>
- K. Hashimoto, T. Sakai, S. Sugimoto,
“Nuclear Force from String Theory”. PTP, 122: 427-476 (2009).
- T. Imoto, T. Sakai, S. Sugimoto,
“O(N) and USp(N) QCD from String Theory”. PTP, 122: 1433-1453 (2009).
- K. Hashimoto, T. Sakai, S. Sugimoto,
“Holographic Baryons: Static Properties and Form Factors from Gauge/String Duality”. PTP, 120: 1093-1137 (2008).
- H. Hata, T. Sakai, S. Sugimoto, S. Yamato,
“Baryons from instantons in holographic QCD”. PTP, 117: 1157 (2007).
<学会発表>
- S. Sugimoto,
“Perspectives in Holographic QCD”. 32nd Johns Hopkins Workshop "Perspectives in String Theory", Seoul National University, Seoul, Korea, May 28 (2008).
- S. Sugimoto,
“Baryons in Holographic QCD”. Summer Institute "Theories de jauge, gravite et theories de cordes", Ecole Normale Superieure, Paris, France, September 2 (2008).
- S. Sugimoto,
“Properties of Baryons in holographic QCD”. Indian Strings Meeting 2008, Pondicherry, India, December 7 (2008).
- S.Sugimoto,
“Baryons from Instantons in Holographic QCD” Solvay Workshop "Gauge Theories, Strings and Geometry", Solvay Institute, Brussels, Belgium, November 5 (2007).
- S. Sugimoto,
“Baryons from Instantons in Holographic QCD”. Strings 07, the Universidad Auto'noma de Madrid, Madrid, Spain, June 29 (2007).