研究実績概要(2009年度)
代表者・佐々木は,高次元時空理論の動的解を求め,動的コンパクト化を与えるモデルの存在を示し,現実的な宇宙論モデル構築への第一歩を与えた。また時空曲率の任意関数で与えられる理論のハミルトン形式を定式化した。
分担者・田中は,ブレーンワールドにおけるブレーン局在ブラックホール(BH)解の存在問題に関連して,漸近AdS時空のBH解の性質を調べAdS/CFT対応が成り立つことを確認し,可能なBH解の系列を明らかにした。
連携研究者も多くの成果を上げた。高橋は等曲率揺らぎの非ガウス性についてtripspectrumを求め,ある無矛盾条件の成立を示した。早田はインフレーション中の原始磁場生成が,反作用によって妨げられることを明らかにした。向山はrapid-rollインフレーションへの観測からの制限,弦理論的curvaton模型の提唱等を行い,Horava-Lifshitz重力に基づく宇宙論を展開した。 山本はf(R)重力における線形揺らぎを調べ,ある漸近領域での解析解を見つけた。千葉は一般のslow-rollモデルにおける宇宙定数を含む暗黒エネルギー(DE)の状態方程式の解析的公式を与えた。白水は原始磁場の生成と進化を定式化した。また,重力崩壊の際にペンローズ不等式が成り立つとBHの最終状態に強い制限を与えることを示した。山口はcurvatonやmodulated reheatingシナリオでは非ガウス性がグラビティーノ暗黒物質に強い制限をつけることを示した。松原は原始密度揺らぎの非ガウス性とCMBの統計的性質の関係を調べた。辻川は修正重力理論に基づくDE模型の構築を進め,その観測的・実験的兆候を調べた。
以上の成果を踏まえて,3月に海外から協力研究者を数名招へいして国際研究集会「Non-Gaussian Universe」を開き,現状の総括と今後の方針に関する議論を行った。