Challenges in Granular Physicsに参加して
8/5:夏休みの日曜のせいか「はるか」は混んでいた。新大阪からは立っている人が
多数いた。
関空では特に書くことはない。直接円からリラを交換するとレートが悪い。飛行機は
狭く、満席状態。子連れが多くやかましい。僕の隣の席の家族もそうだったが
イタリア語をあやつるミラノ近郊?に在住の日本人家族だった。飛行機内ではあまり
眠れなかった。ミラノ空港ではトリエステ行きの飛行機が遅れたせいもあり5時間も
時間をつぶす必要があった。空港では400ドルを両替。トリエステ空港に着いたのは
11時過ぎでもうタクシーに乗るしかなかった。それから40分もかかり104000リラ
かかった。ホテルは死にそうな所である。
8/6:室伏のハンマー投げの銀(それにしても絶叫する日本人のアナウンサーはイタリアのテレビでも好奇の目で見られ恥をさらしているのは頂けない)などを見ていたたり
早朝の騒音のせいで寝不足。乾燥している
せいもあって喉の渇きが激しい。朝ICTPに向かう。
事前登録ができるという話だったが担当者がおらず別のビルのオフィス迄行く。しかし
完了せず午後に書類を貰えるという話になった。ICTPのカフェテリアでまあまあの昼を
取った後会場のAdriatico Guest Houseに行く。しかし思った通り担当者はなかなか
こない。その間、おいてあるコンピューターにつなげるが日本語が読めない。
Microsoftはさすがである(Linuxにすると読めることが後に判明)。
2時位に御手洗、中西の両氏に会う。原稿の議論は早く終わったが物理観の違いによる
議論はなかなか収束せず。もっとも週末に見つかった文献のせいで論文の書き直しが
必要で、さらに御手洗さんがトリエステを離れるので投稿の目途が立たない状態に
なった。彼らとICTP本部に行きメールの読み書き等。家族連れの中西さんは先
に帰ったので
夕食は御手洗さんと一緒に取ろう
としていたらSanjay Puriに3年ぶりに再会、一緒に食事を取る。話は弾んだが彼は
特に変化はない。
8/7:会議初日。Daniel Hongと久しぶりに会う。だいぶ痩せた様だが
強い韓国なまりは相変わらずである。会議はEdwardsのユーモアあふれるトークで
始まる。ヨーロッパではEdwardsの影響は絶大な様で似た話が多かった。Levineの
force chain splittingの話が印象に残る。スケジュールがきつく質問の機会や
議論の時間があまりなかった。レセプションパーティーでおなかが満たされるかと
思ったが期待外れ。
結局Hongと一緒に夕食を取って帰ろうとしたところでLuding,Otto、御手洗等が
手を振っていたのでビールを一杯取って話し合い、それからホテルに戻る。Hongは
一緒のホテルだった。(6日、帰ってきたときに不注意にもground floor,1F,2F,3F
となるのを日本と同じと勘違いして202の部屋を開けそうになったがそこに彼が
いた)。
8/8: 会議2日目。午前は相変わらずEdwardsの影響が大きいCompactionの話等。
午後は流れの話に主題が移って僕も積極的に参加できた。Halseyの話はどうも
通常のずりで展開したストレスは駄目という主張ばかりで具体的な対案がない。
基本的な事を理解していないのではという感もある。Losertのずりの実験は参考
になった。壁近傍では密度が下がる。その方が自然というのは納得した。Pouliquen
には実験のvortex dynamicsの話を期待したが複雑怪奇なホッピングモデルの話に
なっていた。それでも実験と合うのは不思議だ。Khakharの講演がLudingのものに
置き換えられていた。
今回の会議での不満はOrganizerの個人的コネクションや趣味が前面に出過ぎている
事である。Edwardsの話は面白いとしても1日半も費やす必要はない。またEdwards自身
もCompactivityの話よりも静力学の方に焦点が当てられるべきだったが誰もフォロー
していない。またMehta他がEdwardsの取り巻きになってあまり交流が見られない。
