バンド計算では一般にバンドギャップを過小評価してしまう、あるいは半導体なのに金属と見積もってしまうという問題がある。 これを回避するためにいくつかの手法が考案されているが(例えばLDA+U法やハイブリッド汎関数法など)、現在もっとも精度よく値が出るのがGW近似と呼ばれるものである。 しかし、この手法は多くの計算コストが必要で、単純な構造の物質を除いてあまり実用的ではない。 そこで、GW近似の結果をお手軽に再現できるのが、手でポテンシャルを入れてバンドギャップを適正な値にするTran-Blaha Modified Becke-Johnson (TB-mBJ)交換ポテンシャルを使った近似手法である。
$ init_mbj_lapw
$ run_lapw -p -i 1 -NI $ rm *.broyd*
$ init_mbj_lapw
-0.012 1.023 0.5
$ run_lapw -p -i 1000 -ec 0.00001 -cc 0.0001
これでTB-mBJポテンシャルを使った計算は終わり。 あとは状態密度やバンドを描いて、電子状態の変化を確認する。 x_lapwの実行時に特になにかフラグをつけなくても、自動的にmBJポテンシャルを考慮した計算になる。
適切なTB-mBJポテンシャルの選び方は、上で書いた論文の値をそのまま使うのも一つであるが、光学測定などの実験で得られたバンドギャップを再現する大きさに合わせるのが手っ取り早い。
$ grep ":GAP" case.scf
PRATT 0.0 YES (BROYD/PRATT, extra charge (+1 for additional e), norm) 0.10 mixing FACTOR for BROYD/PRATT scheme 1.00 1.00 PW and CLM-scaling factors 9999 8 idum, HISTORY
$ run_lapw -p -i 1000 -ec 0.00001 -cc 0.0001 -NI
MSR1 0.0 YES (BROYD/PRATT, extra charge (+1 for additional e), norm) 0.20 mixing FACTOR for BROYD/PRATT scheme 1.00 1.00 PW and CLM-scaling factors 9999 8 idum, HISTORY
$ run_lapw -p -i 1000 -ec 0.00001 -cc 0.0001 -NI
もしこれでも収束しない場合、mixing factorを0.1から徐々に上げて0.2に近づけていくとよい。
-0.012 1.023 0.5
Fabien Tran and Peter Blaha, Phys. Rev. Lett. 102, 226401 (2009)
0.488 0.500 1
David Koller, Fabien Tran, and Peter Blaha, Phys. Rev. B 85, 155109 (2012)
実験で観測されているバンドギャップが7eV以上のものを絶縁体としています。