背景:
「熱場の量子論」は、熱・化学平衡系、及び、非平衡量子系を対象とし、物理系の様々なエネルギースケールに適用可能です。さらに、素粒子・原子核・宇宙物理、そして統計物理・物性物理・量子光学にまたがる研究の基礎をなしています。このため、様々な物理現象への応用を通して得られる新しい物理像や計算テクニックの開発が、一つの分野に留まらず物理学全体の発展に寄与すると期待されます。

目的:
本研究会では「熱場の量子論」をキーワードに、理論の構築と応用に関する最近の進展、そこに現れる困難の解決、新しい問題意識について、 素粒子、原子核、宇宙物理、物性物理・量子光学といった分野の枠を超えた議論を行います。分野間で情報を共有し、「熱場の量子論」に関する視野を広げ、新しい研究への足掛かりを築くことを目的としています。

分野間での相互理解をより深められるよう、それぞれの分野から基礎的な内容と最新の状況も含めたレビュー講演を予定しております。 一般の講演は、十分な議論の時間を確保するため、ショートスピーチに加えポスター発表を行うという形態をとる予定です。

取り扱うテーマとしては、主に以下のものを計画しています。
テーマ:
平衡系の熱場の量子論
・QCD の有限温度・密度相構造の微視的理解とクォーク・グルーオン物性の研究
・高密度星の構造・進化とクォーク・ハドロン物質
・量子多体系の非摂動計算処方の開発
・ハドロン多体系としての原子核系に対する熱場の理論とその適用
・重力多体系に対する熱場の理論の研究

非平衡系の熱場の量子論
・希薄原子気体のボーズ・アインシュタイン凝縮、フェルミ原子気体の超流動相転移
・非平衡熱場の量子論構築に向けた試み及びその応用
・高エネルギー重イオン衝突とQGP生成、カイラル相転移の時空発展
・揺らぎ定理、 Jarzynski関係式、superstatisticsなどの非平衡統計力学の最近の発展とその熱場量子論への応用可能性の探求
・極限強度場中の場の理論

レビュー講演:
上記テーマに関連して、以下のようなレビュー講演を企画しています。(敬称略。アルファベット順)
・初貝安弘(筑波大)「グラフェンの特異な物性とカイラル対称性」
・中村祐介(早稲田大)「非平衡Thermo Field Dynamicsによる量子輸送方程式」
・仲野英司(高知大)「汎関数くりこみ群」
・志垣賢太(広島大学)「LHCによる重イオン衝突実験」
・Vladimir Skokov(GSI)「汎関数くりこみ群」
・土屋俊二(東京理科大)「冷却フェルミ原子気体のBCS-BECクロスオーバー領域における擬ギャップ状態」

その他:
本研究会の期間中,京都大学基礎物理学研究所では国際モレキュール型研究会「Renormalization Group Approach from Ultra Cold Atoms to the Hot QGP」が開かれており外国人研究者が滞在中です。仲野英司氏,Vladimir Skokov 氏の講演を中心にジョイントプログラムとして一日程度の英語セッションを設ける可能性があります。

世話人(50音順)
浅川 正之(大阪大)
阿部 純義(三重大)
飯田 圭(高知大)
稲垣 知宏(広島大)
江尻 信司(新潟大)
大西 明(京大)
奥村 雅彦(原子力機構)
阪上 雅昭(京大)
橘 基(佐賀大)
野中 千穂(名古屋大)
峰 真如(早大本庄学院)
室谷 心(松本大)