Puriあたりも同じ様な意見を語っていた。
僕の方もHongや御手洗さんと一緒の機会が多く仙台の会議みたいな積極性に欠ける。
8/9: 会議3日目。午前はkinetic theoryのセッション。面白い講演が目白押し。
Menonの講演ではimpactの実験や加振(加速度振幅60)
によるgranular gasの実験であった。解析は
きれいだが理論が全くないという理論家から見て垂涎の的となる話である。Zippelius
の講演は最大限の注意で聴いた。回転と並進の運動エネルギーのやりとりやimpact
の話は僕の研究と直結する。Duftyは granular kinetic theoryのレビュー。昼食時に
SSTで問題となっている2次の効果やBGKの話、Boltzmannの正当性等をいろいろ議論
する。午後のポスターセッションはあまり人がおらずまた僕のimpactの話はそれほど
関心を集めた様子ではない。Zippeliusとの議論は今一つ彼女が問題を正確に理解して
いる様には感じなかったが接線方向の衝突や壁の内部自由度の話には興味を持って
貰えた。HalseyとZippeliusは僕のポスターをだしにして議論していたので追加説明を
したが直接聞いてくれと言いたい。
夕方はexcursion. 近所のGrotta Giganteという見事な洞窟(秋芳洞よりすごい)と
リルケの詩やボルツマンの自殺で有名なドィノの海岸に行く。その後、Hongと
御手洗さんと一緒にホテル近くのPizzariaで食事。いろいろ話が弾んだ。
8/10:
午前の講演では聴き疲れたのかNagelのものを除いて印象に残ったものはない。
Nagelは最近のシカゴの実験を披露。やはりずりでのcreep motionを論じていたが
ここでも小松等と同様に指数関数的な動きをする。
午後の講演他で相分離との
類似の現象、すなわち有効表面張力があるという話が
ある(Marini-Bettolo)ことがわかった。
昼食時にMennonと議論。彼の衝突実験の詳細を聞く。板の振動共鳴によって反発係数が
極小になったり、回転から並進へエネルギーが伝播するため見かけ上1を越える反発
係数が観測されるなど興味が尽きない。彼が熱心に衝突問題を知りたがってくれたの
は励みになる。彼の実験の解析を真剣に考える必要がある。Puriの講演は結構評判が
よく質問が多かった。もう一回考え直す必要がある。ただEdwardsが個人的にくれた
コメント「似たものはつくれるがその必然を示すことが難しい」は重い。
最終日の晩ということ
で
Triesteの街中の散策をし、
夕食を
摂る。
明日への意欲をかき立てるものであった。仙台の会議程ではないにしろ
共同研究の約束や有益な情報交換ができたという点では仙台以上という気もする。
まあ有意義な会議と言っていいだろう。
印象に残ったことは
- DEM等の粒子シミュレーションが殆ど絶滅したこと
- ヨーロッパとアメリカは随分違うこと
- 外国では物理として粉体を研究していること。少なくとも新しい物理を模索し
ていること
- 気体論の流れはErnstやDuftyといったlong time tailの同定で教科書に載って
いる様な人達の堅実な研究があること
- 98年以降の動きに日本はすっかり取り残されたこと。そもそも日本で
研究している物理屋が激減したのが致命的だった。
等かな。粉体物理はまだやることがあるどころか着実に進歩している感を受けた。
僕自身に照らすと気体論的なアプローチはやはり限界があることを感じざるを
得なかった。とりあえずはshearの問題にしても中程度の密度で散逸が小さい場合
と普通の粉体では密度一つ取っても前者は壁近傍の密度が高く、後者は壁近傍で
密度が下がるなど大きな違いがある。これらを確実に明らかにしていくことはしんどい
作業だが逃げ出すことはできない。
また今回の会議を契機にHongやPuriとの共同研究を再開することにした。それぞれ
方向性はかなり明確になったという気がする。HongとはMennonの実験の解析を、
Puriとはsegregationの続きとeffective surface tensionの導出を今のところは
狙っている。