Date: Thu, 21 Feb 2002 09:37:40 +0900 Subject: [sg-l 1392] 素粒子メダル 素粒子論グループの皆様 第2回素粒子メダルの受賞者が、選考委員会にて慎重審議の結果、 下記に添付した報告書の通り決定しましたのでお知らせ致します。 なお、授賞式は春の学会における素粒子論懇談会において とり行う予定です。 2002年2月21日 賞WG 谷本盛光、原田恒司、山田洋一(委員長) %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 2001年度素粒子メダルおよび素粒子メダル功労賞選考報告書 素粒子論委員会賞ワーキンググループ委員長 山田洋一殿 2001年度の素粒子メダルおよび同功労賞の選考が以下の ように終了いたしましたので、ご報告申し上げます。 2002年2月20日 2001年度素粒子メダル選考委員会 坂井典佑(委員長)、猪木慶治、川合 光、 九後汰一郎 東島清、藤川和男 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 2001年度素粒子メダル受賞者: 牧二郎:ニュートリノ振動の先駆的研究 2001年度素粒子メダル功労賞受賞者: 該当者なし 選考経過: 1.2001年12月18日受賞候補者推薦締め切り 素粒子メダル2件、素粒子メダル功労賞0件の推薦を 受け付けた 2.選考委員全員が素粒子メダル推薦業績の原論文を閲読し、 それぞれに関して約100字以内の要約を作成した 3.以下の選考基準に基づき、素粒子メダルに該当するか 否かに関して上記の要約を添付した記名投票を郵送で おこなった。 選考基準: 素粒子メダル設立趣意書に記された 3-a.顕著な業績であるが、他の賞等で顕彰される機会を 逸した先輩たちの論文 という精神を十分配慮したうえで、 3-b.世界的な視野で見て、独創性において傑出した業績 であること 3-c.その後の素粒子論の発展において当該論文(あるいは、 埋もれた業績の場合は後発する類似の研究)が大きな影響を 与えたものであること 3-d.日本国内で類似のテーマに関して同時期あるいは それ以前になされた研究がある場合には、当該研究のみに 賞を出す理由が明らかなこと を基準とした。 4.素粒子メダルの設立の精神に基づき(また設立後日が浅い ことも考え)、議論の余地のない全員一致の業績のみを採用 することを前もって申し合わせた。開票は、賞ワーキング グループ委員長の山田洋一氏に依頼し、結果として牧二郎氏 の業績が全選考委員一致で選ばれた。 5.素粒子メダル功労賞は、推薦がなかったので,全選考委員 一致で該当者なしと決定した。 業績の説明: 素粒子メダル: 牧二郎:ニュートリノ振動の先駆的研究 1962年に牧二郎・故中川昌美・故坂田昌一の三氏は、当時 名古屋グループを中心に精力的に研究されていた名古屋 模型の立場から,ニュートリノ混合とバリオンのウィーク 電流混合の関係を提唱し、異なるフレーバーを持つ ニュートリノ間の振動の可能性を世界ではじめて指摘した。 論文では,名古屋模型とそこでの「B物質」という考え方 に基づいて,レプトンとバリオンの対応を論じている。 その中で,ニュートリノに質量がある場合には, ニュートリノ混合と振動が起こる可能性を明確に指摘 している。異なる種類のニュートリノが質量を持って存在 していると,それらが混合を起こし,異なるニュートリノ 間の振動現象として観測されるという点は,神岡鉱山での 実験を中心とする近年のニュートリノ振動の観測の発展 とも関連して,重要な研究である。 この研究は,結果的に今日の標準模型のもとでのニュー トリノ振動の研究と直接つながり,歴史的な価値の高い 先駆的研究である。このように,三氏の研究は,今日 我々が認識している意味でのニュートリノ混合を、 世界ではじめて指摘したものであり,素粒子 メダルを授賞するにふさわしい業績である。 参考文献: Z. Maki, M. Nakagawa, and S. Sakata, Progress of Theoretical Physics Vol.28, No. 5, (1962) 870. %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%