- Subject: [sansha-ctr 380] [$B;0
- From: $B%;%s%?!<9;$*Ld$$9g$o$;Ak8}(B<yonupa-hoihoi @ particle.sci.hokudai.ac.jp>
- Date: Sun, 29 Apr 2007 21:19:05 +0900
- Sender: owner-sansha-ctr @ yukawa.kyoto-u.ac.jp
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2007年度三者若手夏の学校講義
三者共通講義
[講師] 浅川正之
[所属] 大阪大学大学院理学研究科
[講義] 高エネルギー原子核衝突がとらえたクォーク物質
[要旨] 強い相互作用には何種類もの相転移があり、高温高密度において、我々が知っている
ハドロン相からクォークグルーオンプラズマ相やカラー超伝導相などに相転移を起こすと
考えられています。この相転移を実験的に検証するために、以前から様々なエネルギーにおいて
高エネルギー原子核衝突の実験が行なわれてきました。この高エネルギー原子核衝突は、
地上において実現できる(おそらく)最高温度、つまり宇宙開闢に最も近い物理の実験室でも
あります。なかでも2000 年に運転をはじめたRHIC(Relativistic Heavy Ion Collider)は、
はじめての衝突型原子核加速器として、運転開始以来、多くのめざましい結果(その多くは
予想外の)を生み出して来ました。その結果、RHIC ではクォーク物質が生成されたが、
その性質は少なくとも相転移近傍では予想外のものらしいという共通認識がほぼ形成されるに
至りました。この講義では、高エネルギー原子核衝突の物理の特殊性を強調しながら、
クォーク物質についての現在の理論的・実験的理解を解説します。
素粒子論パート
[講師] 今村洋介
[所属] 東京大学大学院理学系研究科
[講義] 弦理論とゲージ理論の双対性
[要旨] 弦理論およびその低エネルギー有効理論である超重力理論はゲージ理論における
量子効果の解析に大きな威力を発揮する。これは特定の状況下では弦理論、あるいは超重理論の
低エネルギーでの振る舞いがゲージ理論と等価になると考えられているためである。このような
現象は双対性と呼ばれる。この講義では、弦理論(あるいは超重力理論)とゲージ理論の
双対性について、幾つかの具体例(MQCD, brane tiling, AdS/CFT, 古典弦/スピン鎖対応など)
を挙げながら解説したい。
[講師] 船久保公一
[所属] 佐賀大学理工学部
[講義] 宇宙のバリオン数生成
[要旨] 宇宙の物質・反物質の非対称性は元素合成や最近の宇宙背景放射の観測から定量的に値が
決まっているが、非常に小さな値であるために、宇宙はバリオン数の無い初期状態から始まり
宇宙が冷える過程で有限のバリオン数が生じたと考えることが自然である。本講義では、
ビッグバン宇宙論の概略を述べた後、バリオン数を生成するための条件を説明し、それを満たす
素粒子模型とメカニズムを挙げ、バリオン数の計算例を紹介する。また、来年始まるLHC実験で
期待されているヒッグス粒子と電弱バリオン数生成の条件の関係を述べる。
[講師] 中津了勇
[所属] 大阪大学大学院理学研究科
[講義] 超対称ゲージ理論の展開
[要旨] 超対称ゲージ理論の非摂動ダイナミックスに関する私たちの知見は、10 年前に比べると、
ずいぶん深く洗練されたものとなったように思います。これらの知見の多くは、理論の持つ
双対性や正則性など、それまで十分に注目されなかった、いわば、標準的とは思えなかった手法を
用いることで導かれています。超対称ゲージ理論のこのような数理的側面について、予備知識を
できる限り抑えた、入門的講義を行います。具体的な講義内容に関しては、講義可能ないくつかの
話題から1 つ、もしくは、2 つ選択することになると思います。
原子核パート
[講師] 飯田圭
[所属] 高知大学理学部物質科学科
[講義] 高密度物質における相転移現象
[要旨] 物質を際限なく圧縮していきますと、超流動相、固相など、多彩な相状態が次々に
出現します。このような相転移現象を理論的に研究することにより、高密度物質からなる系
(中性子星や原子核)に見られる多彩な現象の本質にせまることができます。その醍醐味を
伝えるべく、いくつかの最近の話題(RI ビーム実験から非対称核物質の状態方程式をいかに
探るか、中性子星のなかに棒状や板状の原子核(パスタ原子核)が出現するのか、
クォーク物質の超流動体(カラー超伝導体)が中性子星のなかにあるとすればどうか、等)
を紹介したいと思います。
[講師] 板垣直之
[所属] 東京大学大学院理学系研究科
[講義] 軽い核構造研究の概観と最近の進展
[要旨] 軽い原子核構造について、非常に基本的な核構造論の解説から始めて、シェル模型、
平均場模型、クラスター模型など様々な模型の特質についての簡単な説明を前半に行なう。
後半部分は、最近の中性子過剰核物理の進展を踏まえ、軽い核の分野で近年進展の著しい
いくつかの具体的なトピックスを挙げて解説する。特に、1)魔法数の消滅・生成、
2 )クラスター・シェル競合、3)テンソル力を直接的に取り扱う試みと第一原理計算との関連、
4 )弱結合系における2 中性子相関とα凝縮を取り上げる。
[講師] 小沢恭一郎
[所属] 東京大学大学院理学系研究科・理学部附属原子核科学研究センター
[講義] クォーク・グルーオン・プラズマ探索実験の現在と未来
[要旨] クォーク・グルーオン・プラズマ状態の研究は、米国BNL-RHIC における5 年間の
データ収集の中で、高温高密度での完全流体相やカラーグラス凝縮などの発見など予想を超える
結果を生み出してきました。一方、カラー遮蔽効果やカイラル対称性の回復など未解決の問題も
多々残されており、さらに精力的な研究が続けられています。本講義では、現在までにRHIC で
生み出された実験的結果を概観し、その理論的な意義や全体の中での位置づけを議論し、
さらにCERN で行われる将来の実験への発展を紹介したいと思います。
高エネルギーパート
[講師] 蓑輪眞
[所属] 東京大学大学院理学系研究科
[講義] 暗黒物質探索実験
[要旨] 宇宙の暗黒物質の有力候補と考えられている、超対称性粒子「ニュートラリーノ」
探索のためのさまざまな実験手法について概説する。探索実験の今後の展望とその限界に
ついても言及する。
[講師] 竹下徹
[所属] 信州大学理学部物理科学科
[講義]ILC で宇宙開闢に迫る
[要旨] 物理学加速器を使った素粒子の研究は、より高エネルギーすなわち、より宇宙の
初期を地上に人工的に作り出し研究することで、極微の世界を探り解明してきた。電子陽電子
衝突型加速器の最終兵器としてのILCは、宇宙開闢に迫るわれわれの夢の実現である。
今やLHC 実験が始まろうとしており、その発見を一手に引き受けて自然を解明するために、
必要とされる測定器の性能とこれに対する新しいアプローチを議論する。新しい道具が新しい
価値観をよびさましてきた事を再度自分たちの力で切り開きたいとおもい、若い人たちが参加し
考える機会になる話を用意する。